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提言「防犯力の高いまちづくり実現に向けて」 ~犯罪の生じにくい社会環境整備に関する施策のあり方~

2004年4月8日
東京商工会議所

 長期にわたる地域経済の疲弊や雇用不安、あるいは家庭や地域における人間関係の希薄化なども影響し、侵入盗や街頭犯罪増加の一方での検挙率低下や少年犯罪凶悪化などにより社会不安が増大しており、治安の回復は喫緊の課題である。
 このような状況の中、政府におかれては、犯罪対策閣僚会議を設立され、平成15年12月には「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」を公表されている。東京都におかれても、緊急治安対策本部を設置され、警察官増員や空き交番の解消など治安回復に向けた重点施策を打ち出し、東京都ではさらに、もはや行政のみに依存する段階ではなく事業者や住民1人ひとりが自ら具体的に率先行動することが安全なまちを取り戻す第一歩であるとして、平成15年10月に行政、産業界、住民団体等による「東京都安全・安心まちづくり協議会」を設置され、具体的な啓発活動を展開しようとされているところである。
 このような民間活力を活かした安全・安心まちづくりが徐々に芽吹き始めた地域もある半面、都内全域で見ると侵入盗などに対抗するための防犯設計・防犯設備への関心や取組みは依然として低く、地域の防犯力の向上が見られないのが現状である。
 犯罪の抑止には雇用状況の改善が不可欠であることから、政府には一層の景気対策を望むとともに、東京商工会議所も、地域社会の一員として、より安全・安心なまちづくりに協力していく所存であり、ハード・ソフト両面から具体的取組み内容を検討しているところであるが、今回は取り急ぎ取組みを進める上で必要と思われる、ハード面での犯罪の生じにくい社会環境の整備、特に防犯設計・防犯設備に関することを中心に、以下の諸点の施策を提言する。

提言


1.防犯規格、防犯建築法制の整備
(1)建物部品などの「防犯規格」等の製品規格の整備
 経済産業省・国土交通省・警察庁におかれては、建築物の防犯性能を向上させるため、平成14年11月に「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」を各建物部品製造者団体と共に設置し、必要と思われる建物部品について試験・評価を行い、平成16年4月に「防犯性能の高い建物部品目録」を公表した。
 しかし、欧州や米国においては既に、各種建物部品について試験・検査・評価を行い、建設する際に役立てられている防犯規格制度が存在するのに対して、日本では全国防犯協会連合会などにおいて錠前など一部が規格化されているに過ぎない。
 したがって、今後日本においても各建築物の防犯性能を高め地域全体の安全性を向上させるためには、公表された上記目録を「防犯規格」として整備するとともに、認証制度を設ける必要がある。
 
(2)建築物・建物部品防犯性能評価機関の設立
 上記「防犯規格」の認証制度の実効性を高めるためにも、建築物・建物部品の防犯性能を評価する機関の設立、同機関を支援・協力する民間団体への支援などが必要である。 また、建築物・建物部品の防犯性能、さらには地域全体の防犯性能を審査・評価することのできる専門的人材の育成が急務である。
 

(3)建築物防犯性能を高める枠組みづくり
 消防法などに基づく建築物の防災能力の確保・向上にあたっては、建築規制など法的整備がなされているところである。しかし、近年必要性が求められている防犯力の確保・向上に関しては、国の通達等に止まっており、多くの場合、各自治体の条例に頼るところが多いのが実状である。
 今後、防犯力を高めるためには、建築物・広場・街路等の建設にあたって、周囲の状況を踏まえ、死角の除去や防犯力の高いものに努めることが重要であり、施主や建設事業者が、設計段階から防犯面に配慮した設備やシステムを積極的に選択できるよう、必要となる情報提供、税制を含む支援策、法制度などを総合的に検討する必要がある。
 
(4)盗難保険料率の軽減措置
 上記目録の普及が急がれるところであるが、強制力・インセンティブが生じない現状においては、事業者に対して防犯性能の高い建物部品の使用を促進していくことは難しい。
 そこで、上記目録掲載の建物部品を使用し、防犯性能の向上に努力した建築主については、盗難保険料率を軽減するなど経費負担を軽減するような措置を講じるべきである。
 
2.民間防犯拠点(仮称)の整備・助成
 近年の治安状況の悪化に伴い、国・都におかれては警察官の増員等の措置を講じられているところである。また、民間の立場においても商店会や自治会関係者により自警団や民間防犯組織が形成され、地域安全活動を行っている例が多く見受けられるようになった。
 しかし、民間の取組みにおいては、関係者の人的・金銭的負担も重く、継続して地域の安全を確保するために活動を行うことには様々な課題があることも事実である。
 そのため、既存の交番間の空白地帯や治安状況の悪化が著しい地域に存する事業所・店舗・商店会事務所・自治会事務所などに呼びかけ、協力可能なところについては、所轄警察署と連携して、防犯情報の収集・発信地、街頭犯罪の緊急退避場所、警察・消防等への緊急通報の拠点となる"民間防犯拠点(仮称)"として各自治体が指定し、防犯対策における民間協力活動の拠点とするとともに、補助・助成を行うなどにより、その整備を支援されたい。
 
3.青少年の居場所確保
 地域社会や家庭に居場所が少なく、地域社会での他者や異世代との交流もあまりないことが少年犯罪の一因でもあることから、青少年の居場所・避難場所や地域活動参画拠点となるよう、各地域内での社会教育施設(公民館など)や空き店舗を利用し、必要な機能・設備を整備した施設等の提供、あるいは、青少年の家庭生活や社会生活に関わる悩みの相談、問題の解決に向けた支援を行うため、電話や電子メールなど様々な手段を活用した全国的なホットラインの充実等が必要である。
 
4.防犯力の高い街路・街区づくり
 死角の少ない塀・生垣や公衆トイレ・公共施設の設置、通行規制方法の工夫による防犯力の高い道路づくり、プライバシーにも配慮しつつ効果的な防犯カメラの設置や駐車場・駐輪場内の防犯灯の整備など、犯罪の生じにくい街路・街区づくりを進める必要がある。
 
5.事業所への支援施策の拡充
 各事業所では、侵入盗などへの対策として、自社のみならず、地域の取組みに協力して、防犯システムの導入や防犯灯、防犯カメラの整備などを進めている。
しかし、中小事業者にとっては、現在の悪化する景気環境の中においては、その金銭的負担が重いのが現状である。
 都内各区においては一部助成措置を行う自治体もあるが、国・都・各区においても、地域の環境や犯罪の発生状況に照らして効果の高い設備・システムの選択が可能となるような情報提供と必要な助成策の拡充を図られたい。

なお、地域での防犯力を高めるうえでの企業・商店会の役割や具体的取組みなどソフト面の社会環境整備については、別途夏ごろまでに提言する

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所