法人事業税への外形標準課税導入に関する自治省案について
東京商工会議所
本日、自治省が外形標準課税の導入を内容とする「法人事業税の改革案」を発表したが、商工会議所ではこれまで、どのような形態にせよ、賃金等を課税標準とする外形標準課税の導入には絶対反対であることを強く主張してきた。
そもそも、企業は必死で雇用を守り、労働に対する安定的な分配に努めるとともに、コストの削減に全力で取り組んできたが、一方で、地方自治体行政の現状を見るに、行財政改革が徹底されているとはとうてい言い難い状況にある。
今、もし、こうした税が導入されれば、ようやく明るい兆しが出てきたわが国経済に、失業者の増大や工場等の海外移転が拡大するなど深刻な影響を与え、地域経済の足腰は再び弱体化することになり、わが国経済は地方から崩壊してしまう。諸外国において、雇用へのマイナス等の理由によって相次いで縮小・廃止されつつある外形標準課税をあえて導入しようとする姿勢は全く理解に苦しむ。
自治省案では、「雇用への配慮」として、雇用安定控除という仕組みを導入するとしているが、控除後であっても「賃金」が課税標準の7割を占めており実質的に「賃金課税」であることに何ら変わりない。このような課税標準を採用すれば雇用の下請化やアルバイト化を促進することは明らかであり、その他の課税標準も複雑であるため課税逃れを起こさせる結果となる。
さらに、自治省案では、「応益課税」を根拠に導入しようとしているが、それならば、医者、弁護士をはじめとする個人事業主、さらに個人が適用除外となっているのは不公平極まりない。
また、許認可によって保護されている電力、ガス等の公益事業が消費者への価格転嫁を前提とした「売上高課税」であるにも関わらず、何故、我々一般事業者が実質的「賃金課税」を甘受しなければならないのか。
中小企業関係4団体の意見で述べているとおり、法人事業税への外形標準課税導入については、中小企業等に対する配慮を求めているのではない。制度そのものに多くの問題があり、導入自体が絶対に受け入れられないのである。
自治省案は、このように著しく反経済的で、不公平極まりないものであり、21世紀の日本経済の発展のためには断じて導入してはならないと考える。