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「早分かり解説!事業者向け新型コロナ支援施策(第2回)」~融資編~

2020年5月22日
東京商工会議所
中小企業部

 国・東京都・東京23区では新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者向けに多くの支援施策を打ち出しています。
 東京商工会議所では、「早分かり解説!事業者向け新型コロナ支援施策」と題し、支援施策について七田総合研究所 代表 七田 亘 様に「分かりやすく」解説いただいたコラムを掲載させていただくこととなりました。
 コラムは全5回の掲載を予定しております。

第2回は融資について解説いたします。是非ご覧ください。

 なお、このページは、事業者の方が必要な支援策の見当がつけられることを目的に記述しています。申請方法など詳細は、下部にあるリンクをご覧ください。

                   1.融資とは?

 一言で言えば「借りるお金」です。前回、ご紹介した3つの資金繰り施策の2つ目に該当します。

融資は、「借りるお金」ですので、必ず返さなくてはいけません。したがって、緊急とはいえ返済の目途を考えておく必要があります。

画像:(筆者作成資料)

3つの資金繰り施策

3つの資金繰り施策

                   2.融資を検討する前にしておくこと

 よくある事業者の方からの質問として、「いくら借りられるか」という質問があります。ただ、借入の申込みをする前にしておきたいことがあります。それは、「資金はいくら必要か」を明確にしておくことです。つまり、今後1年間の資金繰り表(未来の資金繰り表)を月次単位で作成することが必要です。

 資金繰り表の作成方法がわからない場合は、ぜひ商工会議所や中小企業診断士・税理士等の専門家に相談してください。また、資金繰り表のエクセルデータはネット上に多くあります。迷ったら日本政策金融公庫(国民生活事業)のホームページにある様式をダウンロードするとよいでしょう。

<借入申込書等ダウンロード(日本政策金融公庫ホームページ)>
https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html

※ 様式が多くありますが、「借入申込書等」の13番にある「資金繰り表」のエクセルと14番にある「資金繰り表記入例」のエクセルをダウンロードしましょう。

 資金繰り表作成の際、売上をどう見込むかが悩ましいですが、ご自身が考える楽観的なシナリオと悲観的なシナリオの両方で作成するのも一つの方法です。また、個人事業主の方は、支出項目の中に、個人の生活費も入れて資金繰り表を作成しましょう。

資金繰り表を作成することで、いつ資金が不足し、資金の不足額はいくらなのかが見えてきます。この不足額が「いくら借りるか」の目安になります。ただ、借りたお金は返さなくてはいけませんので、売上が通常期に戻ったとしても毎月返済していけるかも考えておく必要があります。

 そのためにも、「資金繰り表」の作成がポイントになります。そして、資金確保のための取組として、国・東京都などが実施している施策の活用を検討していきます。


               3.資金確保の施策を活用する~融資の主な施策~

 資金確保の取組のメインとなるのが、融資を受ける取組です。資金確保を支援する施策として、国・東京都が行っている融資制度があります。

 融資制度も多くあってわかりにくく感じると思いますが、政府系金融機関と民間金融機関の2つに分けるとわかりやすいです。

画像:(図1)出典:東京商工会議所「都内中小企業・小規模事業者向け国・東京都の主な支援施策のご案内」より抜粋

 政府系金融機関とは、主に日本政策金融公庫、商工組合中央金庫のことです。コロナ対策として日本政策金融公庫では「新型コロナウイルス感染症特別貸付」、「新型コロナウイルス対策マル経融資」(商工会議所の推薦が必要)等、商工組合中央金庫では「危機対応融資」といった制度があります。

 一方、民間金融機関とは、街中でよくみかける「●●銀行」「●●信用金庫」「●●信用組合」などです。コロナ対策として、民間金融機関の融資には「制度融資」という、東京都や23区が関与して融資が受けられやすくなる工夫がされています。ただ、コロナ対策の融資制度を利用する条件として、セーフティネット保証4号・5号、危機関連保証のいずれかの「信用保証制度」を利用することが条件となっていることがあります。

「信用保証」とは、もし事業者が借入金を返済できなかった場合に「信用保証協会」が金融機関に対して事業者の代わりに返済する制度です(ただ、これで事業者の借入金が帳消しにはなりません。事業者は信用保証協会に返済していくことになります)。

 なお、セーフティネット保証4号・5号、危機関連保証を利用するには、本店等の所在地の区の認定が必要です。必要な書類、手順は区のホームページに記載がありますが、まずは融資申込を考えている民間金融機関に相談することをお勧めします。

画像:(図2)筆者作成資料

融資申込を円滑に進めるためにすること

融資申込を円滑に進めるためにすること

              4.政府系金融機関と民間金融機関どちらがいい?

 政府系金融機関(特に日本政策金融公庫)と民間金融機関、どちらにすればいいか迷うかもしれません。条件面では、大きな差はありません。

 まず言えるのは、普段から借入等で取引実績がある金融機関があれば、その取引実績のある金融機関に相談するのが早道です。

では、金融機関と融資の取引実績がない事業者の方は、どうしたらいいでしょうか。政府系金融機関の日本政策金融公庫は、申込が殺到しており審査に時間がかかっているのが現状です。したがって、資金確保のスピードを考えるのであれば、現時点では民間金融機関の方がいいでしょう。特に、小規模事業者の方は、地元密着で活動している信用金庫や信用組合などから相談するといいでしょう。


                  5.注意したいこと

 融資申込にあたり、注意したいことがあります。それは、事前準備無しにアポなしで金融機関の窓口に直接行かないことです。融資申込を円滑に進めるために、以下の手順で事前準備するといいでしょう。

画像:(筆者作成資料)

 手順1として、融資申込をしたい金融機関のホームページにアクセスしてください。コロナ対策の融資についての説明が何等かあるので、必要書類や手順をまずはご自身でできる限り読んで内容を確認しましょう。わからない場合は、問い合わせ窓口に電話します。

 手順2として、ホームページで確認した必要書類をできる限り事前に用意します。収受印付きの確定申告書の写し(電子申告の場合は、「受信通知」が収受印の代わりになります)、決算書は必須です(何期分必要かは要確認)。また、金融機関によって、印鑑証明書や履歴事項全部証明書(法人の場合)が必要になることもあります。前述した資金繰り表も用意しておきたいところです。

 手順3として、新型コロナウイルス感染を防止する観点からも、事前に電話・ネット等で予約をしましょう。なお、日本政策金融公庫では、融資申込自体が郵送やネットで行うことを推奨しています。アポなしで窓口に直接行くことは避けましょう。
以上、緊急の資金繰り施策としての「借りるお金」をご紹介しました。次回は、休業補償をした場合の助成金と新型コロナウイルス対策として新たな取組を行う場合に「もらえるお金」についてご紹介します。

融資申込を円滑に進めるためにすること

融資申込を円滑に進めるためにすること

(本原稿は、2020年5月22日現在の情報に基づいて執筆しています)


【執筆者プロフィール】
七田総合研究所 代表
七田 亘(しちだ・わたる)
中小企業診断士・社会保険労務士

<略歴>
 埼玉県庁にて中小企業の経営革新支援等の商工行政などに従事し、企業の「行動」が伴う経営革新計画の策定支援の実績多数。その後、みずほ総合研究所株式会社のコンサルタントとして、主に企業の人事制度再構築、M&Aに係る人事制度統合コンサルティングに従事した後、開業。中小企業施策活用、中小企業の経営戦略策定(新規事業開発、財務計画含む)から実行支援、人事労務に関する問題解決のコンサルティングとセミナーを得意とする。
日本商工会議所 規制・制度改革専門委員会 学識委員

七田総合研究所ホームページ
https://shichida-ri.co.jp/

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所