※企業概要は受賞当時(2021年)の内容です。
●あらゆる非鉄金属箔を極めて〝薄く〟〝長尺〟かつ正確に「切る」高度な加工技術の確立に邁進。世界一の技術を実現し、思いがけない経営危機もその技術力で乗り越えたこと。
唯一無二の技術が再起の原動力。愚直なまでに技術を追求する「勇気」。
オンリーワン化した技術に時代のニーズが追いつき、経営危機から脱出。
当社は非鉄金属箔の極細スリット加工に特化した会社で、1974年に私が独立して創業しました。この仕事に携わった当初から60年間、切った非鉄金属箔とその加工のポイントを「加工ノート」に記しており、ノウハウや知見が詰まった貴重な財産となっています。
金属業界はダウンサイジングが進み、軽薄極小化の時代が来ると信じて技術を磨いていました。「どんなものでも切れる」と自負していた当社に、87年に大手取引先から持ち込まれたアモルファス素材が立ちはだかりました。その素材は、刃物を溶かすほどの硬度と極度なもろさを併せ持っており、何度加工しても上手くいきませんでした。約1年かけて、素材のしなりに逆らわずに切る方法を見出して、独自の加工ノウハウを獲得。この加工ができるのは当社だけであり、アモルファス素材の専用工場として新潟工場を構え、月間100トンの生産を受けていた時期もあります。
携帯電話が普及し始め、当社が先読みして技術開発を進めていた軽薄極小化のニーズが高まり順調に業績を上げていた2000年頃、中国進出を図りました。
しかし、中国の企業文化や社員意識は日本の感覚とはかけ離れており、特に弊社が専門としている来料加工(原材料を無償支給して加工を委託する取引のこと)には合わず、苦戦の連続でありました。さらに、次期経営者として期待し、現地法人を任せていた人物の裏切りで精神的にも疲弊しました。12年には当時の年商の3倍に当たる11億円の負債を抱え、さらにその後思うように返済ができず、2度のリスケをしなければなりませんでした。もはや金融機関からの信頼は失墜し、当時、当社の破綻が噂されていたようです。
しかし、この窮地から救ってくれたのは愚直なまでに追求し続けてきた当社の技術でした。時代のニーズが追いついてきたのです。中でも、アモルファス加工技術が基礎となり、進化した加工技術となる「鏡面切り加工」や「バリレス加工」は、テスラ社の電気自動車用電池に必要な正極タブリード材のシェア100%となり、国内外の大手自動車メーカーからも採用され続けています。こうして19年には、2度のリスケをした企業としては異例の短期間で財務健全化を実現。20年の売り上げ、営業利益はともにどん底だった15年から倍増。経営の安定を取り戻しました。
当社が専門とする非鉄金属箔の切断技術には資格や免許がありません。したがって、社内で教育し熟練工を育てて技術を伝承し、全社員が日進月歩の創意工夫を心がけ、自社の強みの技術力を保持し、進化させています。「みんな仲良く、孫、子の代まで」の願いを込めた社名の通り、同じ想いの社員たちとこれからも唯一無二の技術を追求していきます。