※企業概要は受賞当時(2021年)の内容です。
●経営理念と自社技術を守るため、多額の資金調達が必要なMBOに挑戦。環境配慮型の新ダクト開発で業界の標準仕様品の常識を覆し、業界全体を活性化したこと。
MBOのリスクを背負い、業界の課題に挑み、自社の社員と技術を守る「勇気」。
環境配慮型の新製品で業界の常識を覆し、存亡の危機から無借金経営へ。
空調・給排気ダクトの製造から施工まで一貫して手がける当社は、大手のサブコンから受注し、関東圏を中心に全国展開しています。元々は創業者一族のオーナー企業でしたが、2006年に突然オーナーから会社譲渡を告げられ茫然自失。ダクト業界に詳しくない会社に売却されることによる従業員の不安を思い、技術力に優れたこの会社を守りたいとの一念でMBO(マネジメント・バイアウト)を決意しました。MBOの実施には10億円の資金が必要で、その時点での借入残高と合わせると27億円の負債を背負うことになり、銀行は強く反対。そこで、優れた技術力や独自の生産設備などを強みとして訴求すべく、今後10年間の事業計画および返済計画を策定し、銀行を説得しました。その結果、私の個人保証を条件に資金調達を実施することができました。
MBOによりオーナー経営から脱したことで、社員の自覚や使命感が目に見えて高まり、下請け企業であっても独創的な製品を作って常に挑戦していこうと士気が高まったのです。
我々のダクト業界は、国土交通省が定める公共工事標準仕様書に基づいて製品を作るのが習わしで、他社との差別化が難しいため、厳しい価格競争にさらされていました。この標準仕様の製品はかさばるため運送効率が悪く、重量もあり高所での作業に危険が伴います。そこで当社は、従来の半分の材料、半分の重さの「グリーンダクト」という新製品を開発し、既存の標準仕様書に代わる信頼性の高い品質検査証明をもって、市場に打って出ました。この製品は、作業環境の改善や納期短縮を実現できます。また、従来の約4分の1のコンパクトサイズなので、これまでのダクト運搬では200台のトラックが必要だとすると、このグリーンダクトでは60?70台で済み、交通渋滞の緩和や環境負荷の低減にも寄与します。
大手自動車工場の建設に採用されたことをきっかけに、環境意識の高まりとも相まって、採用物件が増加。
業界の常識を覆す製品となりました。
MBO実施時と20年度の実績を比較すると、売り上げは1.8倍、営業利益は3倍になり、27億円の借金は完済し、無借金経営を実現しました。また、グリーンダクトによる環境負荷の低減や作業現場の効率化といったメリットは、自社だけの成果とせず、さらに認知度を高めるため、希望する同業他社には製造機械を販売してライセンスを無償で提供。全国で150社以上の実績となっています。今後も、環境負荷の低減の実現を目指し、社会が必要とする企業になるために、さらなる挑戦を続けていきます。