※企業概要は受賞当時(2021年)の内容です。
●医学出版業で生き残るため、障害を抱える児童の訪問看護・リハビリ事業へ進出。後発のハンデを乗り越え新たなビジネスモデルを構築したこと。
思い切ったMBO&未経験のリハビリ事業進出で、現状打破に挑む「勇気」
一貫した理念に基づき医学出版業から新事業へ進出。人材育成に注力し、未来へつなぐ。
最大手の医学系出版社の敏腕編集者が1987年に創立した当社は、作業療法士向けのリハビリテーション分野や研修医向けの雑誌・書籍を扱う専門出版社です。しかし、後継者問題で社内が混乱し若い社員たちが辞めていくなど、収拾がつかなくなっていました。そこで、2005年に借入金4億円を背負ってのMBO(マネジメント・バイアウト)の実施により私が事業を承継し、社内の立て直しと業績回復を担う決心をしました。とはいえ、出版業界はデジタル化という変化の波にさらされ、私が社長に就任した時点でもすでに市場は2割ほど縮小。このまま出版社として生き残ることは困難であり、新たな事業の創出が喫緊の課題でした。その時、「私たちはリハビリテーションの啓発・普及を理念に出版事業を行ってきたのだ」と再認識。特に私自身が全国各地で行った取材を通して課題があると実感していた難病や障害を持った方向けの訪問リハビリに注力する事業に進出する決意をしました。
10年、子会社を設立し、訪問看護リハビリ事業に乗り出します。それまで出版社として関わっていた分野ですが、実際にサービスを提供するとなると経験がないため問題は山積。看護師や作業療法士合わせて6人程度の体制からスタートしましたが、なかなか専門職の人材が集まらず、先行投資も必要で借入金は8億円にまで増え、苦境に陥ってしまいました。そこで、出版事業で培った人脈を駆使して、独自の教育プログラムの開発等を進めたことにより、優秀な専門職の確保と唯一無二のサービスを確立できるようになっていったのです。それから10年、社員の7割以上を占めていた未経験者は、当社独自の研修により、プロフェッショナルな人材に成長しました。
現在は三輪書店グループとして子会社4社、医療法人1つを擁する陣容となり、04年の三輪書店単体の売り上げ6.5億円からグループ全体で30.5億円に、粗利益は同3.7億円から21.3億円に向上しました。三輪書店でも子会社でも若き後継者が育っており、全国に拠点を増やしていくビジョンを掲げるまでになりました。また、専門職のスタッフにも経営的な視点、マネジメントの重要性を伝え、各拠点の経営の戦力として育成しています。リハビリ事業が発展するとその現場経験やノウハウを三輪書店で書籍化するなど、両輪がうまく回る状況が実現できています。今後も、出版事業かリハビリ事業かという枠にとらわれず、世の中に必要なサービスを提供していきたいです。