※企業概要は受賞当時(2019年)の内容です。
●父から受け継いだ「社員第一主義」を貫き、女性・高齢者など誰もが働きやすい職場づくりに挑戦
当社は社名の通り、横引のシャッターを製造販売する会社です。一般的にシャッターというと上下に開閉するイメージがあると思いますが、横引のシャッターは設置場所やサイズが自由でしかも開閉が楽などのメリットがあり、デザイン性にも優れているので商業施設などでも多用されています。
2011(平成23)年に先代社長の急逝により現社長が引き継ぎましたが、創業者であった先代社長が「ダメ、しょうがない、できない、無理ですよ、わからない」を禁止語にしていたので、何かと理由をつけて自らの思考や行動を制限するのではなく、「どうすればできるようになるか」を考える姿勢が会社全体に根付いています。
加えて、これまで何度か会社存続に関わる大きな危機を乗り越えてきた経験により、「やれることは全てやる!」という風土ができています。
さて、今回の新型コロナウィルス感染症拡大においては、未知のウィルスであることから、どのように自社の事業に影響を及ぼすかが予測できず、感染拡大が始まった2020年初頭(1月?4月頃)は社長も社員も戦々恐々とした日々を過ごしていました。
当社の事業はBtoBもBtoCもありますが、BtoBの商業施設や企業などがコロナ禍で休業を要請されたり業績悪化したりという状況を知るにつれ、不安は高まる一方。社長は過度のストレスから帯状疱疹を発症するほどでした。
しかし、持ち前の風土から「守りばかりを考えるのではなく、泥臭くてもいいから、自分たちができることを全てやろう」と決めたのです。
まず、2020年2月から徹底した感染対策に取り組みました。具体的には、社員および家族へのマスク・消毒液・次亜塩素酸水の配布、混雑する通勤時間帯を避けるスーパーフレックス制への変更、一部社員のマイカー通勤への変更、営業時間および作業時間の短縮など。その上で2020年4月から、感染防止対策製品「アクリルパーテーション」の製造を開始し、翌5月から自治体等へ無償寄贈を行いました。
そして次のステップとして、コロナ禍を機会に社内改革に着手。2020年4月から全社員にコロナ禍での働き方についてヒアリングを実施して在宅勤務や出勤日や時間など働き方の希望に対応し、それを実現するために従来の作業のあり方を見直し。これにより、工場作業員のセクション別の仕事の多能工化から、工場と工事部、営業部と設計部、事務部門などでも多能工化が実現できたのです。
また、iPadを導入して紙ベースからデータベースへと変更し、受注管理システム、名刺管理ソフト、問い合わせから受注・設置完了までの一元管理、目的別グループLINEなど、ICTを推進しました。
また、コロナ禍でもできる福利厚生として、社員および家族分のおせち料理などの配布、社内でのお笑いライブを実施。
さらに、この時期だからこそ積極的なブランディング戦略が必要だと考え、横引シャッター記念日の制定、ノベルティ制作、社長の出版や動画制作など様々な取り組みを行いました。
もう一つ、大きな取り組みは、全部署における財務の見直しです。「これは絶対必要」という固定概念を取り払って小さな無駄をなくし、浮いたお金を繰り上げ返済などに充てることで余剰の支出を防ぎ、コロナ禍でも盤石な財務体質の会社へと前進できました。
このようにやれることを全てやるためには、社内外との情報共有やコミュニケーションが不可欠なため、結果的に信頼関係構築に寄与できたことも成果の一つ。そして、「コロナ禍でも活気ある会社」という評価を得られ、業績向上のエンジンとなった次第です。
今までの当たり前が大きく変化した時代、従来の企業体制も変化させていかなくてはなりません。閉塞感が漂う中、当社は中小企業であっても生き生きと楽しく経営している姿を見せることにより、他の企業に良い影響を及ぼすことができるようにしたいと考えています。SNSなどを活用した積極的な情報開示で、自社と社会とを繋いていくこともその一環です。
また、自社の生き残り戦略と同時に、身の丈にあった社会貢献(CSR)の継続にも注力していきます。自社製造のアクリルパーテーションの無償寄贈はその一例ですが、地元地域あるいは知人友人が求めている社会貢献活動に誠実に応えることで企業の役割を果たし、役立ちたい。そして、社員の誇りやこの会社で働く喜びを喚起したいと願っています。
これからも「やれることは全てやる」という文化を大切にして、未来へと挑戦を続けていくことが当社らしさだと言えるでしょう。