※企業概要は受賞当時(2016年)の内容です。
●アパレルメーカーの海外生産進展の影響で、売上の70%を占めていた受託加工の受注が減少し、企業存続の危機に直面する。一般企業のユニフォーム・販促品に、オリジナル刺繍の活路を見出し、明確な価格設定や顧客企業のブランディング向上を目的とした自社企画商品の開発等により、下請け加工業からの脱却に挑戦。小規模企業で営業人材に余裕がないことから、WEBを活用した新規顧客の開拓を実現し、売上高を伸長させ、脱下請けに成功したこと。
新ビジネスモデルを構築し脱下請けに成功
1939年現社長の祖父である松本文作氏が、当時は東京に三人しかいない手刺繍による個人名(ネーム)刺繍加工で東京都荒川区にて創業する。父である前社長の入社に伴い機械化し、アパレルメーカー向けワンポイント刺繍の受託加工業が主業となる。
そして外資系企業で経験を積んできた現社長が入社した2000年に大きな転機が訪れる。アパレルメーカーの海外生産の進展、繊維企業の不祥事の影響もあり当時売上の70%を占める受託加工の受注が激減し、企業存続の危機に直面する。
アパレル業界の海外生産移行の流れは加速し、国産アパレル市場への新規営業では売上回復は困難を極めた。そのような状況下において下請け加工業(メーカー受託加工)から一般企業・団体のユニフォーム、販促品にオリジナル刺繍の需要があることを見出し、主業を一般企業・団体に直接販売するビジネスモデルにシフトする大きな決断をする。
2001年にWEBサイトを開設し、直接販売の新規営業に着手する。当時、業界初となる取次業者向け刺繍価格表の設定、刺繍商品の定額制販売と価格を明確化、自社仕入(今治タオル、日本製高級ポロシャツ)したオリジナル刺繍製品の開発販売で受注増に繋げていく。顧客企業のブランディング向上を目的としたオリジナル刺繍の提案は、営業人員が少ないながらWEBサイトと通販にはない綿密な打ち合わせでお客様の希望に沿った高品質な仕上がりを目指す。現在主流のコンピューターによる簡易型刺繍版製作のみでなく、より細やかな刺繍表現ができるデジタイザー(手打ち式刺繍版製作)も採用したオリジナル刺繍は、顧客からのリピート率も非常に高い。国内刺繍加工会社数が全盛期の約4分の1に減少(約500社)する中、アパレルメーカーからの受託加工は毎年減少し、2010年には取引がゼロになったが、新ビジネスモデルの構築に成功したことで、現社長入社時の2000年比で売上高が約450%増加するまでに成長している。
総合刺繍メーカーとして社訓とする「一針入魂」の精神で、刺繍を通じたお客様のブランディング向上のお手伝いは、今後も多くの企業・団体に支持されていくことだろう。