※企業概要は受賞当時(2013年)の内容です。
●使い捨てが常識の空調フィルタを、洗浄・再利用する技術の開発に成功し、省エネと廃棄物削減に大きく貢献したこと。フィルタの洗浄・再利用は大手メーカーでも開発が困難であったが、千載一遇のチャンスと捉え、開発・実証に6年かけて実現し、都市再開発のゼロエミッション化にも貢献したこと。
●照明や冷暖房のように節電できると認識されていなかった「空気搬送動力」に注目し、全く新しい省エネ型の節電メニューを開発。時代のニーズにあった付加価値の高い節電対策として、商業施設だけでなく、工場やクリーンルームなどの製造現場にも積極的に普及していること。
ビルの建設やメンテナンス業界で、空調用中性能フィルタは「使い捨て」が当たり前。フィルタ自体の洗浄は可能でも、性能の劣化や安全性が懸念され、大手メーカーでは開発が進まなかった。2004年に東京都心で大規模再開発プロジェクトが始まり、従来にも増して省エネや環境に配慮した技術が求められるようになる。空調については、新技術の開発を大手メーカーに要請するが、すべて断られた後に、同社に打診があった。高い空調技術を有すると自負する社長は、この機会を、飛躍できる千載一遇のチャンスと捉えて、開発を決意する。
開発には、同社と洗浄会社・OEMフィルタ会社の三社が一体となって取り組み、粉塵負荷と洗浄を繰り返し、20ケ月を要して、完成にこぎつける。新品で1年使用後に3回再生利用し、合計4年間の運用計画を立て、再開発ビルに4000個のフィルタを納入。結果は同社の予想した通りに実証され、ゼロエミッションを掲げる都心の再開発プロジェクトを支える貢献ができた。洗浄性能と経済性については、具体的には次の3つ、①圧力損失の削減、②フィルタの手洗い要員の大幅な減少、③フィルタを廃棄せず再利用できるためランニングコストの節約、が高く評価され、これ以降受注が相次ぐことになる。
続いて、時代のニーズがCO2の削減から「省エネ(節電)」になると見越し、「省エネ性能」の検証を公的第三者機関と共同実施する。圧力損失は空気抵抗と同じであり、少ないほど空気搬送動力が削減できることに目をつけた。従来型と比べ50%の空気抵抗が低い同フィルタを使えば、約20%の送風動力を削減できることがわかり、照明や冷暖房(熱源)などの節約とは異なる、全く新しい節電が可能となった。現在は、商業施設だけでなく、工場やクリーンルームなど産業施設にも節電メニューとして提案し、エコ意識の高いビルや施設を中心に、導入が始まっている。
製品開発の底流には、いつも「もったいない」という想いがあり、新しい発想から生まれた技術を活かして、社会が抱えている問題の解決に挑戦を続ける同社の取り組みは、これからも続く。
全国に節電技法を広めたい
思いがけず優秀賞を受賞し、感謝とともに責任を感じている。フィルタの低圧損化は省エネに貢献し、洗浄再利用は経費削減につながる。「もったいない」という日本人の心を基調に、この節電メニューをビル空調に限らず、自動車、印刷、クリーンルーム等フィルタを使う全産業に拡大するのが当社の社会的使命と思っている。
現状維持の建物管理から省エネチューニングできるオペレーション管理へ時代のニーズは変化し、「フィルタによる節電」は新テーマになっている。開発中の簡易風速計「マトリックス・フローメーター(特許出願中)」との併用で簡易にできる節電技法を広めるべく全国を走りまわる元気な企業になりたい。
(株式会社ユニパック/松江 昭彦 社長)