※企業概要は受賞当時(2013年)の内容です。
●精密金型による金属部品加工は、品質管理面で困難を伴うが、積極的に東南アジアや中国に進出。現地社員が“自らの会社”と思えるまで教育を徹底し、他の追随を許さない高い技術の製造を現地で可能にしたこと。
●自社特許製品であるパイプを三次元・自由自在に曲げられる装置で、日本製工作機械の認知度や信頼性が低い欧州の市場に挑戦し、苦難の末、ドイツでブランド化、ライセンス生産することに成功。欧州の自動車の軽量化、低コスト化に大きな貢献を果たしたこと。
産業の牽引力とも言われる精密金型の製造メーカーとして創業した同社は、精密加工技術を駆使した、順送プレス金型やリフレクター金型などの超精密金型を得意とし、自動車やコンピューターなどあらゆる分野において、幅広く貢献してきた。
精密金型は、ミクロンオーダーの精度と角度を自在に操るテクノロジーが求められる。道路の反射鏡や自動車のリアランプに使用されるリフレクター金型などは、極めて高度な製造技術が必要で、この種の金型の製作が可能な独立系の金型メーカーは世界でも10社に満たないと言われており、同社はその中の1社である。
しかし、日本のセットメーカーの海外生産が始まると、今後は、海外に生産を移管する動きが加速化すると予測し、タイを皮切りに、フィリピンや中国無錫・深センへと工場の進出を決意する。企業の規模から考えれば、大きな挑戦であったが、進出にあたっては他社との差別化を図るため、高度な技術を要する製品も現地生産できるよう、人材の育成に力を入れる。特に海外でも通用する技術者の養成が必須であることから、日本から敢えて若手を現地工場に派遣し、一緒に作業しつつ、現地の従業員が自らの会社と思えるまで交流や育成を続けた。
金型だけでなく塑性加工技術の融合にも力を入れ、産学共同研究により、金型を必要としないパイプ曲げ装置であるCNCパイプベンダーを開発する。自社特許製品として国内では大幅な売上増に貢献するが、需要が一巡したため、新たに欧州市場での自動車向けの開拓を検討。しかし、欧州では日本製工作機械の認知度は低く信頼性が少なかった。苦難の末、ドイツに技術者を派遣して現地の企業とも協力しあい、ライセンス生産を始め、ブランド化にこぎつけた。現在では欧州での自動車等の軽量化・低コスト化に大きく貢献している。
グローバル市場は様々な人間の思惑や欲望が交錯する大変厳しい世界。一筋縄ではいかないが、困難に立ち向かう「ものづくりのDNA」を育みながら、海外に根付いて生産を拡大する同社の取り組みは、海外展開を図る中小企業のお手本になる。
高い付加価値をもたらす企業に
日頃当社を支えてくださっている皆様に感謝の気持ちを伝えたい。今回の受賞で日々の社員の頑張りが認められた気持ちで、大変にうれしく感じている。
今後はさらに人としての成長をベースに技能を極め、高い付加価値を世間にもたらす企業に成長させたい。また、社員全員がお客さまとつながって、ひとりでも多くの当社のファンを世界に作る。そして日進グループが一体となり、働く喜びを誇りを共有し、これから100年続く会社を構築していきたいと考える。
(日進精機株式会社/伊藤 敬生 社長)