※企業概要は受賞当時(2013年)の内容です。
●大手精密電子部品メーカーの海外生産の加速を受け、国内需要が減少する中、海外進出を決意。フィリピン工場の設立経験を糧に現地の人材育成・活用を積極的に進めた結果、14もの海外子会社等の拠点の立ち上げに成功し、ASEAN内におけるグローバル展開を図ったこと。
●「使ったあと廃棄されるゴミ」という梱包材のイメージを払拭するため、社内の反対を押し切りフィリピンでのマングローブ植林に着手。共同体験による社員の連帯感の向上と、ステークホルダーの共感を生み、未来の成長に向けた挑戦を継続していること。
90年代の大手製造業の海外進出ラッシュにより、多くの中小企業は国内での基盤を失った。同社も例外ではなく、平成7年の大手主要取引先の海外移転によって、売上が大幅に減少。海外駐在の経験者はいなかったが、取引先に追随する形でフィリピンへの進出を決意した。
しかし、初めての海外展開は困難を極めた。工場は納期を守れない上に品質も悪い。赤字が続き、前途多難な状況だった。そこで、平成9年に入社した現社長が前職でアメリカ工場を立ち上げた経験を買われ、フィリピン工場の責任者に抜擢される。現社長は、納期を守ることの大切さを粘り強く社員に浸透させていった。納期の順守が可能になると、顧客から信頼を得て売上は伸長。その分を給料に反映させることで、社員には頑張るほど報われるという意識が根づいた。
この経験と収益を軸に、他国の工場立ち上げをフィリピンで育成した社員に一任。英語が堪能で海外赴任への抵抗感がないことも奏功し、各国とも早期に軌道に乗せることができた。現在では14もの海外子会社等の拠点を立ち上げ、事業規模を海外進出前の3倍にまで成長した。
もう一つの挑戦が、フィリピンでのマングローブの植林だ。梱包材には「使ったあと廃棄されるゴミ」という環境破壊のイメージがある。このイメージをクリーンで環境に優しいイメージに変革すべく、短期間で成木となり、CO2の吸収・水質浄化等に効果のあるマングローブの植林を社長が提案。当初、役員会は猛反対したが、黒字の維持を条件に役員の理解を得た。
植林には各拠点から数名ずつ、海外出張の経験がない社員が参加する。地球のために汗水たらして植えるという体験を、国籍や言葉の異なる社員が共有することで、グループ全体の連帯感という相乗効果が生まれた。今でも毎年売上の一部をこの植林活動に充てており、総数は370万本を突破した。
同社では今後も海外での存在感を高めていく一方、エコについても今まで以上に追求していく方針だ。何十年後も社員にとって働きがいのある会社であり続け、より多くの人に「驚き」と「感動」と「安心」を提供し続けるために。
世界トップクラスを狙う
わずか40名の中小企業が世界に打って出て、ここまでこれたのも、“驚き”と“感動”をともに共有・体感してついてきてくれた従業員と、それを任せてくれた会長や、支えて頂いたお客様をはじめとするすべてのステークホルダーの方々のおかげである。これからも、常に“驚き”と“感動”を通じ、皆さまに“喜び”を共感して頂ける“感動経営”を継続していく。自社のコア技術力をデジタル化して伝承成長可能にし、梱包設計の分野で他社を追随させない世界トップクラスを狙う。また、“究極のeco”を追求した本社ビルを完成させ、ホールディング会社の機能を充実させて、M&Aにも挑戦する。
(カネパッケージ株式会社/金坂 良一 社長)