※企業概要は受賞当時(2013年)の内容です。
●織物機械の修理から繊維織機の歯車製造に転換した同社は、歯車試作のトップメーカーになることを決意し、取引先として1社依存だった体質を転換する。徹底した差別化・高精度化を目指した結果、他社の追随を許さない付加価値の高い歯車の製造に成功し、新たな歯車試作のビジネスモデルを確立したこと。
●歯車試作のトップメーカーになるために、従業員の意識や様々な社内体制を変革して、年間売上高の半分に相当する最新工作機械を導入するなど、顧客の要請に応える体制を構築。全ての国内自動車メーカーと取引を果たし、卓越した技術力を駆使して新たな分野への飛躍を目指していること。
「内野に頼めばなんとかなる」そう言われている歯車試作の専門のメーカーが八王子にある。戦前に織物機械修理の町工場として創業した同社は戦災で工場を焼失した。戦後は自動車部品などの加工を手掛け、後に航空エンジン用精密歯車の加工を受注する。同社は歯車研削加工が一般的ではない時代から、歯車の作動状況の善し悪しは、最終的に歯車成形の品質に左右される事を見抜き、熱処理後も当時最新で高価なスイス製MAAG社歯研機を導入し精度を追求した。
現社長は3代目として平成10年に事業を継承した。当時は技術力がありそれなりに収益も出ていたが、組織で動く体制になっておらず、そのままでは会社の将来像は描けなかった。そこで同社の改革に乗り出す。これからは主な取引先1社では立ち行かなくなる。しかし販路を積極的に広げればその主要取引先の信頼を失い全体の受注が落ちるリスクもある。外資系の会社でマーケティング経験のある社長は、そのノウハウを活かし「社内体制の変革を含む中期長期の計画」を立案し、将来像を1社1社丁寧に説明して周り、新規開拓を図った。もちろん組織として対応するため、情報はオープンにし社員の理解を得た。同社はレース用歯車の製作で培われた対応力で、どんな顧客の対応も出来る体制を作っていった。他社で断られた案件でも内野に行けば大丈夫といつしか言われる程、各取引先にとって唯一無二の存在となった。
同社の一貫した自社技術で顧客の要求に対応する姿勢は、高い技能を有する人材を育て、最先端の設備投資を計画的に実行することにつながっている。その結果として高精度かつ付加価値の高い試作歯車加工を請け負うビジネスモデルを確立できた。今では国内の自動車と2輪の全メー カーと取引が可能となるなどこの15年で売上高5倍へと成長させた。
また同社は、高価な最新工作機械を導入するだけでなく、リーマンショク後に着工した新工場は、作業場をはじめ至る所で自然採光や自然換気ができるよう工夫されており、働く環境づくりの投資も惜しまない。そして、同社は将来の人材を見据え、ここ3年、新卒採用を積極的に実施し、人材育成への投資も積極的だ。
「内野に頼めばなんとかなる」じつに頼もしい存在である。
勇気ある経営判断が評価されてうれしい
大賞受賞のお知らせをいただいた時は正直、驚きました。リーマンショック後、景気が悪化している時に新工場の建設や、年間売上高の半分に相当する最新工作機械の導入に踏み切ったことが評価されて、うれしく思います。
(株式会社内野製作所/内野 徳昭 社長)