※企業概要は受賞当時(2012年)の内容です。
●昭和20年代から、多くの機関で研究されていたが実現されていなかったユーグレナの世界初の商業大量培養に成功。ユーグレナが持つ栄養素や高いCO2の固定能力により、世界の食料問題と環境問題の解決に向けた貢献が期待できること。
●バイオジェット燃料生産に向けた大手企業との要素技術開発や、多分野の企業との連携によって事業を推進するなど、中小企業がオープンイノベーションによって大手企業と連携する先進事例を築き上げたこと。
体長わずか0.05mmのユーグレナ。この微細藻類が、世界の食料問題と環境問題を解決する可能性を秘めている。
ユーグレナは、野菜のビタミン、肉の必須アミノ酸、魚のDHAなど、59種類もの栄養素を含む超優秀微生物であり、人間が必要とする栄養成分のほぼすべてを持つ。ラーメンやクッキー、サプリメントなど、ユーグレナを使用した機能性食品や化粧品は約60種類にも及んでいる。
しかし、同社の事業化への道のりは決して順調なものではなかった。話は昭和20年代に遡る。当時からユーグレナの有用性は注目され、国内外の研究機関で大量培養が試みられてきた。しかし、成功者は誰ひとりとして現れなかった。社長も大学時代、後輩と二人三脚で培養に向けて奔走したが実現せず、大量培養への夢を内に秘めたまま大学を卒業。
しかし3年後、ついに夢は現実のものとなる。「極限状態のところまで行きついてこそ、乗り越えられるものがある」。社長は振り返る。培養技術がない中、勇気を持って創業を決意。何度も実験に失敗し、とうとう資金が枯渇する寸前まで行く。しかし、創意工夫と、国内有数の研究機関との協力により、見事、世界初となる商業大量培養に成功。まさに退路を断って臨んだ気合いが、成功の原動力だった。
培養技術の確立により事業が開けると思われたが、厳しい道のりは続く。食品会社や商社などに営業活動を展開するも、商品の認知度は低く、かつ他社での導入事例がないため、売上は低迷。またもや極限状態に追い込まれたが、3年後、大手企業との連携体制の構築を果たすことで、見事に危機を打破。販路開拓の道を切り開いた。
今後は、製品需要の拡大に対する対応力を強化すべく、社長の想いは、培養設備の更なる強化へと向かう。さらに、貧困地域への工場建設による現地の経済波及効果を図りたいという、高い志を掲げた。
ユーグレナオイルによるジェットフライトの実現に向けた挑戦もスタート。一中小企業が、航空運送分野のCO2排出量の削減に貢献する可能性を秘めているのだ。
同社の壮大な挑戦から、今後も目が離せない。
ユーグレナの事業化へ研究を更に進める
当社は10月から第9期に入り、石垣島での研究設備をさらに充実していく予定である。今後も社会を驚かせるような挑戦を続け、大きな障壁に再び直面したとしても、この賞を励みに邁進していきたい。
すでに仲介業者を通じての海外展開をしているが、今後は創業のきっかけとなったバングラディッシュを初めとした東南アジアへ直接的な展開をし、バイオジェット燃料を始めとするユーグレナの機能性の研究をさらに進め、事業化を予定している。
(株式会社ユーグレナ/出雲 充 社長)