※企業概要は受賞当時(2012年)の内容です。
●先代創業者の急逝により専業主婦の立場から事業承継した後、社員の反対を受けながらも3ヵ年計画の経営改革を断行。社長のリーダーシップによって改革は社員一丸の取り組みとなり、「新生ダイヤ」が誕生。今日における自社独自の技術力と、対応力のさらなる強化のための礎を築きあげたこと。
●リーマンショックの余波による休業状態時に、大手顧客からの請負化を視野に入れた技術者派遣の依頼に対し、社員のモチベーションダウンリスクがありながらも他の応援企業よりも若いチーム編成で対応。その結果、請負化を唯一実現させ、大手顧客との信頼関係の強化と技術の共有化を可能としたこと。
精密部品などの寸法の誤差を測定するためのゲージ。自動車メーカーの生産ラインには欠かせない存在だ。「ゲージ屋の誇りを保ちたい」。この想いを胸に、社長と社員が一体となったチャレンジを断行した町工場がある。
ゲージは、機械による切削では限界があり、1μm単位の仕上げは、職人の手作業による火花の飛び方や音の変化など、微妙な変化を捉えて行われる。高度な精度要求に対応可能な、いわば職人集団である。
その同社が、カリスマ先代創業者の急逝により大きな転換期を迎える。
先代が急逝した翌日、銀行の担当者が同社を訪れた。当時の業績は芳しくなく、先代の技術力を失ったことで、M&Aの提案が持ち出された。しかし、先代の娘として、後悔しない道を選びたいと、専業主婦の立場から勇気を持って事業を承継。社長は、取引先や金融機関に対して3 ヵ年の経営改革を宣言。職人集団である社員の大反対にあうものの、会社を良くするために本気でぶつかりあった。社員の意識改革、生産管理システムの全面変更などにより、組織改革を見事に成し遂げた。改革の最終年に、苦労を分かち合った社員の企画により実現した旅行で、社員から受けた「これからも死ぬまで社長についていきます」。の言葉を忘れることは出来ない。
次なる挑戦は、大手顧客からの請負化だ。同社規模の企業から、大手への社員派遣の実例はなかった。しかし平成21年、同社を含めた協力会社5社による、大手顧客に対する将来の請負化を視野に入れた技術者派遣が決定した。他社は、請負化に対して懐疑的であり、年齢の高い人材を派遣したが、同社は若手人材のモチベーションダウンリスクを顧みず、若いチーム編成で対応した。結果、同社のみが唯一、見事に請負化を実現させた。まさに、同社の粘り勝ちであり、大手の教育を受けることによって、モノづくりの考え方や技術の幅を広めることに至った。
今後は、少数精鋭の技術者集団としての機能強化に社長の目は向く。そしてコア技術を守るための対策に向けたグローバル化も選択肢として持つ。
「新生ダイヤ」の、パイオニアとしての新たな挑戦が続く。
積極的に若手の育成
「勇気ある経営大賞」にチャレンジできた事自体が経営者として光栄で嬉しく思っていたが、さらに優秀賞まで受賞し、嬉しさとともに感謝の気持ちで一杯だ。これは社員をはじめ、今までご支援頂いた皆様のお蔭だと思っている。今後も技術の継承と発展の為、社員と共に頑張っていく。
現在、当社は先輩方が築き上げた技術を後世に伝えるために、若手の人材育成を積極的に行っている。3年後は成長した若手達が職人や管理者として育ち、彼らとともにさらなる展開に向けての挑戦をしていくことを望んでいる。今も当社の社長である事を楽しんでいるが、3年後はもっと楽しんでいるはずです。
(ダイヤ精機株式会社/諏訪 貴子 社長)