※企業概要は受賞当時(2011年)の内容です。
●文系出身のハンデを負いながらも公的機関と連携し、試行錯誤の末、大手メッキ企業でも実現できなかったリチウム電池部品に、電気メッキで膜厚3μmで均一にニッケルメッキを施す技術開発に成功したことで、一躍高い技術的評価を獲得したこと。
●海外発注に切り替えていた大手メーカーのニーズに応えるべく、膜厚1μmでも錆びないニッケルメッキ技術の開発に成功。コストダウンを模索する大手電機メーカー等に対する貢献度が高く、また国際競争力を有する高い技術として、今後の成長が期待されること。
「考える、工夫する、諦めない」。この3つに、「簡単なことの積み重ね」を加えることで、技術開発に成功してきたのが同社である。中小零細企業に希望と光を注ぐ歴史が、そこにはある。
IT不況による厳しい経営環境の中、大手メッキ企業が挑戦するも断念せざるを得なかった技術の開発が持ちこまれた。それは、リチウム電池部品の安全基準を満たすために、部品に膜厚3μmのメッキを施すというもの。当時のメッキ技術では膜厚5~10μmで制御するのが限界であった。もし、事故が発生してしまったら開発企業に責任が及ぶ。周囲からは、無理だと一蹴された。しかし、社長はやるしかなかった。「メッキの常識を克服し、不可能を可能にする」。6カ月もの間ほとんど寝ずに研究開発を敢行。産業技術研究センターと連携しながら、諦めずに目の前の課題を一つ一つクリアしていった結果、見事開発に成功。難しいメッキは深中に頼め、という評判が広まり、プリンタの部品やF1エンジン部品などの新規受注の獲得し、同社の礎を築いた。
もう1つの挑戦は、コストダウン実現のため材料をステンレスから鉄に切り替えたうえでの、膜厚1μmでも錆びないニッケルメッキ技術の開発だ。リーマンショックに端を発した不況により、海外発注に切り替えていた取引先の要請に応える形で、開発に成功。取引先のコストダウンに大きく寄与する技術であったため、見事、取引関係を復活させることが出来た。
社長は自ら納品に赴き、ユーザーと直接顔を合わせ、ニーズを把握し提案を行う。「出来ることを、1つではなく3つ組み合わせて提案することでオンリーワンの提案になる」、と社長は言う。取引先から頼りにされる存在だ。社長の気概は、従業員教育やフロンティアすみだ塾を通じた若手経営者の育成、大学の客員教授としての活動にも表れている。
地域の産業振興役をも担っている、これからも応援し続けたい、「下町の町工場」だ。
中小零細企業の「希望」に
このような栄誉ある賞を頂き、望外の喜びです。今後は、社業をさらに発展させて、地域に貢献できる企業を目指すとともに、円高などに左右されない確固たる技術を次々と開発し、業界はもちろん、中小零細企業の「希望」になりたいと思います。
(深中メッキ工業株式会社/深田 稔 社長)