※企業概要は受賞当時(2011年)の内容です。
●ヒーター技術から派生した高精度温度コントロール技術を武器に、周囲の反対を押し切り、国内初の6分で結果が分かる糖尿病検査装置と検査試薬の自社開発に挑戦。苦闘5年の末、開発に成功し、今日では先行海外メーカーと同程度のシェアを獲得。予備軍の早期発見により、増加傾向にある糖尿病患者数の削減に対する貢献が期待できること。
●ヒーター関連機器・事務機器・医療関連機器の各分野において技術開発を重ね、精度の高い製品を世に供給し続けた結果、大手海外メーカー等の新規顧客獲得に成功するなど実績が豊富であり、研究開発型企業として今後のさらなる飛躍が期待できること。
国内有病者数が1,000万人を超えたといわれる糖尿病。全自動糖尿病検査装置は1台1,000万円以上もする。そのため小さな病院では装置の購入は困難であり、採血した検体は検査機関に送る必要があるため、検査結果が分かるまでには数日かかり、検査を受けた患者は結果を聞くために後日来院しなければならない。このわずらわしさが、多くの人が検査や治療を受けずに糖尿病を放置してしまっている大きな要因だ。
サイレントキラーといわれる糖尿病のキーは、早期発見・早期治療だ。同社が自社開発した国内初となる開業医・クリニック向け糖尿病診断装置は、医療現場に活路を見出した。糖尿病の主な指標であるヘモグロビンA1cを正確に測定する装置で、約5~7分で結果が出る。そのうえ、コンパクトで軽く、1台50万円程度と安い。検査方法は、指先に針を刺して採血し、専用試薬のカートリッジにセットして、スタートボタンを押すだけと、極めて簡単だ。医師は、その場で出る数値をみて、患者と面談し、すぐに治療に移ることができる。装置は地域医療機関に急速に普及し、たった1年半で年間の販売台数が先行海外大手メーカーと肩を並べるまでに成長した。
もともと同社は、ヒーターの高精度温度コントロール技術を核にした電気機械器具のメーカーであり、この技術は診断装置の血液の温度管理に活かされている。しかし、化学の世界は同社にとって未知の領域であったため、診断装置と検査試薬の開発には周囲から大反対を受けた。しかし、社長の決断によりラボをつくり、外部の薬剤師や臨床検査技師等の専門家を採用して開発を敢行。苦闘5年の末、念願の商品販売を迎えた。さじを投げる寸前までいった研究開発を支えたのは、社長の「糖尿病の早期発見に貢献したい」という強い想いだ。
今後は、糖尿病患者の急増が予想される新興国への進出や、検査装置の開発をさらに推し進めるなど、同社のあくなき挑戦は続く。
「モノづくりへの信念が評価され励みに」
メーカーの使命は良い製品を作り、それが社会の役に立つことだという信念をもって研究を重ね、技術を磨いてきた結果、今回の栄誉ある賞を頂き、嬉しい限りです。私共の検査装置で糖尿病の早期発見ができれば、大きな社会貢献になるとの確信のもと、今後とも他社より数段優れた装置の開発に取り組んでまいります。
(株式会社サカエ/松本 弘一 社長)