※企業概要は受賞当時(2010年)の内容です。
●あえて在庫を持つことで顧客の即納要求に対応。不景気のときにあえて工場拡張、高価な工作・検査機器を導入し、高品質な製品を安定的に供給することを可能にしたことで、大手企業との直接取引を実現、2次下請けからの脱却を果たしたこと。
●生産設備、検査機器、人材育成、5S、地域連携など、あらゆる角度からの見直しと強化を図ってISO9001認証を取得するなど、品質向上へのたゆみなき挑戦を続け、要求品質レベルが格段に高い防衛産業への参入を果たしたこと。
大田区の静かな住宅地の一角に、ロボットを彷彿させるひときわ目を引く建物がある。そこがマテリアルの本社工場だ。平成4年創業の若い会社ながら、近隣にすでに4工場を所有する、アルミを中心とした非鉄金属加工を行う、大田区でも優良な町工場である。本社工場の入り口を入ると、アルミの棒材、板材の在庫が目に入ってくる。
若き創業社長は、定時制高校に通いながら、職場を転々とし、最後に勤務したのが、今の仕事をするきっかけとなった金属材料問屋だった。そこで持ち前の向上心が発揮される。会社に提案して切断機を導入してもらい、単に材料を売るだけでなく、顧客の要望の長さに切って売ったところ、これが喜ばれた。バブルの時期でもあり、売上は5倍に伸びる。顧客の要望は徐々にエスカレートしてくるが、追加の設備導入は却下された。そこで独立開業を決意し、当初は卸からスタートして加工メーカーへの転換を図ってきた。
同社の強みは、スピードと製品の信頼性。今では常時120tの在庫を有し、即納体制を敷く。在庫を持たないことが経営の手本とされる中、あえて在庫を持つことで、他社に比べ発注にかかる24時間の優位性があるうえ、金属材料問屋勤務の経験から、材料の特性を知り尽くした最適な加工ができる。
平成14年頃、主力取引先から高価格を理由に取引を打ち切られたのを機に、2次下請けからの脱却を目指して、工場の買収と高価な設備導入という大きな決断を下す。同規模の町工場にはない高価な工作・検査機械がずらりと並ぶが、結果はこの決断が英断と出た。飛躍的に品質と供給能力を向上させ、大手メーカーの1次下請けになることができたのだ。
平成15年に大田区優工場に認定されるが、町工場としてこのような認定を目指すこと自体はごく当たり前の行動だ。しかし、その後の行動が他社にはない、社長の真骨頂と言えよう。同年の認定は最下位ギリギリの合格。「井の中の蛙」を自覚し、審査員の厳しい指摘に謙虚に耳を傾け、再チャレンジが始まる。生産設備、検査機器、人材育成、5S、地域連携など、あらゆる角度からの見直しと強化を図ってISO9001認証を取得するなど、品質向上へのたゆみなき挑戦を続け、5年後には大田区優工場の最優秀賞たる「総合部門賞」を受賞した。要求品質レベルが格段に高い防衛産業への参入を果たし、今後は航空機、防衛、医療、原子力など、付加価値の高い分野での成長を目指す。
平成4年創業から今までに関わって頂いた人たちに感謝したい。「人と人との繋がりがテクノロジーを進化させる」。これからも、人との関わりを大切に、また人の役に立つ企業であり続けたい。
日本から付加価値の高い製品を世界に届けていくには、技術力、設備力を充実させ、品質管理、人材育成を強化していかなければならない。3年後、日本国内の製造業と連携し世界の困り事を解決できる企業を目指したい。