※企業概要は受賞当時(2009年)の内容です。
●特殊な形状から困難を極めた「ドクターベッタ哺乳びん」の製品化(ガラス加工)にあたり、熟練の技術を有する企業と二人三脚により成功させたことが、東京ならではの中小企業のコラボレーションモデルになると評価。
●大手メーカーの寡占状態である哺乳びん市場において、価格競争を回避するマーケティングにより、後発の中小企業ながらシェアを伸ばし続けていること。
アメリカの医学博士により考案され、乳幼児にとって理想的である母乳授乳と同じ体勢になるようコントロールされる「ドクターベッタ哺乳びん」とズーム・ティーの河合社長が出合ったのが平成6年。自身の子供も生後2週間で中耳炎を患い、長い間苦労した経験もあり、即座にこの商品を取り扱うことを決断。平成7年にライセンス契約を締結し、輸入販売を開始した。
しかし、当時輸入していた商品はポリカーボネイト製で、販売後間も無く、世界的に環境ホルモン問題が取り沙汰されたため、安全なガラス製のものを新たに自ら製造することを決意。ただ、びんの口部分が傾斜する複雑な形状に加え、哺乳びんならではの安全性(耐熱性・耐久性)を確保しなければならないというハードルのため、製造委託先探しに難航。ようやく業界の評判をもとに辿り着いたのが奥谷硝子製作所である。
ガラスの性質を知り尽くした職人でさえ、なかなか納得のいく製品ができず、最初は100本作っても95本は破棄してしまうほどだったようだ。軌道にのっている現在でも、「最適なガラスの膨張係数を保つ」「ガラスの厚さを均一に」「素材の温度管理」に気を配り、製品検査を徹底している。職人による、直接には見えない相手への思いやりと妥協を許さない丁寧な仕事が、本製品の安定した人気を支えている。
また、ズーム・ティーによるプロモーションも工夫が見られる。小売店にただ陳列しただけでは、本製品の持つ特性は伝わりにくい。そこで、育児雑誌向けにオリジナルデザイン商品を提供し、その見返りに得る大きい誌面を活用する他、小売店にマネキン(説明員)を派遣する等、詳細な製品説明をすることに力を注いでいる。すでに大手企業が圧倒的シェアを占める中、製品の持つストーリーを伝えることで価格競争に巻き込まれることなく、地道に着実に売上を伸ばしている。
規模は小さくとも、優れた企画・プロモーションを手がける企業と高い技術力を有する企業のコラボレーションにより、大手企業にも対抗し得る製品を生み出したこのモデルは、多岐にわたる業種が集積する東京ならではの優れた事例と言えよう。