※企業概要は受賞当時(2009年)の内容です。
●自社の強みである分光測定技術を応用し、太陽電池の性能を測定・評価する装置への進出を決断、測定時間が従来比10分の1という高性能な装置の開発に成功し、成長期待の高まる市場への参入を果たしたこと。
●光を照射して食肉の脂質を測定することで食肉の旨みを数値化することに成功、品質が安定した食肉の量産を可能にしたこと。併せて、農商工連携の先駆けとなったこと。
同社のコア技術のキーワードは「光」である。電子機器メーカーに勤務していた創業者である現社長が昭和51年に同社を設立し、光を応用した技術で液体の中から目的とする物質を抽出するのに用いる、液体クロマトグラフ関連装置をOEM供給していた。創業5年目頃、月間100台程度あったOEM供給品が納入先から突然打ち切り通告を受け、仕事が激減するという危機を味わった。その時、中小企業であっても自社ブランドを持たないと将来はないと痛感したという。以後、独自の製品を自社ブランドで売る同社の挑戦がスタートする。
近年、産業構造の変化や景気の影響もあって、液体クロマトグラフの市場も成熟化しつつあり、同社も新たな分野への進出を模索していたが、最近、2つの際立った成果が現われてきている。
ひとつは、太陽電池の性能評価装置である。これは、太陽電池の発電物質に波長ごとに分光した光を当て、どの波長の光でどの程度の発電量を得たかを測定するものである。波長ごとの発電効率を正確に把握することができるので、多様化する太陽電池の材料研究に幅広い利用が可能となる。低炭素社会実現の切り札と言われる太陽電池市場の将来性とともに、同社の将来性も高まりつつあると言えよう。
もうひとつは、食肉の脂質測定装置である。従来、食肉の評価は検査員の「目利き力」という主観に頼った方法しかなかったが、同社の開発した装置は、肉片の脂肪の部分に光を当てるだけで、オレイン酸という脂肪酸を測定することができ、肉の旨味を客観的に数値化することに成功したのである。つまり、どのような環境、飼料で家畜を飼育すると、旨い食肉が得られるのかが、数値による客観評価でわかるようになるため、安定した品質の食肉の量産を可能にする、ということである。
特筆すべきは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の受託研究として産業技術総合研究所(産総研)との共同開発で太陽電池の性能評価装置を完成させ、また、食肉の脂質測定装置は農商工連携の認定を受けて進めたこと。資金・人材等の経営資源の限られた開発型の中小企業が、外部資源を最大限有効活用し、優れた結果に結び付けた好例と言えよう。