東商からの重要なお知らせ

持続化補助金について /
事業再構築補助金について

勇気ある経営大賞

受賞企業紹介

※企業概要は受賞当時(2008年)の内容です。

第6回 特別賞

有限会社原田左官工業所

新着情報
2022.10.14
TOKYO MXTV「ぐるり江戸散歩」に出演します!
代表者名
代表取締役 原田 宗亮 (はらだ むねあき)
所在地
東京都文京区
創業
1949年(昭和24年)
従業員数
32名
資本金
4,800万円
事業の
概要
商業施設の内装工事を得意領域とする左官工事のほか、湿式工事(タイル貼り・組積・防水・吹付)全般を手がける。現在の売上構成は、店舗関連が85%、残り15%が住宅関連。オリジナル漆喰(しっくい)「フルーフレ」の開発を機に、住宅分野への本格参入を図る。
ホーム
ページ
https://www.haradasakan.co.jp/
受賞理由

●独自の材料を用いて、機能性も高く、デザイン性が優れているオリジナル商品を多数生み出している。塗り板サンプルや紙カタログを常備、本社をショウルーム化し、本業界では稀な提案型の営業体制を確立したこと。

●ベテラン職人からの技能伝承に腐心するとともに、職能レベルの体系化などによる女性職人や若者の育成、出退勤・業務管理等へのIT活用などの新たな経営手法を導入、定着させることで、社員の能力を最大限に引き出し、満足度を高めていること。

企業紹介

昭和24年創業の老舗左官業。下請け体質が根深く、職人気質の一人親方が幅を利かせるこの業界にあって、34 歳の3 代目社長は、ベテランから若手への技能の伝承に腐心しつつ、現代に通用する経営改革に取り組む。
わが国の高温多湿の気候には漆喰が最適であるとの信念から、伝統的な住まい方の提案を行うべく、社長をはじめ若手職人たちが、本社の研究スペースに集まり、オリジナル漆喰の研究を続けた。その結果、シックハウス対策に効果が認められた「フルーフレ」(商品名)が完成、度重なる試験データ等の提供などにより、大手ハウスメーカーの採用にこぎつけ、現在では月平均2 棟の受注を得ることとなった。
また、先代社長(現会長、実父)時代に育成を始めた女性職人(左官工、タイル工)は、人事労務制度や組織風土の改善等により、現在では6 名と職人全体の約2 割を占めるまでに。同時に、若者の育成にも熱心で、技能大学生・美術大学生を対象とするインターンシップの活用やホームページの充実が採用に寄与しているほか、職能レベルの体系化により暗黙知に頼りがちな従来の徒弟関係からの脱皮を目指している。
女性職人の一人が今年11 月に第2 子を出産予定。前回(第1子出産時)同様、育児休業明けの現場復帰を、社員はもちろん取引先も心待ちにしている。

  • 活躍する女性職人

  • オリジナル商品を陳列する本社ショウルーム

コロナで現場仕事がストップ。
逆境にあっても、左官の技術を軸に乗り越える。

現場仕事が職人の基本。現場がストップした時にできることは何か

当社は私で3代目。
父の代から住宅需要から店舗向けへとシフトしました。
店舗ではコンセプトを踏まえた独自性やデザイン性を求められるため、しっかりした技術だけでなくクリエイティブな感性が必要な左官工事やタイル工事を得意としています。

4月の緊急事態宣言の発令以降、大きな施設の工事等がストップし、我々の仕事も止まってしまいました。事務や営業など内勤の部署は段階的に在宅勤務、web会議等を取り入れたものの、実際に現場に行って作業を行わなければならない職人には難しいため、有給休暇の取得や雇用調整助成金の活用を想定した雇用調整を行い、交代勤務などで対応していました。
すると、30代の女性で小学生の子供を育てる職人から、子供が休校でずっと家にいて心配なので、家にいてもできる仕事をやりたいと相談を受けました。
職人は、現場の仕事がやりがいであり、ただじっと休んでいて自分にできることがないと気持ちの張りが保てません。かつて50代で病気になって現場を去った私の祖父がみるみる老いていったことを思い出し、職人に活力を与え仕事への意欲を持ち続けられる方法を考えました。

現場が止まったため、当社の売上にも大きく響き、6月には前年比6割減にまで落ち込みました。

職人が在宅でできる仕事を考え、試験的に実施

在宅勤務を希望した左官職人には、左官の見本作りを任せることにしました。
見本は様々な材料や塗り方がわかるよう施した正方形のプレートで、当社ショールームで展示しています。実際の色合い、手触り、照明の当たり方などを体感してもらう等、お客様と商談する際に活用しています。職人に材料や道具を持ち帰ってもらい、自宅で塗り、仕上がったものを会社に届けてもらう方法です。

しかし、職人全員にそれを実施するのは難しいので、コロナで現場仕事が止まり時間ができたことを逆に生かし、新たな取り組みを進めました。
まず、以前から倉庫として使用していた建物をタイル用のショールームに改装。2014年に本社内に開設した左官用ショールームは左官の技術や魅力を伝えるだけでなく左官を志望する若い人の採用に繋がりました。その成果をタイルにも広げたいと考え、タイル貼りのショールームを開くことにしたのです。
建物内部の解体、設計、デザイン、タイル貼りまで自社の職人たちで行い、2020年11月に仮オープン、2021年から積極的に活用していきます。

また、左官の技術を活かしたオリジナル新製品の開発も進めました。 もともと我々の仕事は天候に左右されるなど忙閑の波が激しく、経営者として働き方の平準化を模索して、職人の正社員化などを実現してきました。職人の現場仕事がない時でもできることの一環として自社製品づくりを企画し、2014年から左官の技術の一つである「版築」という技術を用いて、卓上でご飯を炊いて熱々が食べられるかまどを製造・販売していたのですが、今回のコロナ禍で新たに、音響が素晴らしい漆喰のスピーカーも開発。
さらに、左官素材開発に強みを持つ株式会社エコリバイバルと協力して、天然土を1mm程度薄く塗ることで温もりのある風合いを醸し出す「風土」という、家具や床、壁に施工できる新工法も発案。
いずれも当社ホームページから注文できるようにしていきます。

東京のいろいろな顔&左官の魅力を世界中に発信したい

今回のコロナ騒動で感じたことですが、「東京の感染者は……」と報道されると東京はすべて繁華街か高層ビルが林立するイメージを想像されるような気がしました。
実際の東京には普通の民家も多く情緒ある下町の風景も残っています。その中に我々のような左官がいたり、伝統工芸に勤しむ方がいたりするわけです。ですから、来年の夏を機に、東京に多彩な顔があることを知ってもらえたらと期待しています。

当社が行っている左官やタイル貼りなど建築現場の仕事は非常にアナログで泥臭いところが多いものですが、日々進化・進歩しており、日本だけでなく海外からも最先端の素材が入ってくるようなイノベーションがあります。当社の職人には若手も女性も増えてきて、美大を卒業した人材もいます。
日本の左官は土のスペシャリストとして世界一と言われています。来年夏、東京に集まってくる方々に日本の左官の良さをぜひ知っていただきたいと思います。そして、当社は今後さらに左官やタイル貼りの可能性を広げていくとともに、人材育成にも一層力を入れていきたいと考えています。

戻る

pageTOP