経営資源をつなぐ「事業承継・引継ぎ補助金」活用のススメ


事業承継・M&A

事業承継の難しさの第一は、後継者不在の問題が挙げられます。
「そもそも親族や従業員で継いでくれそうな人がいない・・」
「後継者候補と考えている人はいるけど、先行き不透明な業界で事業継続できるか不安・・」
といったお悩みを抱えている中小企業に対して、補助金という形で事業承継を後押しする制度が「事業承継・引継ぎ補助金」です。中小企業において長年培ってきた貴重な経営資源を途絶えさせることなく、次世代に引き継いでいくことを目的としています。既に事業承継を考えている会社も、これから考える会社も是非検討していただきたい補助金です。



 <目次>
1.「事業承継・引継ぎ補助金」とは?
2.おススメする7つの理由
3.ここに注意!
4.申請手続きの流れ
5.おわりに

1.「事業承継・引継ぎ補助金」とは?

後継者候補がいる会社に対しては承継後の安定的な事業継続へ、後継者候補がいない会社に対してはⅯ&Aによる株式譲渡や事業譲渡へ導くなど、費用面から中小企業の事業承継を後押しする制度です。経営者の交代又は事業再編等を契機とした経営革新等に係る取組を補助する「経営革新型」と、事業再編等に係る専門家の活用を補助する「専門家活用型」の2種があり、それぞれ以下の類型、補助金額、対象経費となっています。




2.おススメする7つの理由

(1) 事業引き継ぎの時期 

2017年4月1日~2021年12月31日までの期間内の設立等(創業支援型)、代表者交代(経営者交代型)を求めており、既に引き継ぎを済ませている会社も対象となります。

(2) 「創業支援型」の要件

「経営革新型」のうち「創業支援型」は、新たに創業して他の会社の経営資源を引き継ぐなどの要件を満たすことが必要ですが、他の類型(「経営者交代型」「Ⅿ&A型」)のようなやや厳しい新事業展開等や生産性向上は求められないなど、緩やかな要件となっています。

(3) 補助対象経費の範囲

「経営革新型」では人件費、店舗等賃借料、設備費、広報費、廃業費等、補助事業に要する経費を幅広く対象としています。「専門家活用型」も Ⅿ&Aに係る対象経費を具体的に定めているなど、事業承継実務に沿った補助対象経費となっています。

(4) 事業計画書の作成負担

「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」といった他の補助金を申請する際には、計画書の見せ方を意識した考え方や知識、PCスキルが必要です。しかし「事業承継・引継ぎ補助金」の申請は、オンライン申請フォームの各項目に入力していく形式を取っているため、作業負担が少なくて済みます。

(5) 事前着手制度

補助金の多くは交付決定後に契約・発注・支払った経費が補助対象となります。しかし「事業承継・引継ぎ補助金」では、事前の届出・承認を受けることで、採択前の令和3年7月2日以後の分を対象経費とすることができます。なお、事前着手の承認がなされた場合であっても、補助金の採択がなされない可能性がありますので、ご留意ください。

(6) 加点事由

「経営力向上計画」、「経営革新計画」の承認を受けた企業、「中小企業会計要領・中小企業会計指針」を遵守している企業、その他の条件を満たしている場合には、審査において加点されます。

(7) 採択率

事業承継補助金は平成29年から制度化され、その後、形を変えながら現在まで続いています。平成30年以降、各年度において平均70%以上の採択率となっていることから、事業承継要件を満たしていれば”狙い目”の補助金であると言えるでしょう。

3.ここに注意!

(1)補助金交付までのスケジュール

受付期間が約一か月と短いため、事前の準備が大切です。また交付決定後、補助金が実際に交付されるまでの書類作成・提出、検査対応など、やるべきことが多々あります。補助金は後払い精算となるため資金調達も含めて計画的な取組が必要です。

(2)承継者の代表者資格要件

「経営革新型」のうち「経営者交代型」と「Ⅿ&A型」の場合、承継者である代表者は一定の経営経験を有しているなどの資格要件を満たしていることが必要です。

(3)審査着眼点

「経営革新型」では①経営革新等に係る取組の独創性、②経営革新等に係る取組の実現可能性、➂経営革新等に係る取組の収益性、④経営革新等に係る取組の継続性が、「専門家活用型」では①経営資源引継ぎの計画の適切性、②財務内容の健全性、➂買収・譲渡等の目的・必要性、④買収・譲渡等による効果・地域経済への影響などの観点から審査されます。これらの審査着眼点を意識した計画書を作成しましょう。

4.申請手続きの流れ

まずは「事業承継・引継ぎ補助金Webサイト 」から公募要領をダウンロード、査読いただき、以下の順で手続きを進めてください。

(1)形式要件の確認

公募要領記載の補助対象者・補助対象事業・補助対象経費の要件確認

(2)「gBizIDプライム」アカウントの取得

オンライン申請に必要なIDを事前に取得(https://gbiz-id.go.jp/top/index.html) 

(3)類型番号の確認

公募要領記載の「事業承継形態に係る区分整理」にて、類型番号と必要書類を確認

(4)計画書の作成

申請フォームへ入力用の補助事業計画の検討・作成

<参考>「経営革新型」の場合の記載内容

  ● 新規事業を行う動機
  ● 具体的な取り組み内容
  ● 既存事業と新規事業の相互作用性
  ● 事業継続のための工夫
  ● 独創的な取組
  ● 実施体制
  ● 収益性
  ● 市場規模
  ● マーケティング手法
  ● 生産性向上策


(申請フォーム画面の一部)

(5)申請フォームの入力

オンライン申請フォーム(jGrants)に必要事項を入力

(6)必要書類の準備

「事業承継・引継ぎ補助金Webサイト」掲載の「必要書類チェックリスト 」を参考に提出書類を準備
 (注)「経営革新型」の場合は、認定経営革新等支援機関に確認書の交付を依頼・取得


(7)申請

オンライン申請フォーム上で必要書類を添付して提出

5.おわりに

2017年4月以降に事業承継を実施した(実施する予定の)全ての中小企業にとって、この補助金の活用を検討する価値は十分あると思います。但し、補助金ありきで無理やり進めてしまうと却って事業承継が上手くいかないこともありますので、ご留意ください。

尚、以上の解説は令和2年第3次補正予算に基づく事業承継・引継ぎ補助金の公募要領(2次公募)に沿ったものとなります。当補助金の申請受付期間は令和3年8月13日までですが、令和3年度に本予算化されたことで今後も継続的に公募されるものと思われますので、今回間に合わない方も是非、参考になさってください。



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