政策提言・要望

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東京における物流環境の改善に関する提言

1999年5月13日
東京商工会議所

 首都圏には物流需要が集中し、増加する貨物流動量に対応した輸送効率向上を図ることが、かねてより大きな課題となっている。全国から東京に輸送されてくる貨物量は年間3億3千万トンでこのうちトラック輸送が90%を占めており、都内の輸送も1億7千万トンに上り、99%がトラック輸送である。
 東京周辺部には物流施設が展開しているが、交通アクセスの改善、情報化への高度対応など課題も多い。また、輸出入の増加に伴う国際物流への対応として、東京港を起点とする物流拠点整備の重要性も高まっている。 都内の道路は慢性的交通渋滞のため配送効率の低下を招くとともに、荷受けスペース、荷捌き所の不足で路上駐車を余儀なくされており、安全面からの問題点も多い。
 各企業が物流コストの一層の削減をめざす中で、多頻度小口配送など物流ニーズは高度化のスピードを速め、加えて環境問題への対応が求められるなど、従来型の物流に携わる中小運輸業者、卸売業者の経営環境は一層厳しいものになっている。
 一方、都市内物流を改善するためには、以上の課題解決に加え、消費者においても利便性の追求のみではなく、社会的コスト削減、都市環境の改善に対する認識を深めることが必要である。
 東京商工会議所では、こうした東京における物流を取り巻く実態を背景に、物流システムの効率化推進、物流基盤施設の整備のあり方、都市内交通の円滑化などについて、本商工会議所も協力して本年1月に実施された関東通産局中小企業物流実態調査(以下、調査という)の結果を踏まえて下記のとおり提言する。

提言


1.物流システムの効率化推進

(1)輸配送システムの効率化
 貨物トラックのトリップ数の削減、積載効率向上のためには共同化の推進が不可欠である。現在、大手企業を中心に進められている物流の共同化事業に加え、中小企業においても最適な共同化パートナーとのマッチングの難しさ、企業間の意思統一の難しさ、取扱い物流量の変動など阻害要因の克服を図りつつ、共同化事業、特に共同配送を積極的に推進していくことが必要である。前述の調査では、共同化事業への取り組みは、共同配送を中心に約10%の企業で実施中という結果がでており、そのうちの半数がコスト削減効果が上がったと回答している。また、今後の共同化のパートナーとして協同組合や組合以外の中小企業の他、中堅・大手企業との共同化組織を視野に入れた回答が33%に上っている。
 今後の共同化事業においては、業界内でチャネル上の力を持ち、コーディネーター的な機能を果たす企業の存在が不可欠であり、また、事業体の経営効率、採算性を十分精査することは勿論、異業種企業等との戦略的連携を図ることも重要である。
 国においては、経営努力を行う共同化組織への支援拡充にあたり、従来の協同組合方式における員外利用を幅広く認め、活性化を図るとともに、株式会社、大手と中小企業の共同化組織などについても支援を行うことが必要である。また、事業を軌道に乗せていくためには単年度支援から継続支援制度の創設も含めた柔軟な対応が併せて必要である。

(2)「エリア物流」の効率化
 東京の都市内配送については、輸配送システムの効率化をさらに進めるために、配送を行う大手、中小企業がそれぞれ守備範囲を持ちつつ連携を進め、組合、共同事業体等が一定のエリア内の混載可能な荷物の配送を全て引き受ける体制を整えた、「エリア物流」効率化の推進が図られるべきである。
 都内には配送先としての中小企業等が多く集積し、そこへ大手、中小運輸業、卸売業が渾然一体となって配送を行っている。また、同一区域内に隣接する大手、中堅コンビニエンスチェーン店においても、各チェーン独自のセンター戦略のもとにそれぞれ配送が行われている。都市内配送の改善には、特に物流に係わる中小企業の配送効率の向上および大手、中堅企業のセンター配送の相互連携を強めることが必要である。特に事業所の密集する地域において、配送の在りかたを「エリア物流」の発想から見直すことが効率化への大きな解決策となるであろう。
 一部にこのような発想に基づいた区域内の業者分担システムを協同組合方式で取り組んでいる例もでてきているが、今後はこうした動きに対して、集配拠点の整備に対する低利融資、協同組合事業における員外利用の拡大など、行政の支援がこれまで以上に望まれる。
 また、再開発事業等により新たな街づくりが行われる際には、計画段階からこうした発想を盛り込み、集配拠点の整備、荷捌きに配慮した建物の建設、共用スペース設置などの措置を行うべきである。

(3)EDI基準の標準化推進
 見積もりから契約、受発注、物流、決済まで商取引全般にわたって電子データ交換を行うEDIの導入が進んでいるが、EDI基準の標準化は国、業界の連携の中で国際標準も視野に入れながら進められており、業界を超えた標準化の推進が今後一層望まれている。さらに、最近ではEDI推進のためのネットワーク機能の技術も大きく進んでおり、中小企業まで含めた低コスト管理が可能な情報通信インフラの整備が国レベルで求められている。
 物流に関わる取引全般にわたる情報化の推進は、企業規模を問わず必要不可欠な要素であるが、中小企業においてはEDI推進の前提としての情報化が極めて遅れており、更なる情報化支援施策の拡充が切に望まれるところである。

(4)パレット等規格の統一化
 パレットの規格統一化については国際標準も見据え、一貫パレチゼーションが、従来から推進されているが、依然、各業界で様々なサイズが使われており、標準パレットの普及率は未だ十分ではない。引き続き国がリーダーシップをとって規格統一化を一層推進していくことが必要である。
 また、通箱、ハンガーなど効率化上、共通化が必要な物流ツールについては、民間主導で共同物流を想定した基準をつくることが望まれる。

2.物流基盤施設の整備のあり方

 近年の東京における物流機能の重要性の高まりについては、これまで述べてきたところであるが、物流機能の効率化・高度化には、拠点整備の推進が不可欠であり、今後の拠点は交通インフラとの近接性と集約立地が特に望まれる。
 また、その整備にあたっては、都市計画等との整合性を図るとともに、民間による技術・ノウハウ等を一層活用するという観点から、PFI(Private Finance Initiative)等の新たな整備手法の積極的な導入にも取り組むべきである。

(1)東京における物流拠点の再編
 今後の物流拠点の整備は、道路、空港、港湾等の交通インフラとのアクセスおよびリンケ-ジの強化を優先課題とし、これにより拠点毎の役割・機能・性格づけを明確化することで混雑等道路交通問題の解消、企業の物流業務の効率化、地域への経済波及効果の増大等に資するべきである。
 東京における物流拠点は、予てから指摘されているとおり、西南部に計画未着手の空白地域が存在するほか、交通インフラ、とりわけ空港隣接地において拠点が不足するなど地理的なバランスに欠けており、早急な対応が望まれる。
 また、老朽化により新たな企業ニ-ズへの対応が困難な低利用施設が生じていることから、必要に応じ公的支援策も講じつつ情報化等施設の更新を図るべきであり、加えて公益的施設や利便施設等との一体的な整備も視野に入れ、地域の利便性と地域住民の理解向上に資することが求められる。
 さらに、都市計画、空港・港湾計画等との整合性確保に努めるとともに、市街化調整区域における開発許可については、民間の自律的な施設整備を妨げることのないよう柔軟に対応すべきと考える。

(2)物流基盤施設における新たな整備手法の導入
 行政改革および地方分権化の流れに加え、国および地方の厳しい財政事情から、社会資本整備および公共サ-ビスの提供に関する旧来の発想・枠組みからの脱却と官民の新たなパ-トナ-シップの構築が急務となっている。
 こうした中、国および地方自治体のほか民間においてもPFI等の新たな整備手法導入に向けた検討がなされているが、この際、事業コストの削減効果および公共サ-ビス向上の期待はもとより民間による技術・ノウハウ等のさらなる活用の視点に立ち、早期に導入されることが望まれる。
 今後の物流基盤施設の整備においても例外ではなく、既述のとおり交通インフラとの相互連携や一体的整備も視野に入れ、積極的にこうした手法が活用されることが期待される。
 したがって、導入に際しては、過去の民活事業および第3セクタ-と一線を画し、官民の役割・責任・リスク分担の明確化が前提となることは言うまでもなく、そのうえで適切な法・制度の整備、規制緩和等の環境整備を図るべきである。

3.都市内交通の円滑化

 効率化の追求という企業ニ-ズと混雑等道路交通問題の解決という社会的ニ-ズを背景に都市内交通の円滑化は喫緊の課題となっている。
 課題解決には、交通容量の拡大を図る交通インフラの整備推進と交通利用面の工夫による貨物流動の適正な調整が不可欠であるほか、ITS(高度道路交通システム)の早期の整備も待たれる。

(1)メリハリの効いたインフラ整備
 わが国は、成熟社会を迎え、インフラ整備においても、従来の拡大策に傾斜した視点での整備は限界に達している。
 今後の交通インフラ整備においては、まず第一に、整備財源配分の重点を投下資本効果の高い都市部に移すことにより、ひいてはわが国全体に効果を波及させていく仕組みづくりが必要である。
 第二に、事業計画策定の際は、費用対効果分析を厳格に行ない、事業のプライオリティを明確にしていくことが求められる。
 こうした観点から、東京におけるとりわけ道路整備については、首都圏中央連絡自動車道および東京外郭環状道路の環状部整備を急ぐことにより、既設施設との有機的連携を促し、放射方向の通過交通の減少を優先させるべきである。

(2)高度道路交通システムの推進
 ITSの各種アプリケ-ションシステムと道路インフラとの統合・基準化を目指すスマ-トウェイ構想などハ-ドとソフトの融合による次代の道路整備が行政・関連業の各方面において模索されはじめている。
 こうした中、VICS(道路交通情報通信システム)については、情報提供ツ-ルが所管官庁により異なっているなど懸念される指摘もあり、早急な改善が求められる。
 実用・商用化の途上にある現段階において、早期に標準化への取り組みを進めるとともに、他のアプリケ-ション、例えばETC(ノンストップ自動料金収受システム)やAHS(走行支援道路システム)との統合化を急ぎ、道路交通の安全性、輸送効率の向上による交通円滑化に資するべきである。

(3)交通需要マネジメント等ソフト対策の充実
 東京都においては、資源循環型社会づくりの観点から総合的なTDM(交通需要マネジメント)の推進を重点課題としており、平成10年度から対象地区を設け目的に応じた試行が実施されている。
 物流対策としては、都心部における路上荷捌き・荷降ろし車両に対する路外ポケットロ-ドへの誘導等による交通円滑化を目的に試行が行われており、一定の効果が認められているところである。
 このうえは、平成11年度に策定が予定されている「TDM(交通需要マネジメント)東京行動プラン」に基づき、着実に実施段階に進めるよう地元行政との連携強化に努めるとともに、市民・企業ほか関係者間の意見調整を図りつつ態勢を整えていくべきである。
 ただし、推進にあたっては、買物・レジャ-、マイカ-通勤、業務等、物流以外の種々の目的車両全体を視野に入れるとともに、結節点の整備等も含め鉄道、バス等他の交通機関との有機的な連携等、総合的な視点に立って行うことが望まれる。

4.中小企業の経営基盤強化

 平成9年4月に閣議決定された総合物流施策大綱では、物流に係る課題を体系的にとらえ、平成13年を目途に国際的に遜色のない物流サービス、コスト水準の実現をめざして関係省庁連携による施策展開の重要性が強調されており、産業界としても物流効率化に向けた積極的な取り組みが求められている。
 しかしながら、物流効率化の総合的な推進のための省庁間の連携整備および地方公共団体、民間事業者も含めた地域における連携整備は未だ十分とはいえないのが実情である。また、物流に係る課題克服のためには大綱に取り上げられた社会資本整備の推進、規制緩和の推進、物流システム高度化の推進に加え、厳しい経営環境にある中小企業の物流効率化が是非とも必要である。このような中小企業の経営努力に対し、金融、税制上の支援拡充など、関係省庁及び東京都の包括的な支援策が早急に図られるべきであり、支援策に対する中小企業の認知度を向上させるため本商工会議所としてもこれまで以上に行政と連携した施策普及PR活動に力を入れていくことが求められる。
 以上、物流環境改善のために、関係省庁においては民間事業者の実情を踏まえ、意見・要望を十分取り入れることによって、連携の一層の強化、一体的な施策実施体制を実現していくことが強く望まれる。

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所