政策提言・要望

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東京都の中堅・中小企業施策に関する要望 ~首都東京の再生を確かなものとするために~

2000年5月11日
東京商工会議所

 東京は、激しさを増すグローバルな都市間競争に勝ち抜き、同時に首都としての役割を果たし、わが国産業社会の牽引役となるべきである。
 そのためには、地域経済の担い手である中堅・中小企業の役割が不可欠であり、その企業活動を活発に展開し得る諸環境を整備することが、喫緊の課題と言えよう。
 こうした中、東京都におかれては、昨年4月の石原知事の誕生以来、財政再建推進プラン、危機突破・戦略プランを相次いで策定・推進するなど、首都東京の再生に力を注いでいる。
 特に産業分野においては、「産業振興ビジョン」の策定を目指して、広く都民から提言を募り、その政策形成過程を公開するなど新たな試みを行い、都民の知恵を結集して東京の産業の活性化を図ろうと努力されている。
 東京商工会議所としても、本年7月に予定される同ビジョンの最終報告に大きな期待を寄せているところである。
 当所としては、今般の要望主旨である東京の産業振興のための主要な視点として、①モノづくり、ヒトづくり、まちづくりの推進、②意欲ある企業・個人の自立とネットワークづくり、そのうえで、③各主体の自立を促すための東京都の中小企業支援体制の再構築と東京商工会議所の役割―を認識すべきと考える。
 ついては、2000年という次世紀への回廊を前に、東京の中堅・中小企業が力強くその扉を開き、首都東京の再生が確かなものとなるよう、標記について下記のとおり要望するので、当所の趣旨をご賢察のうえ、特段の配慮をされたい。

要望



1. 既存企業の経営革新への支援

 東京の産業・経済は、全国平均を下回る実質経済成長率に象徴されるように本来の活力を衰弱させており、10年来続く事業所総数、製造品出荷額等および付加価値額の減少傾向に歯止めをかけるには、企業が日々努めている経営改善努力等への東京都の支援策の再構築が必要である。
 今後の中小企業への支援策は、企業や経営者の自助努力を前提に、業種・業態、地域特性に配慮した個別企業に対する支援に重点を移していくことが望ましい。
 また、個々の企業の活性化を確かなものとするために、横断的・水平的な人的交流の促進や大田区で見られるような受発注ネットワークシステム構築への支援、普及にも力を注がれたい。
 さらに、中小企業にとって、最も切実な経営課題である資金調達については、一層の制度融資の充実が必要であり、加えて東京信用保証協会の保証力の増強と経営基盤強化が不可欠である。

(1)製造業の技術開発に関する支援
 東京の製造業における設備投資額は93年以降一貫して減少を続けているうえ、売上高研究開発費比率における大企業と中小企業との格差は、80年代以降拡大の一途をたどっている。
 この傾向は、経済停滞下の中小企業における技術開発の難しさの一端を物語るものであるが、それゆえに、中小企業に対する資金・人材など支援策の充実は急務と言える。
 東京都におかれては、今年度、審査過程で技術力が評価された場合に無担保枠が積み増される「技術・事業革新等支援資金融資」を新設されたが、この制度を契機に中小企業の技術開発支援制度における物的担保・保証人偏重からの脱皮が大いに期待されるところである。
 この際、同制度を実効性あるものとするため、迅速な審査体制や企業の成長性、技術に関する市場ニーズ等に配慮した審査を実現されたい。
 また、産学公連携による技術開発・移転の推進については、実学と研究分野を結びつける上で、ボトルネックとなっていた技術面でのマッチング等のコーディネート機能を、東京都立産業技術研究所に整備することとしているが、これは、時宜を得たものと考える。
 東京商工会議所では、今年度、中堅・中小企業と大学・公設試験研究機関等を橋渡しする「産学官(公)ネットワーク」を創設し、企業の技術・製品開発、販路開拓等の多様化するニーズに対応していくこととしており、本事業の運営にあたり、東京都との一層の連携強化に関し特段の配慮をされたい。

(2)商店街の活性化に関する支援
 東京の商業は、85年以降商店数が、90年以降年間販売額が減少傾向にあり、後継者不足など個別店舗の経営難もあり、3分の2の商店街が空き店舗を抱えるなど、深刻な状況にある。
 東京商工会議所では、東京都と連携し、今年度、商店街等活性化先進事業として、早稲田および神楽坂地区において、空き缶・ペットボトル回収機の設置、イベント開催、空き店舗対策等を行うなど活性化のためのモデル事業を推進する予定である。
 こうした先進的事例を他の商店街に周知することは、当所の果たすべき役割と認識しており、経営指導員等を通じ、広くPRしていく所存である。
 東京都におかれては、ホームページを利用した空き店舗情報の提供や商店街自らが行う空き店舗を活用したモデル店舗事業等を推進されているが、今後は、これら施策の充実とともに、空き店舗への出店者に対する助成措置等の支援策も合わせて講じられたい。
 また、新規の事業企画を提案するなど意欲的な商店街に対しては、商店街育成事業や中小企業振興基金事業など既存の支援策を拡充するとともに、ハード・ソフト両面にわたるプランニング等に関する相談体制の整備、研修機会の提供等も合わせて検討されたい。
 さらに、東京都として、今年度「21世紀商店街振興プラン」の策定を予定されているが、これが地域特性を生かした自立的な商店街づくりに資することを期待し、当所としても、地域商店街のイベント企画を支援するための夜間セミナーや専門家の派遣等、積極的に協力する所存である。

(3)資金調達の多様化に関する支援
 中小企業向けの債券市場構想の第一歩となるCLO(ローン担保証券)は、約1700社の参加、発行規模約700億円と予想を上回る規模でスタートした。
 これは、中小企業の直接金融への関心の高さを示すものであり、高度な技術力や優れたアイディアを有しながら物的担保不足により資金調達に困難をきたしている企業にとって朗報と言える。
 今後は、現行2%である自己資本比率の見直しなど企業の参画要件の緩和や現行3.14%の融資金利の引き下げ等によって、さらに多くの企業の参加を促し市場規模を拡大するとともに、CBO(社債担保証券)についても、必要な体制整備を検討されたい。
 一方で、企業会計原則の国際基準への移行や企業の情報開示に関する責務がますます問われており、今後、投資家向けの経営情報の提供やディスクロージャーの推進が、直接金融市場の成否を分けることとなろう。
 この際、株式市場における上場企業に課せられる基準とは一線を画す、将来性や技術力などを加味した、中堅・中小企業に適した情報開示基準を設定していくべきと考える。
 東京都におかれては、東京商工会議所など民間団体等と協議のうえ、急ぎ必要な開示基準づくりを行い、企業に対しては、開示に関するノウハウの指導など適切な支援を図られたい。

2.創業、第二創業等への支援

 市場を活性化し、地域産業の集積を維持し、雇用機会を確保する観点から、創業・ベンチャー企業に対する支援の重要性は、衆目の一致するところである。
 東京商工会議所では、平成8年より開始した開業相談、創業支援セミナー等を通じ約3千名の創業予定者と接触を持ったところ、このうち200名を超える創業者を輩出することとなった。
 加えて、今年度から、東京都と連携のうえ、創業予定者、創業者、創業支援者による新たなネットワーク(e-CCI構想)を構築し、産業の再生、活性化に尽力する所存である。

(1)継続的な支援体制の確立
 当所では、平成8年より「東商ベンチャーネット」事業を開始し、意欲あるベンチャー企業のビジネスプランを大手・中堅企業に紹介し、企業間の提携・協力を進めるなど、既述の開業相談やセミナーの段階後のメニューを用意し、継続的な支援体制の整備に腐心しているところである。
 東京都におかれては、(財)東京都中小企業振興公社を中核的機関に「総合支援機構」を創設し、企業・創業者のあらゆる段階の研究開発、資金、人材、コーディネート支援を行うとしている。
 当所が、数年来要望してきた、創業者等に対する継続的な支援を可能とする「ベンチャー財団構想」に近づくものであり、早期の実現を望むものである。
 創業・ベンチャー企業支援については、起業家(芸術家)を発掘し、アイディアや技術(作品)の市場価値を見極め、アドバイスをし、エンジェル(パトロン・コレクター)との出会いを演出するなど、継続的な支援を可能とする、欧州などで見られるオークション・ハウスのオークショニアのような仲介役が必要と考える。
 こうした言わば「ベンチャー・オークショニア」とも呼ぶべき人材については、新たに育成していくことも必要であるが、ノウハウや豊富な実務経験を有する企業の退職者等の活用も検討されたい。

(2)起業やモノづくりに関する教育の充実
 新規企業の創出にあたっては、起業意欲を持った人材の育成・輩出が欠かせないが、成人向け起業教育だけでなく、幼少期から徐々に主体的な職業観や企業家精神の醸成を図る教育プランの提供と創造性を育むような就業体験の場の確保が必要である。
 しかしながら、中小企業が児童・生徒に就業体験の機会を提供するにあたり、指導者配置や危険防止・衛生管理上の負担が大きいと受け入れ企業が少なくなることが予想されることから、企業の負担軽減のため、助成措置ほか十分な支援を講じられたい。
 また、「モノづくり基盤」の存立が危ぶまれて久しいが、若年者にとって、製造業等の現場での体験とともに、経営者による実体験を交えた講話などは教育上きわめて重要と考える。
 今後の公立学校のカリキュラム編成にあたっては、東京商工会議所等経済団体と連携し、経済や経営の実態を踏まえたプログラムを取り入れていくほか、地域の企業経営者の参画機会を用意されるよう仕組みづくりを検討されたい。

3.総合的なまちづくりへの支援

 いわゆるまちづくり三法の成立に前後し、にわかに中心市街地の活性化問題がクローズアップされている。
 とりわけ、都市計画法の改正により、まちづくりに関する独自の条例制定が見られるほか、これに呼応するように地域のまちづくりの基本となる「都市計画マスタープラン」の策定が進み、現在、23区中、17区が策定を終え、5区が検討中である。
 こうしたプランの策定、実施にあたっては、在住・在勤者への十分な説明と議論、地域の自発的な取り組みへの支援が必要であるとともに、今後は、都市・まちが産業を育み、産業が都市・まちを支えるとの観点に立ち、地域における産業および企業の重要性を十分に尊重されたい。

(1) 中心市街地活性化対策の拡充
 中心市街地の活性化については、すでに葛飾区、足立区、荒川区、墨田区において東京商工会議所も参画のうえ計画を策定済みであり、本年度も台東区で検討が予定されている。
 上記4区においては、今後実施段階を迎えるが、これが商店街活性化策に留まることなく、在住・在勤者も含めた市民参加の後押し、交通インフラ整備の推進や再開発計画等との整合性確保などに資するよう、総合的にまちづくりに対する支援策を講じられたい。
 また、各区におけるTMO(タウン・マネージメント機関)に対する支援を継続するとともに、タウン・マネージャー養成など関連事業の一層の拡充を図られたい。

(2)地域の実情に即した大規模小売店舗立地法の運用
 大規模小売店舗立地法の施行を6月に控えているが、東京都の要綱を含め新法の具体的な運用・手続きについては、今後も引き続き十分な周知徹底を図り、出店者、住民、地域商業者など関係各方面に混乱が生じないよう配慮されるべきである。
 また、本法の運用にあたり東京都ならびに23各区は、地域のまちづくり推進の観点から、地域総合経済団体たる当所の役割を認識され、当所の見解についても十分に尊重されたい。
 さらに、区によっては、新法の施行に合わせ、事実上の出店調整につながりかねない独自の基準を盛り込んだ条例を制定する動きがあるが、区毎に運用が著しく異なることは必ずしも望ましくなく、東京都との十分な連絡調整が望まれる。

4.企業の環境対策への支援

 資源循環型社会の構築に向けては、行政・市民・事業者の各主体による積極的な取り組みが必要である。とりわけ事業者は、製品・サービスの提供者として資源循環の最上流部に位置し、最も環境負荷をコントロールしやすい立場にあることから、その責務はきわめて大きい。
 東京都におかれては、国の画一的な規制に加え、地域特性に応じた自治体レベルの取り組みが重要であるとの東京都環境審議会からの答申を受け、現在の東京の環境が危機的状況であるとの認識のもと、現行の公害防止条例の全面的改正を予定されている。
 しかしながら、次世紀を見据えたこうした先駆的な取り組みは評価されようが、経済活動の相当部分を支える中小・小規模事業者がこれに適切に応じられないようでは、その実現は到底不可能である。
 今後、具体的な実施段階にあたっては、中小・小規模事業者が東京の環境保全において応分の役割を果たせるよう、環境基準等の目標値の設定や実施手法等について十分な配慮をされたい。

(1)企業の環境国際規格取得に関する支援
 ISO14001(環境マネジメントシステム国際規格)については、その重要性の浸透から、今後、中堅・中小企業にも取得気運が急速に高まるものと期待される。
 東京商工会議所では、平成10年よりコンサルティング費用を低減した認証取得支援講座を実施しており、現在10社が認証を取得するに至っている。
 東京都におかれては、中小企業に対する、認証取得に係る助成枠の拡大、取得後の定期審査や更新審査の負担軽減のための助成とともに、認証取得企業への優遇措置として、公害防止条例改正に伴い増大すると思われる各種提出書類の免除等簡素化を図られたい。

(2)容器リサイクル法への対応
 本年度から容器包装リサイクル法が完全実施され、一部の事業者を除いて、一定の容器包装を利用、製造する企業は、「特定事業者」としてリサイクル(再商品)義務が課せられることとなった。
 当所では、3000社を超える、適用となった中小企業の申告手続き及び指定法人への契約の代行を行い、事務負担軽減を図っているところである。
 東京都におかれては、引き続き本法の周知徹底を図るとともに、自主申請方式のため起こりかねない事業者間の不公平感をいたずらに生じさせないよう、清掃事務所等の機能を生かして事業者特定の徹底等、都独自の対策を講じられたい。

(3)ディーゼル車の排ガス規制の見直し
 ディーゼル車の規制については、深刻な経営環境にある中小・小規模事業者にとって新たな負担となることから、低公害車導入やDPF(排ガス浄化)装置装着に関しては、助成および税制上の優遇措置等、十分な配慮をすべきである。
 また、TDM(交通需要マネジメント)実施に係り、ロードプライシングの実施計画づくりについては、拙速にならぬよう事業者を含めた関係者間の十分な議論と実施に至るまでの周知徹底を図られたい。


(4)「東商エコ・リーグ」、「東商エコ・ショップ」事業への支援
 平成8年から東京都の助成により開始された、小規模事業所向けオフィス古紙回収事業「東商エコ・リーグ」は、現在12支部を通じ約2000事業所の参加を得ている。
 本事業は、東京都清掃事業の方針に沿い、事業者による自主的回収システムのモデル事業として実施しており、同システムがさらに普及するためにも、家庭系ゴミとの混在を避けるとともに事業系ゴミの有料化を徹底し、各区における本事業のPR等支援策の充実を図られたい。
 また、平成9年より実施している再生品普及事業「東商エコ・ショップ」は、現在登録企業約300社を有するなど、環境配慮型商品・サービスの情報提供に積極的に取り組んでいるところである。
 行政においても、グリーン調達等への積極的な取り組みが求められており、東京都におかれても、企業のリサイクル活動の好例として、環境学習の場において活用する等本事業を支援されたい。

5.事業機会等の確保への対応

 構造改革、規制緩和、市場重視経済の進展等、激しく変化する環境に企業や勤労者が適応するため、事業活動や就業に係わる機会均等や公正取引等の環境整備を早急に再構築する必要がある。
 事業活動においては、官公需における中小企業の参入機会の確保、下請け取引の適正化、公平・公正な競争条件の確保やそれらに係わる相談体制の整備など、改めて点検し直すべきである。
 また、深刻度を増す雇用面では、職業能力開発行政の積極的な展開、とりわけ、労働省所管事業「職場体験講習」の積極的な展開等、求職者(休業者)等に対するIT(情報技術)など教育・研修機会の提供等エンパワーメントに力を注がれたい。

6.経営改善普及事業への一層の支援
 機動性、柔軟性、創造性を発揮しうる小規模企業の経営改善・向上やイノベーションの促進、就業機会創出の担い手として期待される創業間もない企業への支援策の重要性については、論を俟たない。
 東京商工会議所としても、IT(情報技術)化の推進など時代の要請に応えるべく、本事業を推進する経営指導員の資質向上に努め、積極的な事業展開を図っていく所存である。
 ついては、東京地域中小企業支援センターの創設によるワン・ストップ・サービス型の支援体制を整備するとともに、本事業に携わる経営指導員など補助対象者の人件費や事業費については、継続的かつ安定的に確保されるよう特段の配慮をされたい。


 最後に、現在、新しい都政の基本構想となる「東京構想2000」(仮称)の策定が進められているほか、23区のうち16区で基本構想・基本計画の改定が行われている。
 地方分権一括法の施行により地方分権が新たな段階を迎えている中、特別区においては、地域特性や産業トレンドを踏まえ、独自の産業振興策を打ち出しつつある。
 東京都におかれては、今後、都区連携の充実とともに、東京商工会議所との一層の連携・協力体制の強化を図られたい。
 近く、明らかとなる構想・計画において、産業・経済活動の重要性や中堅・中小企業および東京商工会議所が、地域社会の中で一定の役割を担うべく、明確に位置付けられることが切に望まれる。

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所