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平成13年度税制改正に関する要望 -経済構造改革の促進による日本経済の新生をめざして-

2000年9月14日
東京商工会議所

基本的考え方

 わが国経済は、実質経済成長率が2四半期連続でプラスを記録するなど、漸く景気回復に向けた胎動を示し始めたかに見えるが、厳しい雇用情勢や個人消費の低迷など、先行き不透明な部分も多く、中小企業においては未だ景気回復を実感するには至っていない。

 政府においては、これまで景気浮揚のために、累次にわたる財政出動や減税措置を講じてきたが、その結果、国・地方をあわせた長期債務は拡大を続けている。また、単年度の財政状況においても、国・地方を通じた歳出は税収だけで賄うことができず、歳出と税収の差額の大半は、公債発行、借入に依存している。

 また昨今、少子高齢化の進展、ITを中心とした情報ネットワーク化と経済のグローバル化の進展など、経済社会構造も目まぐるしい勢いで変化していることに加え、国民の、社会に対する価値観・自己実現欲求もますます多様化している。このような環境変化に適切に対応していくためには、民間と行政の双方が車の両輪として経済構造改革を推進していく必要があり、また、それによってわが国経済の自律的回復と持続的な成長を成し遂げることができるのである。

 経済構造改革の牽引車となるのは、個々の企業の、組織や事業の再構築に向けた果敢なアクションである。言うまでもなく、わが国企業の99.7%、従業者の72.7%を占める中小企業の経営改善や経営改革に対する努力の集積が、今後のわが国の経済構造改革の推進力になることは間違いない。したがって、政府においては、民間の経済構造改革に向けた努力を側面的に支援する諸施策を講ずるとともに、企業活力の維持・強化の阻害要因となる税制・経済的規制の見直しや地方分権を推進することが喫緊の課題である。

 また、景気回復が確実になった段階で、行財政改革の徹底による経費削減に努めるとともに、景気回復による税の自然増収を見据え、地方分権の推移や社会保障制度のあり方を勘案しながら、わが国税制の中長期的な課題である直間比率の見直しや国から地方への税源移譲、国・地方を通じた所得課税・資産課税・消費課税の「バランスのとれた税制」に向け、簡素・公平・中立の租税原則に立脚した総合的な税体系の再構築を行うべきである。

 東京商工会議所は以上のような基本的考え方にもとづき、経済構造改革を促進し日本経済の新生を目指すという視点に立脚し、平成13年度の税制改正において、下記の諸点が実現するよう強く要望する。

要望



Ⅰ.企業活力の維持・強化のための税制の整備

 個々の企業が経営改善・経営改革をすすめ、わが国全体としての経済構造改革に結びつけていくには、企業の経営基盤強化とその継続性確保に向けた努力が不可欠である。税制面においては企業活力の維持・強化を阻まぬよう所要の整備を行うべきである。

1. 経営基盤強化のための税制

 国際的な大競争の中で自助努力を行う企業にとって阻害要因となる以下の税制を見直し、企業の経営基盤強化の側面的支援を図るべきである。

(1)法人事業税への外形標準課税の導入反対

 法人事業税への賃金等を課税標準とする外形標準課税は、企業の雇用や投資に抑制的に作用し、経済活力を削ぐ恐れがあるとともに、収益性の低い中小企業への課税強化となる。また、諸外国でも廃止や見直しの方向にある外形標準課税の導入は、国際的な潮流に逆行するものであり、その導入には反対である。

 そもそも、地方自治体の財政安定化が外形標準課税を導入すべきとする理由の一つにあげられているが、最初に安定化ありきでは地方行政事務の合理化への努力に水を差し、本末転倒となりかねない。まずは納税者が納得できる行財政改革を徹底的に行うことが前提であり、安易に税制の見直しによる税収確保の方策を求めるべきではない。

(2)全ての中小同族会社への留保金課税制度の廃止

 金融機関による融資先選別が厳しくなっている今日、外部資金の調達が容易でない中小企業にとっては、将来の設備投資資金や緊急の資金需要に対応するために十分な社内留保を確保することが不可欠である。

 平成12年度税制改正では、社内留保の必要性に鑑み、新事業創出促進法の認定事業者及び設立10年以内の中小同族会社に対しては、留保金課税が2年間の時限措置として停止され、部分的な前進を見た。しかし、社内留保の必要性は創業期企業に限られたことではなく、厳しい環境の下、経営改善・経営改革に果敢に取り組んでいる既存の中小同族会社にとっても同様に当てはまる。

 また、会社の株主あるいは出資者が限られているという理由のみによって、同族会社の留保金に対して税を課することは、税制上の中立性を著しく害している。

    したがって当該制度は全ての中小同族会社に対して廃止すべきである。 

(3)固定資産税軽減のための評価方法等の見直し

 本年度の固定資産税評価替えでは、負担水準の変更によって部分的に税負担が軽減されたが、長期にわたる地価の下落にもかかわらず、地価公示価格の7割評価を基に負担調整措置を図るという評価方法が固定されており、商業地、特に都市部に経済基盤を持つ企業にとっては依然として過重な負担となっている。商業地等に係わる固定資産税については、土地の評価を、地価の動向により直結した、簡素でわかりやすい方法に改めるとともに、その実効負担率(土地の時価に対する固定資産税額の割合)を評価額上昇以前の最高水準とされる0.4%程度にすべきである。

(4)欠損金の繰越控除期間の延長と繰戻還付の適用

 企業損益の算出方法については、国際的な状況等に鑑み、以下の措置を講ずることで適正に税務処理ができるように改めるべきである。

① 繰越控除期間(現行5年)の10年への延長

② 現在、不適用になっている欠損金の繰戻還付の適用

(5)少額減価償却資産の取得価額基準の引き上げ

 IT化に対応した情報装備の強化や事務所備品の買い換え等、経営基盤の整備の観点から、少額減価償却資産の取得価額基準(現行10万円)を50万円程度に引き上げるべきである。

(6)中小企業軽減税率の適用所得金額の引き上げ

 中小企業の体質強化を図るため、法人税の中小企業軽減税率については、昭和56年度以降据え置かれている適用所得金額(現行800万円)の引き上げを図るべきである。

(7)費用性の明らかな支出に対する課税の見直し

 企業にとって、社会通念上必要な費用であっても、交際費課税の対象として、資本金5,000万円超の法人では全額損金不算入、資本金5,000万円以下の法人についても、一定額を除き損金不算入となっている。しかし、実質的に冗費とは言えず透明性の高い費用については、私的な饗応などいわゆる一般的にイメージされる接待費と一線を画し、一定の要件のもとで、損金算入枠を設けることで、企業経営の実態に即した税制措置を講じるべきである。

2.事業承継円滑化のための税制

 多様な技術と人材を備え、雇用の大きな受け皿でもある中小企業は、経済的にも社会的にも、健全な継続性が確保されるべきであるとの見地から、相続税・贈与税など事業承継を円滑にすすめるための制度の見直しと創設を図るべきである。

(1)相続税・贈与税の見直し

 相続税と贈与税の最高税率を50%まで引き下げるとともに、税率の累進構造を緩和すべきである。また、贈与税については、昭和50年の改定以来60万円に据えおかれている基礎控除額を大幅に引き上げるべきである。

(2)事業用資産に対する新たな事業承継税制の創設等

 事業用資産(個人事業主の事業用資産およびオーナー等の自社株等)に対する相続税については、相続時に課税総額の一定割合を納税した上で、残額部分について、原則、営業譲渡または株式公開等までの間は利子税なしで課税を繰り延べ、例えば10年間事業を継続した場合には納税を免除する、といった新たな事業承継税制を創設すべきである。また、納税資金が手当できない場合の対応策として物納制度があるが、土地・建物等の物納は事業の継続に直接影響を及ぼすことが多く、取引相場のない株式の物納について柔軟に対応すべきである。

(3)取引相場のない株式の評価方法の更なる改善

 平成12年度改正において、取引相場のない株式の評価方法が改定され、類似業種比準方式による評価方法が、より収益性を加味するものとなったことから、一部の収益性の高い企業については、株式の評価額が改正前よりも上昇してしまうケースも見られる。

 取引相場のない株式の評価にあたっては、類似業種比準方式における大会社・中会社の株式評価に適用されている斟酌率を小会社と同様に50%とすることや、中会社・小会社においても大会社と同様に、類似業種比準方式または純資産価額方式の選択適用を認めること等、更なる改善を図るべきである。

Ⅱ.経営改善・経営改革のための税制の整備

 経済構造改革の最大の牽引車は企業の経営改善・経営改革であるという観点から、企業自身が経済社会構造の変化に迅速かつ的確に対応し、時代の要請する経営へ向けた事業再構築を可能とする環境整備が必要である。

1.経済社会構造の変化に対応した税制

 経済社会が世界的に「規格化」「大量化」「大型化」から脱却し、「多様化」「ソフト化」「情報化」へシフトする中で、企業経営も大きな構造転換が必要になっている。税制面では、以下のような観点から経済社会構造の変化への対応を図るべきである。

(1)情報ネットワーク化への対応

 情報通信機器の進歩のスピードは年々加速化してきており、現行税法上の償却期間(購入6年、リース4年)は実態に合わないものになっていることから、情報通信機器の償却期間の短縮(各々3年、2年)が必要である。また、特定情報通信機器の即時償却制度(パソコン税制)については、期間の延長に加え、資産計上しなくてもよい制度にするなど、税制上の整備を図るべきである。

(2)居住形態の多様化への対応

 良質な住宅取得に対する国民のニーズは強く、また人々の生活観や勤労観の多様化と交通インフラの進展等によって今後居住形態はますます多様化していく。

 このような現状を踏まえ、国民の住環境の充足に係る支援策として、現行の住宅ローン税額控除制度をベースに、良質な住宅ストック形成に資するものについては控除率を手厚くし、セカンドハウス(例えば高齢の親族を近隣地でケアするために購入する住居等)を対象とするとともに居住用財産の買換え特例との併用を認める等の要素を取り入れた、安定的な制度としての新たな住宅取得支援税制を創設すべきである。

 また、住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税額の計算の特例については、その適用期間を延長するとともに、贈与税の基礎控除引き上げに併せて当該資金贈与の非課税限度額を引き上げ、また買い換えや改築の場合にも適用を認めるなど、制度の拡充を行うべきである。

(3)高齢社会への対応

 今後の高齢社会において人々が安心して経済活動に意欲的に取り組むことができるよう、以下の税制を整備されたい。

①在宅介護機能を備えた高コストな特定住宅取得者に対する優遇税制として、特定住宅にかかる固定資産税を軽減すべきである。

② 適格退職年金などの企業年金の積立金に対して課せられている特別法人税(1.173%)は平成11年度税制改正で2年間の停止措置がとられたが、企業年金の充実と安定的な運用のために、廃止または停止措置を延長すべきである。

2.事業再構築のための税制の整備

(1)会社分割税制の整備と連結納税制度の創設 

 会社分割に係る税制については、現行の合併税制の見直しと併せて、一定要件の下で税務上の簿価引継ぎを認めることにより、資産移転による譲渡益課税の繰り延べなど、組織再編への挑戦にブレーキをかけない制度とすべきである。また企業分割税制の整備と併せて、税負担を企業グループ単位で考えられる連結納税制度の早期創設をもって、組織再編にかかる包括的な税制の枠組みづくりを完結すべきである。

(2)不動産の有効活用・流動化のための税制措置

 事業者の経営改善・経営革新を促すには、不動産の有効活用と流動化に資する政策が不可欠である。税制面では以下の措置を図るべきである。

①不動産取得税の廃止

②登録免許税の手数料程度への軽減

③法人の土地譲渡益重課の廃止

④特別土地保有税の廃止

⑤事業用資産の買い換え特例の適用期間の延長と拡充(圧縮率100%)

⑥不動産所得にかかる損益通算の特例の廃止

⑦個人の長期所有土地の譲渡益課税の税率軽減と適用期間の延長

Ⅲ.創業支援のための税制

 情報・福祉・環境などの分野を中心に、現在、ベンチャービジネスのすそ野が広がっているが、開業率は廃業率を依然下回っており、新しい産業と雇用を創出する確固たる足取りが充分に見えていない。新たに生まれてくるベンチャー群がわが国経済構造の変革を促すための税制の整備が必要である。

1.投資環境整備(再投資促進)のための税制

 創業期企業が株式市場から資金調達を受けやすい環境を整備するために、株式譲渡益の源泉分離選択課税制度の経過措置を延長すると共に、申告分離課税の税率(現行26%)を配当・利子に係る税率と同様20%に引き下げるべきである。

 また、申告分離課税において、相続税納付後の相続株式の譲渡益を計算する際の取得原価は、被相続人が取得した価額ではなく、相続時の評価額とすべきである。

2.個人事業者・小規模事業者の活力ある経営のための税制措置  

 SOHO・マイクロビジネスなどの個人事業・小規模事業においては税務上、経費として控除される範囲が狭い。次代の雇用の受け皿として大きな役割を担うSOHO・マイクロビジネスなどの活力維持のためには、現行の事業所得課税のうち以下の措置を図るべきである。

①経費として控除されにくい「専従者給与」、「交際費」、「貸倒金」が必要経費として認められやすくなるよう、通達により弾力運用を図るべきである。

②発展期にある事業者の投資意欲を削がないよう、当年欠損金に見合う既納付事業税の繰り戻し還付を認めるべきである。

Ⅳ.国民から信頼される公平・適正な税制の確保と執行のために

 現行の税制は、課税標準・税率構造・各種控除・時限措置などの面で納税者に理解されにくい制度となっていることに加え、「取りやすいところから取る」という実状も散見されるため、納税者に不信感を与えているのが現状である。税体系の抜本的改革を進める際には、「納めるべきところが納める税制」への転換をすべきである。

1.個人所得課税の累進税率構造の緩和と課税最低限の引き下げ

 税の公平性に鑑み、広く薄く税を負担するという観点から、個人所得税の累進税率構造の緩和と課税最低限(現行384万円。平成10年度の全給与所得者の納税者割合は72%)の引き下げを検討すべきである。

2.納税者番号制度の導入

 経済活動のボーダレス化、金融資本取引の多様化、電子商取引拡大等の情報化・電子化の進展に伴い、現行制度のもとでは所得の正確な捕捉が難しくなることが予想されることなどから、課税の公平化・適正化を図るため、納税者番号制度の早期導入に向け、検討を進めるべきである。またその際には、プライバシー保護に係わる万全の措置を講ずることにより、国民から理解される制度を目指すべきである。 

3.消費税の益税問題について      

 消費税の課税業者が、免税業者から仕入れた場合であっても、仕入れ税額控除が可能であることや、消費税の免税業者が、仕入段階で負担した金額を超えて消費税を売上価格に転嫁する場合等に益税が発生するとの指摘がなされている。このような益税問題が存在するならば、インボイス(課税業者のみが発行する仕入税額控除に必要な伝票。新たに作成する書類ではなく、従来の請求書に消費税額を明示したもの)の導入など、課税の公平性を担保するための制度整備を検討する必要がある。

 インボイス導入等の対応策の検討の際には、それに伴う事業者の負担についても十分な配慮をすべきである。

4.納税意識の高揚-年末調整の自己申告方式への移行

 現行の給与所得者に対する源泉徴収制度は、個々の申告の手間を省き、徴税コストの削減にも寄与するものであるが、同時に給与所得者の納税意識を削ぎ、納税者の社会参画意識を希薄にする一因とも言われている。

 源泉徴収制度の長所を生かしつつ納税意識の高揚を図るため、年末調整については自己申告方式に切りかえる方向で検討すべきである。

5.土地評価の透明性の確保

 路線価評価にあたっては不動産鑑定士などの精通者意見が大きく反映されており、実質民間が評価しているといってもよい。評定プロセスに透明性を持たせ、納税者の理解も得るためにも、民間に完全に移管すべきである。

 また、固定資産税評価額の縦覧については、自己所有土地のみが対象となっているが、他人所有の土地の評価額を公開しないことが、評価額に対する不信感を招いていることも否定できない。今後、プライバシー保護に留意し、固定資産税評価額等に限定して公開を検討すべきである。

6.新たな行政監査制度の導入

 抜本的な税体系の再構築に取り組むにあたっては、先ずは税の使われ方である予算の執行が公平かつ適正に行われているということが国民から十分理解・信頼される必要がある。そのためには、国や地方レベルにおいて、行政から独立した立場で、予算案を国民に対して具体的かつわかりやすい形で開示するとともに、執行段階での監視・改善勧告を行う権限を持った、新たな行政監査制度の導入を検討すべきである。

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所