政策提言・要望

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政府税制調査会「あるべき税制の構築に向けた基本方針」に対する意見

2002年9月12日
東京商工会議所

 平成14年6月14日に小泉純一郎内閣総理大臣へ提出された政府税制調査会答申(以下「答申」)において「あるべき税制の構築に向けた基本方針」が示された。
 税制には「財源調達機能」、「所得再分配機能」、「経済安定化機能」の3つの機能があるが、答申全体の基本的なスタンスは「財源調達機能」、「所得再分配機能」に重点を置いたものと言える。勿論、わが国経済の持続的成長のためには、財政のプライマリーバランスの健全化は必要である。
 しかしながら、現下のデフレ状況の中で何よりも先ず必要なことは、デフレの克服、企業の活力・競争力の強化であり、税制の3つの機能のうち、「財源調達機能」、「所得再分配機能」よりも「経済安定化機能」、言いかえるならば「経済活力強化機能」を優先すべきと考える。
 したがって、今後の税制改革に当たっては、デフレを克服し、景気が自律的回復軌道に乗るまでは、単年度の「税収中立」にこだわることなく「経済活力・国際競争力の強化」の視点から取り組むことが必要である。
 また、地方分権時代における、地方の受益と負担の関係を明確にし、地方行財政の効率化を推進するため、国と地方及び道府県と市町村との間の税源配分のあり方を見直すべきである。
 加えて、歳出面についてもわが国経済を持続的成長に乗せるため、抜本的な構造改革が必要である。
 以上のような観点から、今回の答申で示された、「あるべき税制の構築に向けた基本方針」に対して、最も重要と考える項目につき意見を以下に申し述べるものである。

提言要望

1.法人課税

 外形標準課税について
 答申では、法人事業税の外形標準課税について、「受益の地方分権の実現に資するため、早急に導入すべき」とされているが、もそも法人は、そたとえ赤字法人であっても固定資産税・法人住民税均等割・事業所税等より、既に多くにの応益負担をしており、今後の改革に際してはそれらの整理こそが必要あるにもかかでわらず、逆に新たな応益税を設けようとすること自体が不可解である。ま法人は、地た、域のサービスの受益者であると共に、従業員の雇用などを通じて、地域経社会の安定済に大きく貢献していることを忘れてはならない。
 そもそも、地方自治体の財政安定化が外形標準課税を導入すべきとする理由の一つにあげられているが、最初に財政安定化ありきでは地方行政事務の合理化への努力に水を差し、本末転倒となりかねない。まずは納税者が納得できる行財政改革を徹底的に行うことが前提であり、安易に税制の見直しによる税収確保の方策を求めるべきではない。
 総務省が提案している、賃金等の付加価値等を課税標準とする外形標準課税は、企業の雇用や投資に抑制的に作用し、経済活力を削ぐ虞があるとともに、収益性の低い中小企業への課税強化となる。
 また、付加価値を課税標準とする外形標準課税は、①付加価値に課税する消費税や②付加価値が配分されて、株主、債権者、従業員の段階で課税される所得課税との二つのことからも二重課税であると言える。さらに、黒字企業の場合は、付加価値割の単年度損益が「所得」となることから、「所得」が二重に課税対象となってしまう。
 一方、外形標準課税は、諸外国でも「雇用、競争力に悪影響がある」として廃止の方向にある。
 したがって、法人事業税については、あくまでも現行の課税方式を維持すべきであり、外形標準課税の導入には反対である。

 留保金課税について
 答申は、同族会社の留保金課税について、「適正な課税を確保しつつ円滑な企業活動に資する観点から」見直す方向を示している。
 これまで政府税制調査会は、「留保金課税制度は、同族会社に対して通常の法人税のほか、一定額を超える内部留保に対して追加的な課税を行うことにより、間接的に配当支出の誘因としての機能を果たしつつ、法人形態と個人形態における税負担の差を調整しようとするものであり、現行の法人税と個人所得課税の基本的仕組みを前提とする以上、今後とも必要な制度」と主張していたことを考慮すれば、今回の答申内容は注目に値する。
 留保金課税制度は、主に法人形態と個人形態における税負担の差を調整するために設けられたといわれているが、法人税と所得税の最高税率の格差が大幅に縮小されている今日、その存在意義は失われていると言える。また、設備投資や緊急の資金の源泉となる資本蓄積を阻害する為、今後の見直しに当っては、本来、当制度を全廃すべきであるが、先ずは、貸し渋り、貸し剥がしの厳しい中、資金調達手段の乏しい中小同族非公開会社に対して留保金課税を廃止すべきと考える。

2.資産課税

 相続税・贈与税について
 相続税・贈与税について答申は、「負担の適正化の観点から最高税率については引き下げる一方、累進は現行程度の水準を維持することが適当である」と示している。しかしながら、税率構造についても、国際的に見て、極めて累進的であることから、過重な税負担が経済活力の阻害要因となっている。したがって、これまで実施が先送りされている税率構造の見直しについては、早急に現行の最高税率を70%から50%へ引き下げると共に、その適用金額(相続税で現行20億円超)の引き上げを含め、累進税率構造全体の緩和も図るべきである。

 事業承継関連税制について
 答申は、「事業承継関連の特別措置については、中小企業の事業の円滑な承継に貢献している点は認められるが、相続後の事業継続に対する過大なインセンティブは、新規の創業や新たな事業展開とのバランスを失わせることを踏まえ、そのあり方を見直して行く必要がある」としている。しかしながら、中小企業の事業用資産は、事業継続に不可欠であるがゆえに、相続に際し、処分・換金ができず、そこに相続税の担税力を求めることはできない。それゆえ、延納なり借り入れによって納税を行う場合には、経営基盤が不安定なものとなり、その分、相続人が新規創業者に対してハンディキャップを負うことになる。
 そこで、事業者が相続税を憂慮せず事業継続、経営改革に邁進できるよう、事業用資産は、本来、相続税の課税対象から除外すべきと考えるが、当面、欧州諸国の例に見られるように、5年程度の事業の継続を前提に、少なくとも課税対象額の5割を控除するといった制度を創設し、事業用資産に対する事業承継税制の確立を図るべきであると考える。

 固定資産税について
 公示価格の7割評価を基に負担調整措置を図るという課税方法が採られている固定資産税について、答申では、「地価公示価格の7割を目途とした評価水準については、全国的な評価の均衡化、適正化の観点からこれを維持することが適当である」としている。しかし、このような措置により、長期にわたる地価の下落にもかかわらず商業地における固定資産税は上昇しており、特に都市部に立地する企業にとっては、依然として過重な負担となっている。例えば、平成13年の東京都商業地の地価は、昭和58年の水準の8割を切っているにもかかわらず、その固定資産税額は2.8倍にもなっている。
 こうしたことを踏まえると、商業地等に係わる固定資産税については、実効負担率(土地の時価に対する固定資産税額の割合)を評価額上昇以前の最高水準であり、また、地価税(平成10年以降課税停止)導入時の政府答弁において、固定資産税と地価税をあわせた妥当な負担水準とされた0.4%程度にするとともに、課税標準の算出方法を地価の動向に連動した簡素でわかりやすい方法に改めるべきである。
 そこで、実効税率を0.4%程度とするために、現行標準税率の1.4%を前提として、課税標準を時価(地価公示価格)の3割程度とする(1.4%×0.3≒0.4%)ことを考えるべきである。

 土地・住宅税制について
 答申では、「土地税制については、地価の変動にあわせて見直しが図られてきた。バブル期の対応として課税強化された部分は、既に廃止されるなどそれ以前の水準まで戻っている」としている。
 しかしながら、例えば、取得段階では、政策目的を既に失った特別土地保有税が依然として残っており、納税側のみならず徴税側の事務手続き上、大きな負担となっている。また、不動産取得税、登録免許税については、平成6年の固定資産税評価の7割への引き上げの際、不動産取得税は固定資産税評価額の1/2を、登録免許税は同1/3を課税標準とする措置が講じられたものの、評価の引き上げが全国平均で4倍と大きかったため、実効負担率では平成5年に比べ2倍程度の重い負担を強いられている。
 また、譲渡段階における個人の長期保有土地の譲渡所得税率26%についても、株式をはじめとする他の資産と均衡を失している。
 このように、土地税制については、土地の有利性を縮減しようとする税制からは脱却できておらず、土地に対する重い税負担が、土地の有効活用を妨げ、不動産投資を阻害し、資産デフレを進める要因となっている。地価の下落が現下の経済状況の大きな要因となっていることからも、取得、保有、譲渡の各段階における課税を抜本的に見直す必要がある。
 また、答申は、住宅に関する税制について、持ち家比率が一定の水準に達したこと、少子・高齢化に伴う住宅需要の量的な減少、借家や住替等の需要が多様化する中で、持家取得促進を中心とした住宅政策のあり方が問われている状況を踏まえ、「住宅ローン控除等従来の軽減措置のあり方を検討すべき」としている。
 しかしながら、わが国の住宅ストックは質的には未だ充足されたとは言い難い上、住宅の質的向上に対する国民の潜在的な需要は高いことから、二戸目も含め、持ち家取得を促進する税制は継続・拡充すべきである。
 また、今後、更に進む少子・高齢化や環境問題に対する意識の高揚などを踏まえると、バリアフリー化、省エネ化、耐震化のための建替えや改築需要の高まりが見込まれ、これらに対する税制の優遇措置は依然として必要である。現行の住宅ローン減税の恒久化とさらなる拡充、および住宅ローン利子所得控除制度の創設が必要である。

3.消費課税

 免税点制度ならびに簡易課税制度について
 答申では、免税点制度の大幅な縮小、簡易課税制度の廃止を含めた抜本的な見直しを示している。
 そもそも免税点制度や簡易課税制度は、主に中小事業者の事務負担への配慮から設けられた制度である。中小事業者の中には、経理を専門とする社員のいないところもあり、免税事業者や簡易課税事業者の事務処理負担能力は依然として十分なものとは言えず、これまで通りの政策的配慮が必要であると考える。加えて、免税事業者は、デフレ経済が進展し、価格競争が激化している現状において、仕入に関わる消費税分すら販売価格に転嫁できていない状況もあり、こうした状況での課税事業者への移行は、当該事業者の収益を圧迫することになる。また、簡易課税制度は、これまでの二度にわたる見直しの結果、みなし仕入れ率の細分化により、ほぼ実態にあったものとなっている。
 したがって、これらの制度を縮小・廃止することは、当制度対象事業者の事務負担を増大させ、経営に重大な悪影響を及ぼすことから、現行の免税点制度および簡易課税制度は、維持存続すべきであると考える。

以上
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