政府・与党の緊急経済対策について
東京商工会議所
1.比較的短期間で対策をまとめたことを評価したい。従来から数次にわたって緊急経済 対策が実施されてきたが、今回は景気低迷の根底にある金融システム不安を解消する抜 本的対策となることを期待する。すぐに実行できるものは早急に実施に移してもらいた い。また、税制改正を要するものは直ちに税制調査会での審議を開始し、結論を出して ほしい。ただ、中小企業への配慮については、政府系金融機関等によるセーフティーネ ットの拡充策についてさらに具体的な検討を加える必要がある。
2.不良債権の処理は、金融システム安定のために先送りできないことは理解できる。そ の意味で、最終処理の期限を設定したのもやむを得ない。ただ、直接償却を性急に実行 することは、却ってデフレ要因になり、健全な中小企業をも苦境に陥れることになるな ど、克服すべき課題も多い。主な対象を大手行の不良債権にしたことで、中小企業へ影 響は多少緩和されるかもしれないが、実施にあたっては、中小企業の連鎖倒産防止策や 雇用面のセーフティーネットを拡充した上で、グレーゾーンにある債権を処理の対象す するかどうかの判断に際しては、画一的な基準を適用して再生可能な中小企業まで倒産 に追い込むようなことがないようにすべきである。
また、金融機関の保有株の買い上げ機構については、市場介入や公的資金による支え の当否について疑問がないわけではないが、金融システムの安定や景気の自律的回腹の ための前提条件として、5年間の時限的措置として認めざるを得ないのではないか。い わば必要悪であるから、国民負担が発生しないよう、あるいは最小限にとどめるために も景気回復に全力を傾けるべきである。
証券市場の活性化に資する税制面の措置や、土地利用規制の撤廃、土地の有効利用促 進のための法制・税制面の改正については、我々としても従来から要望してきたところ であり、今国会で可決するよう改正手続きを急いでほしい。
3.いずれにせよ、デフレを回避しつつこれらの対策を円滑に実施していくためには、予 算の前倒し執行など、引き続き景気回復を最優先とした経済運営が不可欠である。 問題は実行力である。当面の緊急経済対策とあわせ、国民の痛みを最小限にとどめつ つ、実効ある構造改革をすすめるためには、政治の強力なリーダーシップが何よりも重 要である。政治の安定と、実行力のある内閣が組織されることを期待する。