会頭コメント

会頭コメント

政府・与党の緊急経済対策について

2001年4月6日
東京商工会議所

1.比較的短期間で対策をまとめたことを評価したい。従来から数次にわたって緊急経済 対策が実施されてきたが、今回は景気低迷の根底にある金融システム不安を解消する抜 本的対策となることを期待する。すぐに実行できるものは早急に実施に移してもらいた い。また、税制改正を要するものは直ちに税制調査会での審議を開始し、結論を出して ほしい。ただ、中小企業への配慮については、政府系金融機関等によるセーフティーネ ットの拡充策についてさらに具体的な検討を加える必要がある。

2.不良債権の処理は、金融システム安定のために先送りできないことは理解できる。そ の意味で、最終処理の期限を設定したのもやむを得ない。ただ、直接償却を性急に実行 することは、却ってデフレ要因になり、健全な中小企業をも苦境に陥れることになるな ど、克服すべき課題も多い。主な対象を大手行の不良債権にしたことで、中小企業へ影 響は多少緩和されるかもしれないが、実施にあたっては、中小企業の連鎖倒産防止策や 雇用面のセーフティーネットを拡充した上で、グレーゾーンにある債権を処理の対象す するかどうかの判断に際しては、画一的な基準を適用して再生可能な中小企業まで倒産 に追い込むようなことがないようにすべきである。
  また、金融機関の保有株の買い上げ機構については、市場介入や公的資金による支え の当否について疑問がないわけではないが、金融システムの安定や景気の自律的回腹の ための前提条件として、5年間の時限的措置として認めざるを得ないのではないか。い わば必要悪であるから、国民負担が発生しないよう、あるいは最小限にとどめるために も景気回復に全力を傾けるべきである。
  証券市場の活性化に資する税制面の措置や、土地利用規制の撤廃、土地の有効利用促 進のための法制・税制面の改正については、我々としても従来から要望してきたところ であり、今国会で可決するよう改正手続きを急いでほしい。

3.いずれにせよ、デフレを回避しつつこれらの対策を円滑に実施していくためには、予 算の前倒し執行など、引き続き景気回復を最優先とした経済運営が不可欠である。  問題は実行力である。当面の緊急経済対策とあわせ、国民の痛みを最小限にとどめつ つ、実効ある構造改革をすすめるためには、政治の強力なリーダーシップが何よりも重 要である。政治の安定と、実行力のある内閣が組織されることを期待する。

以上