政策提言・要望

政策提言・要望

提言「社会構造の変化に対応した持続可能な社会保障制度の構築に向けて」を公表

2023年11月20日
東京商工会議所
企画調査部

 東京商工会議所(小林健会頭)は、11月13日開催の第763回常議員会にて、社会保障委員会(委員長:中山讓治・第一三共株式会社常勤顧問)がとりまとめた標記提言を決議しました。
(日本商工会議所と連名にて公表。日本商工会議所では、11月16日開催の第731回常議員会において決議)
 本提言は、国の将来を担う若者世代が安心して暮らせる社会を実現するため、国民生活のセーフティーネットである社会保障制度について、働き方や家族構成の変化への対応、財源の持続性確保や国民負担の抑制等に向けた改革が必要との認識の下、とりまとめたものです。
 改革にあたっては、「医療・介護DXの促進」「現役世代の負担軽減」「応能負担の強化」「自助・互助の取組み促進」「働き方に中立的な制度への見直し」「社会課題に対応する新産業の創出・育成」の6つを重要な視点とし、これを踏まえ、医療・介護・年金といった分野毎に提言項目を記載しました。
 医療については、一定以上の所得を有する高齢者の医療費窓口負担割合の引上げ、被用者保険から高齢者医療制度への拠出金制度の見直しのほか、リフィル処方箋の推進やAIの活用による医療の効率化、OTC医薬品の活用などセルフメディケーション促進に向けた環境整備、健康経営の推進を掲げています。また、「かかりつけ医」の制度化や医療機関の機能分化、看護師や救急救命士の業務に関する規制緩和等を通じたタスクシェア・シフトの拡大、医師の地域偏在の解消に向けた取組みの推進を求めています。
 介護については、給付費の増大と深刻な担い手不足を踏まえ、所得の高い1号被保険者の保険料率の引上げ、介護ケアマネジメントの有料化、外国人の受入れや介護職員の賃上げ等による介護人材の確保・定着支援、地域包括支援センターにおけるボランティアの積極的活用等を主張しています。
 医療と介護の連携強化に向けて不可欠なDXの推進については、カルテの電子化を通じた情報共有の促進、マイナンバーの活用推進、「全国医療情報プラットフォーム」の速やかな構築、介護データベースの提供拡大・利活用を訴えています。
 年金については、マクロ経済スライドの効果を弱めている名目下限措置の撤廃、第3号被保険者制度の再構築、被用者保険適用基準の明確化・周知、在職老齢年金制度の見直しに向けた検討に加え、従業員のライフプラン策定をサポートする企業への支援強化を主張しています。
 さらに、少子高齢化・人口減少下でわが国の産業経済を維持・発展させていくためには、外国人材の受入れ・活用が求められるとしたうえで、外国人との共生社会の実現に向け、社会保障制度への外国人の包摂等の必要性を訴えています。
 今後、本提言を厚生労働省など政府関係機関、全世代型社会保障構築会議メンバーや社会保障審議会委員など関係各所へ提出し、実現に向けた働きかけを行うとともに、健康保険組合など関係機関と緊密な連携を図り、国民理解の促進、制度の持続可能性の向上に資する企業活動の後押し等の活動を展開していまいります。


<提言項目>
【Ⅰ.基本認識】
【Ⅱ.改革に向けた重要な視点】
(1)医療・介護DXの促進
(2)現役世代の負担軽減
(3)応能負担の強化
(4)自助・互助の取組み促進
(5)働き方に中立的な制度への見直し
(6)社会課題に対応する新産業の創出・育成

【Ⅲ.具体的提言】
【1.医療】
(1)応能負担の原則に基づいた高齢者負担の見直し
(2)高齢者医療制度への拠出金制度の見直し
(3)「かかりつけ医」の制度化に向けた体制整備
(4)医療の効率化のさらなる進展
(5)現下の環境変化に対応した薬価制度の見直し
(6)タスクシェア・シフトの拡大
(7)セルフメディケーションの促進に向けた環境整備
(8)健康経営のさらなる推進
(9)医師の地域偏在の解消に向けた取組みの推進

【2.介護】
(1)応能負担の原則に基づいた利用者負担等の見直し
(2)介護ケアマネジメントへの利用者負担の導入検討
(3)介護人材の確保・定着支援
(4)人材不足対応のための規制緩和
(5)介護ロボット導入支援の強化
(6)特別養護老人ホームへの参入規制緩和
(7)介護事業所の経営効率化
(8)地域包括支援センターにおけるボランティアの積極的活用

【3.医療・介護におけるDXの推進】 
(1)カルテの電子化を通じた情報共有の促進
(2)マイナンバーの活用推進
(3)医療と介護の連携を容易にする情報基盤の構築・活用
(4)介護データベース第三者提供の拡大
 
【4.年金】
(1)マクロ経済スライドの完全適用
(2)第3号被保険者制度の再構築
(3)被用者保険のさらなる適用拡大を進める場合の留意点
(4)いわゆる「年収の壁」を要因とする就労調整の解消
(5)高齢者の就業調整要因の見直し
(6)従業員のライフプラン策定をサポートする企業への支援強化

【5.外国人との共生社会実現に向けた課題】

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所
企画調査部
担当 櫻井・森
TEL 03-3283-7661
FAX 03-3211-5675