会頭コメント

会頭コメント

京都議定書運用ルール最終合意について

2001年11月10日
東京商工会議所

1.COP7(気候変動枠組み条約第7回締約国会議)閣僚会議で、米国の参加が得られないまま、京都議定書の運用ルールの最終合意書に日本が署名したのは大変残念である。京都会議の議長国としての立場もあり、日本が難しい状況に置かれていた事情も理解できないわけではないが、米国抜きでは効果が半減する上、EUに比べて著しく不利な条件での条約締結に追い込まれたのは、誠に遺憾と言わざるを得ない。

2.政府は今後、批准手続きのために次期国会に承認を求め、国内法制等の整備に着手することが予想されるが、現在の議定書の枠組みでは、着実に成果を上げる実効性と、参加各国が共通に負担を分かち合える公平性が確保できないことは明らかなので、国会においては、十分なチェックをして判断してほしい。
 そもそも京都でのCOP3で定められた各国の温室効果ガス削減目標は、科学的な根拠に乏しく、政治的な駆け引きによって数字が積み上げられた側面があったことを否定できない。このまま批准すれば、産業界のみならず、マイカーや家庭用エネルギ  ーなどの民生部門においても、想像できないような厳しい負担になるのは目に見えており、憂慮せざるを得ない。罰則規定の具体化が先送りされたのは評価できるが、いずれ強制措置を伴うことになれば、急激な産業の空洞化とそれに伴う失業の急増、さらにコスト高を通じて、その影響が国民生活全般に及ぶことを覚悟しなければならない。

3.わが国としては、引き続き米国の参加の道を模索しつつ、一方では広く国民に向けてこの問題の大きさ、難しさを訴え、国を挙げて取り組む姿勢が求められる。もとより温室効果ガスの排出量を抑制していくべきなのは言うまでもない。産業界としては、これまでも相当の努力を重ねてきてはいるが、さらなる削減努力を惜しむつもりはない。政府においても、まずはこの協定の厳しさについて広く国民各層に十分に説明し、真の理解を求めた上で、国民の支持と協力を得て実行可能な方策をとるべきである。安易に規制や課税を強化したりするのは、政府が推進している構造改革の趣旨にも反することになるので、厳に慎むべきである。

以上