日銀短観について
東京商工会議所
先の7~9月期国民所得統計速報で日本経済は3四半期連続のプラス成長を記録し、景気は緩やかな回復基調にあるものの、今回の日銀短観も民需主導の自律的回復といえる状況にはないことを示している。製造業を中心とした設備投資とIT(情報技術)関連投資が牽引しているのは確かだが、非製造業の業況判断指数が悪化し、中小企業では先行き予測値も悪化の見通しである。個人消費は依然低迷したままであり、失業率にも改善がみられない。いまのデフレ不況が、国民の将来への不安が解消されないことに起因しているのは明らかである。難しい局面ではあるが、あらためて国民に明るい将来ビジョンを示すことが政治の役割であり、特に内閣機能を強化した新体制の下での森首相の最大のつとめである。
当面は、先に成立した補正予算を速やかに執行することがまず求められるが、息切れを回避するためには、来年度予算編成にも景気に対する相当の配慮が必要になるだろう。大事なのは、あくまでも景気の自律的回復を最優先課題とし、拙速に国民負担を求めない姿勢である。