政策提言・要望

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長期低排出発展戦略への意見

2018年11月16日
東京商工会議所
産業政策第二部

 東京商工会議所(三村明夫会頭)は日本商工会議所とともに、「長期低排出発展戦略」に対する意見をとりまとめ、11月16日に公表しました。

「長期低排出発展戦略」に対する商工会議所意見 について

 東京商工会議所(三村明夫会頭)は、政府が8月から「長期低排出発展戦略」策定に向けて「パリ協定長期成長戦略懇談会」(以下、懇談会)を設置し議論を行っていることを受け、標記意見を取りまとめましたので、お知らせします。なお、本意見は11月7日開催の東京商工会議所第711回常議員会にて決議し、本日公表するものです。
 「長期低排出発展戦略」(以下、長期戦略)は、長期的な温室効果ガス低排出型の発展を目指すための取り組みの方向性をまとめるもので、わが国を含むすべてのパリ協定締約国が2020年までに国連へ提出するよう招請されています。日本は、「地球温暖化対策計画」(2016年5月閣議決定)で、長期的目標として、2050年までに80%の温室効果ガス排出削減を目指すことを掲げています。
 当所は従前より、2050年を見据え「経済成長・環境・安定供給の統合的向上」を念頭に置いた施策の検討・実行を要望しており、本意見は、引き続きこの考え方を基礎として作成したものです。意見の概要は以下の通りです。
1.商工会議所が描く2050年のビジョン
 世界全体の温室効果ガス排出量大幅削減のためには、日本が持続可能な低炭素化を図るための革新的イノベーションを牽引することが必要。そのためには、イノベーションを起こす基盤である日本の産業、その大宗を占める中小企業が元気であることが重要。
 地球温暖化対策とエネルギー政策は表裏一体であることから、「3E+S」を前提とする。
2.商工会議所が考える長期ビジョン策定の視点と施策の方向性
(1)経済と環境の両立
 日本国内のみではなく地球全体のCO2排出量低減が重要。現在も見られるわが国から他国への技術供与を今後も持続的に促進するため、その基盤となる国内経済活性化が必須。
(2)エネルギーセキュリティ・経済性維持向上のための高効率・低炭素型石炭火力の活用
 多くの国が現在も石炭火力を選択している状況の下、世界的なエネルギーセキュリティ・経済性と低炭素化の両立実現のため、今後ともわが国が持つ高効率・低炭素な石炭火力発電技術を維持向上していくべき。
(3)イノベーション促進のためのエネルギーコスト削減や自主的取り組みへの支援強化
 イノベーションの源泉である中小企業の経営基盤を盤石にするため、現在も中小企業経営を圧迫している電力などエネルギーのコスト削減が必要であり、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の見直しはもとより、あらゆる施策を早急に講じるべき。
 イノベーションを起こす中小企業の自主的取り組みを後押しするため、規制強化ではなく、企業の自主性を促進するインセンティブの提供を産業支援の基本的考え方とすべき。
(4)安全性を確保したうえでの原子力発電の早期運転再開と新増設の議論の開始
 経済と環境を両立し、革新的イノベーションに結びつけるためには、コストに配慮して日本のエネルギーベストミックスを早期に回復させることが必要。特に、原子力発電は、安全性確保を前提として早期に運転再開させるとともに、2050年以降に向け一層の低炭素化促進のため、新型炉開発等の新技術開発も含めた新増設の議論を早急に開始すべき。
(5)低炭素化に必須である地方創生とCO2排出削減につながる強靭化
 低炭素化は全国ベースで進めるべきであり、地域経済の持続的発展のための地方創生とその担い手である地域中小企業の持続的成長、災害に対する強靭化に向けた取り組みが重要。
 中小企業による地域資源循環の創出、地域ごとに自立した分散型エネルギーとしての再生可能エネルギー導入促進により、地方創生と強靭化を推進することが低炭素化への道筋として必要。

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所
産業政策第二部
TEL 03-3283-7836