2024年8月26日更新
NEW 合同会社coma
所在地 | 東京都中野区中野5-68-8 ライオンズマンション中野第3 2F |
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代表者 | 岩田 秀宣 |
資本金 | 300万円 |
従業員数 | 3人 |
設立年 | 2021年 |
企業HP | https://hair-coma.com/ |
中野駅北口から徒歩4分ほど、中野通りに面したマンションの2階に和モダンをコンセプトとする美容室「coma」がある。オープン以来、統一された内装、こだわり抜いた「和の癒し空間」で落ち着きと安らぎを与える場を提供し、念入りなカウンセリングによりファンを増やしてきた。
同社のサイトに掲載のヘアスタイル写真では、モデルが能面を被るというユニークな「お面ヘアカタログ」がSNSで「バズった」ことも後押しとなって、着々とこのエリアでの存在感を高めてきた。オーナー兼美容師の岩田秀宣氏が、シェアサロン事業「ナカノシェアサロン」を仕掛けたのはコロナ禍の2021年。業界の競争は激しさを増し、リソースも限られる中、さまざまなアイデアと工夫で持続的な成長を目指している。
「完全個室型」のシェアサロンで競合と差別化
岩田氏は独立当時「自身の店舗を持たないフリーランスの美容師やネイリストなどを対象に、店舗の空いている席・個室といった設備を一時的に貸し出して事業活動の場を提供するシェアサロンや面貸しといったビジネスモデルがあったら」という願望があったことから、シェアサロン事業を立ち上げた。
「小規模な店舗であっても、一般的に開業資金として数百万円は必要です。店舗を構えるとなると、イメージ通りの物件がすぐに見つかるとは限らず、開業までの時間が長引くと機会損失の恐れがある。それなら準備が整うまでの期間を使って、経営について実践的に学んだり、実績を作ったりできる、そんな拠点があればいいんじゃないかと考えていました」と「ナカノシェアサロン」の運営を開始した。ここでは、水道光熱費やタオルの使用料を無料にするなど、創業間もない入居者のコスト削減もバックアップする。さらに「完全個室型」という付加価値によって競合との差別化を図り、入居者の確保を狙った。
シェアサロン事業において「シャンプー台付きのブースが4つと、シャンプー台なしのブースが2つ、合わせて6つの個室を設けています。美容師をはじめ、ヘッドスパ専門、まつ毛専門など、さまざまな美容関係の方に月極でお貸ししているのが大きな特徴です。完全個室型だからこそ、借主は24時間365日、自由に出入りできますから、早朝から長時間営業したい、深夜のお客さまにも対応したいなど、柔軟な使い方、働き方が可能です」と岩田氏。
「入居者ごとにお客さまの傾向や求める雰囲気なども違うでしょうから、完全個室型であれば周囲を気にすることなく利用できます。全室が個室型であることでお客様との信頼関係を築きやすいという点が、ナカノシェアサロンが同業他社との差別化を実現している最大の強みだと思います」と話す。
また、ブログでの効果的な情報発信に関するアドバイスなど、シェアサロン入居者のビジネスを軌道に乗せるためのサポートにも力を入れている。「入居者の皆さんにはそれぞれに強みがあり、ビジネスに対するスタンスも異なります。単なる貸主と借主という関係だけでなく、時には寄り添ってお話ししながら、Win-Winの関係性をつくっていくことを心がけています」と岩田氏。ビジネスサポートによって入居者の事業の安定・発展につながり、間接的にシェアサロンの売上も安定するという互恵関係が成り立っている。
価格転嫁と地域に根差した事業の多角化の試み
一方で、現状の課題も客観的に捉えている。シェアサロンは安定的な収入につながるが、売上の天井も見えやすいという側面がある。「最初から想定できていたことですが、美容師一人が1日に対応できるお客さまの数には、やはり限界があります。現状の枠組みにおいては、これから大幅に売上を伸ばしていくことは簡単ではないと思います」
こうした認識を踏まえつつ、売上維持・向上のためにさまざまな工夫を実行中だ。例えば美容室「coma」の価格設定においては、主に新規客に対するクーポンを見直し、事業環境の変化などに応じて徐々に価格を引き上げることで、水道光熱費やシャンプーなどのコストの上昇分を転嫁するように努めてきた。その反面、開業当時から通い続けているリピーター(固定客)に対しては「オープン当時の価格」で施術するなどの方針を掲げることで、新規客の過剰な参入を抑え、リピーターの確保を図っている。こうした取り組みの結果、現在は顧客層の約5分の4がリピーターで構成されており、事業売上の安定化に寄与している。
最後に今後について、「シェアサロンは一人で十分に管理可能だと分かりましたので、事業拡大の可能性も視野に入れています。独立したいが店舗を持つことは考えていない、そんな従業員が出てきた場合にシェアサロンの運営を委託するといった“独立支援”としての活用もあり得るでしょう」と話す岩田氏。
美容室とシェアサロンの運営の他、中野区の理容室グループ「Noc(ノック)」のメンバーとして、オリジナルシャンプーなどのプロデュースにも携わる。「適正な価格で良質なものを届けたい」との想いから始まったプロジェクトだ。さらに、中野駅近くで、温かみのある照明にバーカウンター席を備えたナチュラルワインバー「macchia(マッキア)」も経営する。「今後も状況を見極めながら、新しいことに取り組みたいですね」と岩田氏は語る。