会頭コメント

会頭コメント

平成22年年頭所感(東商新聞掲載)

2010年1月1日
東京商工会議所

平成22年の新春を迎え、謹んでお慶び申しあげます。

未来に向けた明確なビジョンの共有
 一昨年秋の米国金融危機に端を発した世界同時不況は、各国の共同歩調による金融政策や経済対策などにより、最悪期は脱しつつあります。一方、わが国経済は、徐々に持ち直してきてはいるものの自律性に乏しく、特に中小企業や地域経済はいまだ極めて厳しい状況が続いています。中国などの新興国の回復を背景に、輸出や生産に持ち直しの期待はあるものの、個人消費や設備投資などの内需は低迷しており、先行きはまだ楽観できません。
  また、IT化・ネットワーク化、価値観・ニーズの多様化といった時代の大きな潮流変化も顕著に表れる中、地球規模の温暖化の問題に加え、少子高齢化、財政再建、社会保障制度のあり方など、国内の構造的な課題をわが国は抱えております。
  このような状況下で、昨年わが国は、十数年ぶりの政権交代という大きな変革の決断をしました。東京都議会議員選挙においても、変革を求める都民の意思が色濃く反映される結果となりました。国民そして都民の根底にあるものは、社会の閉塞感や将来への危機感です。
  喫緊の課題は、雇用対策とともに、景気を自律的な回復軌道にのせるために、内外需一体の経済成長を実現する政策を着実かつ機動的に実行することです。また、将来展望が開け、活気に満ちた社会を構築するために、これからの国の姿がしっかり示されなければなりません。明確なビジョンを共有することが、国民の愁眉を開き、活力あふれる明るい未来の実現に向けた大きな推進力になります。
  東京商工会議所は本年、中長期ビジョン「企業の力を未来へむすぶ」のアクションプランを遂行する2年目に入ります。力強い経済成長に向けたイノベーションを会員の皆様とともに推進するために、中長期ビジョンの重点課題である「中堅・中小企業の活性化と経営革新」、「世界都市・東京の実現」、「持続可能な経済社会システムの構築」に取り組みます。国家の富を創造する企業こそ国家の創造の担い手とならなければならないという気概を持って活動したいと思います。

「科学技術創造立国」で持続可能な発展を
 新興国が台頭する中、日本が「世界第2位の経済大国」というアイデンティティーを持てた20世紀は既に過去のものとなりました。21世紀は、量や規模ではなく、心の豊かさや質を追い求める時代と言えます。
  日本が持続可能な経済発展を遂げていくためには、環境問題の解決とともに生産性を向上させ、人や社会に新しい価値を提供していかなければなりません。日本の強みは、これまで世界に先駆けて多くの優れた独創的な技術とそれを生み出してきた高度な「人財」です。日本はその強みで勝負し、世界一の「科学技術創造立国」を目指すという明確な方向性を打ち出し、官民一体でこれに取り組むべきだと思います。
  東京商工会議所は、科学技術創造立国を目指し、人財育成、環境対策、中小企業の生産性向上などの支援に取り組みます。

世界都市・東京をめざして

アジア諸都市の成長を背景に、国際的な都市間競争は激化する状況にあります。
  世界都市・東京を実現するために、インフラ整備から都市型産業・観光ビジネス、地球環境問題への対応まで幅広い視点から、新たな「世界都市・東京ビジョン」の検討・策定を進めてまいります。
  また、都内の各地域が個性豊かで元気で、そして持続可能な社会基盤とならなければ、個が光ることはできません。本部・支部が一体となり、地域社会の中核的なコーディネーター役としての機能を発揮して、各々の特性を生かした地域振興の推進に取り組んでいく所存です。

中小企業と大企業のパートナーシップによる価値観の共有を

 中小企業の発展がなければ日本経済の成長もありえません。企業の自助努力だけでは克服することが困難な厳しい経営環境の中、果敢にチャレンジする中小企業の活力を引き出すために、これからも政府や東京都に対して、中小企業対策、税制など、諸施策の実行を強く要望してまいります。
  一方で、経営環境が激変する中で、企業は自らのイノベーションを実践し、経営者と従業員がビジョンを共有し生産性の向上に取り組まなければなりません。また、機動性と柔軟性に富む中小企業が、新たな産業分野へ挑戦することは最大の武器になります。その一方で、中小企業と大企業が消費者に支持される良質な商品・サービスを提供するという価値観を共有し、積極的にパートナーシップを組んでいくことも大切です。
  また、経済のグローバル化が進展する中、これからは中小企業も積極的に海外ビジネスに取り組むことが求められます。東京商工会議所は、中小企業の海外進出や海外取引の支援のために、海外ビジネス情報の提供や相談機能を拡充・強化いたします。

役員・議員改選と組織基盤の強化

 本年は役員・議員改選の年になります。組織運営については、PDCA(Plan-Do-Check-Action)を意識し、現体制での活動を評価した上で、総仕上げの年とするとともに、役員・議員改選を契機に組織基盤を強化し、諸活動を一層活発化させます。政策実現力強化に向け、国会議員や東京都議会議員との強固なパイプづくり等に取り組むとともに、経営支援力強化のために、会員企業の特性やニーズにあわせた事業提案とPRを展開いたします。

 以上、年頭にあたり所感の一端を申し述べました。力強い経済成長に向けたイノベーションを推進するため、全力で努力してまいります。会員の皆様には、一層のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。

以上