羽田空港再拡張事業への一般財源の重点的投入について
東京商工会議所
羽田空港再拡張事業は、昨年8月、都市再生本部の都市再生プロジェクト(第二次決定)で、「国際化を視野に入れつつ羽田空港の再拡張に早急に着手し4本目の滑走路を整備する」ことが決定され、さらに今年6月、経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002が閣議決定され、その中で、「財源について関係府省で見通しをつけた上で、国土交通省は、羽田空港を再拡張し、2000年代後半までに国際定期便の就航を図る」とされている。
また、さる8月23日に発表された国土交通省交通政策審議会航空分科会中間とりまとめにおいては、大都市圏拠点空港整備はわが国の国際競争力の向上や経済発展に大きく寄与することとなる必須の公共事業であり、一般財源の大幅な重点的配分を行う必要がある、との認識が示されている。
東京商工会議所は、こうした考えを高く評価するとともに、特に羽田空港再拡張事業の財源確保について、下記のとおり意見を述べる。
提言要望
記
言うまでもなく、航空輸送は今や国民生活や産業活動に欠かせない存在である(注1)。わが国の国内、国際航空需要のうち、6割以上は羽田、成田の両空港が担っている(注2)が、その空港容量は恒常的に不足している。
これに対し、先に述べた航空分科会中間とりまとめにおいては、成田の容量拡大、機能拡充と並び、羽田の再拡張が国の喫緊の課題として取り上げられている。羽田再拡張後は処理能力が現在の発着回数年27.5万回から年40.7万回へと約1.5倍になると試算されており、これにより国内線の拠点空港である羽田と地方を結ぶ航空ネットワーク拡充が実現され、地方都市の利便性が向上する。すなわち、羽田再拡張は東京圏のみならず地方を含む日本経済全体の活性化に貢献する事業であり、その経済波及効果(11年間)は推定約8.4兆円、雇用創出効果は71万人と試算されている。
(注1) わが国の航空利用旅客は、国内線9,200万人、国際線5,300万人、合計1億4,500万人(2000年度)にのぼっている。また、航空貨物も、貿易総額に占める比率が、輸出入ともに全体の30パーセント強を占めている。(2001年)。
(注2) うち羽田は、年間の「旅客数」で世界第6位にあたる5,640万人(2000年)が利用している。また、国内線路線別輸送実績上位15路線のうち、「旅客」で12路線、「貨物」で8路線が羽田と各地を結ぶ路線で占められており、特に「旅客」トップの羽田=札幌線は898万人の利用があり、世界一の路線である(2000年度)。
加えて、近年、アジア諸国ではクアラルンプール国際空港('98年)、香港国際空港('98年)、上海・浦東国際空港('99年)、ソウル・仁川国際空港(2001年)等の巨大な国際空港の開港が相次ぎ、今後も拡張計画が予定されている。したがって、今後とも伸びが期待されるわが国国際線需要に応えるとともに、隣接するアジア諸国との熾烈な国際競争に打ち勝つため、国際拠点空港である成田の本格的平行滑走路の早期完成に加え、首都・東京の空の玄関口である羽田の国際化を再拡張により早急に実現する必要がある。これにより、わが国全体の国際都市間競争力の強化が期待される。
このように、羽田再拡張事業は、わが国の重点的社会資本整備として、重要性・緊急性の非常に高いプロジェクトである一方、8,000億円とも言われる多額の費用を要する事業でもあり、整備財源の確保が課題とされている。
これまでの空港整備の大部分は、空港整備特別会計(今年度予算4,577億円)で賄われてきたが、このうち純粋一般財源は、予算額の約12%(544億円)、国の公共事業関係費全体のわずか1パーセントにも満たない額にとどまっている。現在進行中の羽田沖合展開事業においても、事業費1兆5,000億円の大部分が利用者負担である空港使用料と、財政投融資という政府からの借入金で賄われており、純粋一般財源の投入はほとんどなされていない。そのため、空港整備特別会計における借入残高は約1兆円、今年度の元利金負担は約1,000億円にのぼり、今後も厳しい借入金返済を余儀なくされている。
一方、わが国の着陸料の国際比較(国内線)で、羽田空港(幹線)は、欧米主要空港(ニューヨークのニューアーク空港、パリのシャルル・ド・ゴール空港)の約2倍、隣国のソウル・金浦空港の約10倍(2001年)の水準に達している。こうした世界に突出して高い空港使用料(利用者負担)の引き下げを通じ、わが国の航空交通インフラ利用に係るコストを低減させ、わが国産業の国際競争力強化、経済の再活性化を図ることこそ、今後の空港政策における最重要課題と認識すべきである。
以上を踏まえ、羽田再拡張の整備財源の確保にあたっては、以下の点を要望する。
1. 羽田再拡張が、わが国の国際競争力を強化し、東京圏のみならず地方を含む日本経済全体の活性化に貢献する事業であることに鑑み、国の一般財源の投入を大幅に拡大すること。
2. 国家財政が逼迫する中、公共事業関係費は来年度も削減目標が設定され厳しい状況にあるが、空港整備への大胆な使途の組み替えを行うこと。
東京商工会議所