政策提言・要望

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提言「共生時代における首都圏の空港整備のあり方」について

2003年2月28日
東京商工会議所

はじめに

 航空ネットワークの優劣が国や地域の経済・社会の発展や国際競争力に大きな影響を及ぼしている今日、近隣各国とも国策として、首都や大都市の中心地近くに利便性の高い巨大な国際ハブ空港の整備を急いでいる。これに対して、わが国では、空港整備・運営にあたっての戦略的グランドデザインの欠如、道路整備等の公共事業に比べ極めて少ない財政措置、さらには行政改革の遅れのため、とりわけ首都圏における空港整備は大きく立ち遅れている。特に都心に近い羽田空港の容量不足と国際化の遅れは、東京の魅力低下の一因となっており、グローバル企業の東京離れ・日本離れも引き起こしている。
 したがって、羽田空港の再拡張と国際化、ならびに成田空港暫定平行滑走路の2,500メートル化は、空港周辺地域に大きな利益をもたらすばかりでなく、首都圏ひいては地方を含むわが国経済全体の活性化や、近隣諸国大都市との国際競争力の回復・向上に大きく寄与するものであり、一日も早く実現させる必要がある。
 一方、羽田・成田両空港は共に、現在複数の滑走路を持ちながら、飛行空域や騒音問題等に起因した種々の規制が存在することから、空港が本来持っている発着処理能力について制約を受けており、航空便に遅延が生じるなど旅客利便が阻害されている。近年の急速な技術革新により航空機の低騒音化が進展し、騒音を抑制する運航方式の普及などとも相まって、騒音レベルは大幅に低減されていることから、こうした規制を緩和し、空港容量の増加や遅延の防止を順次図っていく必要がある。
 いまや、航空旅客は年間1億5千万人にも達しており、航空はかつての「航空輸送は一部の高所得者層が利用するもの」から、国民の足として欠かせない存在となっている。また、航空貨物もわが国の貿易総額において輸出入とも3割を超えるまでになっており、空港・航空ネットワークがわが国の社会・経済の維持発展、ならびに国際交流の促進に必要不可欠な国民共通の貴重な財産になっているだけではなく、空港周辺地域のまちづくりにも大きな役割を果たしている。こうしたことを踏まえ、地域においても空港と共生し、その機能を積極的に活かした暮らしやまちづくりを考えていくといった観点からも、首都圏の空港整備のあり方について議論を行うことが重要である。
  東京商工会議所は、既に昨年9月、「羽田空港再拡張事業への一般財源の重点的投入について」を発表し、同事業への国の一般財源投入の大幅な拡大を要望したところであるが、今般改めて、東京再生のため、『共生時代』、すなわち、 空港機能の向上・活用を通じて、「環境」、「都市機能」、「地域振興」、「国際交流」、「国際競争力」という課題すべてと調和し共存していくという観点から、首都圏の空港整備のあり方について、下記の通り提言する。

提言



1.羽田空港再拡張と国際化ならびに成田空港暫定滑走路延長の早期実現

(1)羽田空港再拡張(発着回数27.5万回⇒40.7万回)

(2)成田空港暫定平行滑走路の2,500メートル化と処理能力の拡大(発着回数20万回⇒22万回、地元の理解が得られれば物理的には更なる拡大が可能)


2.空港容量拡大のための規制緩和と運用の改善
 
(1)「空の道」の整備
 羽田・成田両空港容量の抜本的拡大には、上述1.の空港そのものの拡充・整備の他、横田空域の返還と関東空域(羽田・成田・百里・横田)再編による広域管制の実現、飛行経路の複線化等、「空の道」の整備が必要である。こうした施策は、円滑な航空交通の確保のためにも不可欠である。

(2)羽田空港北側空域活用の拡大
 空港周辺地域の住民等の理解を得ながら、環境アセス基準内での羽田空港北側空域活用による発着回数の拡大を図るべきである。
 ①ハミングバード(羽田空港北側への離陸)の拡大
  ・ 旅客需要が高く、出発便が集中する朝の混雑時間帯を中心に増便が可能になり、旅客利便が向上する。
 ②ノースバード(羽田空港北側からの着陸)の導入
  ・ 現在乗り入れが認められていないコミューター機の就航が可能となり、需要の少ない地域との路線開設が促進され、旅客利便が向上する。
 
(3)高速離脱誘導路の活用
 航空機が着陸した後、すみやかに滑走路から離脱することができれば、その分滑走路の処理能力が増し、単位時間あたりの到着便数を増やすことが可能となる。そのためには高速離脱用の誘導路の数、配置を最適なものとすること、誘導路の形状を工夫すること、管制官とパイロットが協力して迅速な離脱を実施すること等が求められる。
 
 3.羽田・成田・都心の相互間交通アクセスの整備

(1) 首都圏の旺盛な国内・国際航空需要に対しては、羽田・成田各空港単独では対応できず、両空港の一体的活用が不可欠である。このため、羽田・成田・都心相互間のトライアングル交通アクセスを一層拡充することによって所要時間を短縮し、利用者利便を高めることが重要である。現在、計画・検討が行われている以下の各事業について、完成予定年度が明示されているものは可能な限り前倒しするとともに、完成年次が未確定なものに ついては、早急に事業計画を確定し、遅くとも羽田空港再拡張完成時までに供用が必要と考える。

【鉄 道】
①成田空港の利便性向上
 ・ 日暮里・成田空港間を30分台で結ぶ成田新高速鉄道整備(2010年開業予定)
②羽田⇔都心・横浜方面間の利便性向上
 ・京急蒲田駅改良(2012年度完成予定)
 ・JR・東急蒲田駅と京急蒲田駅間の整備
③羽田・成田⇔東京駅間と羽田⇔成田間の利便性向上
 ・都営地下鉄浅草線の東京駅接着と追い抜き線整備
④羽田⇔都心間の利便性向上
 ・東京モノレールの浜松町駅から東京駅方面への延伸構想

【道 路】
①成田から都心へ向かう首都高速道路の渋滞ポイントの解消
 ・新木場・辰巳ジャンクション間改良(2004年度完成予定)
 ・箱崎・両国ジャンクション間改良(関係機関と調整中)
②都心⇔羽田空港間の所要時間短縮
 ・首都高速中央環状道路新宿線(2006年度完成予定)と同品川線の整備
③東北道・常磐道から成田空港への所要時間短縮
 ・外かく環状道路湾岸部・常磐道区間の整備(2009年度完成予定)
④東北道・常磐道から成田空港への所要時間短縮と首都高速湾岸線・京葉道路の交通量分散
 ・北千葉道路の整備

(2)東京商工会議所として新たに提案する事業
【鉄 道】
 成田新高速鉄道への乗り換え利便向上
 ・JR宇都宮線・高崎線と東海道線の相互乗り入れ開始(2009年度予定)に伴う日暮里駅への停車

【道 路】
 成田⇔神奈川間の交通量分散による交通渋滞の緩和
 ・通行料金低減による東京湾アクアラインの利用促進

4.「魅力ある都市づくり」に向けた航空法の見直し

 現在、内閣府の「総合規制改革会議」や国土交通省の「制限表面の見直しに関する調査検討委員会」においても検討が進められているが、航空機運航の安全性等を確保しつつ、貴重な臨海部・都心部の土地の有効活用を促進し、都市景観にも配慮した魅力的な「都市づくり」を推進するため、諸外国の例も踏まえつつ、必要な航空法の見直しを図るべきである。


(1)航空法の高さ規制対象範囲の見直し
(2)高層ビルのライトアップを可能にする視覚援助施設(航空障害灯)設置基準の見直し

5.羽田空港再拡張事業の費用と負担のあり方

(1)最良のコストパフォーマンスの追求
 羽田空港再拡張事業完成後における空港施設の利便性・快適性・安全性の向上、あるいは、国際線・国内線相互の乗り継ぎや搭乗・出入国手続きに掛かる所要時間の短縮など、良質なサービス提供と効率的で低廉な運営・メンテナンスシステム構築のため、設計・造成時から最良のコストパフォーマンスを追求すべきである。

(2)一般財源の重点的投入
 昨年12月の交通政策審議会航空分科会の答申も指摘しているように、日本においては、空港整備が「これまで利用者負担を中心に賄われてきた」結果、空港の着陸料は世界一高い水準となっている。
 したがって、今以上の利用者負担増を行うべきではなく、東京商工会議所が昨年9月に公表した要望「羽田空港再拡張事業への一般財源の重点的投入について」においても述べているように、公共事業関係費の空港整備への大胆な使途組み替えにより、国の純粋一般財源の投入を大幅に拡大すべきである。

(3)羽田再拡張事業費用に対する地元負担について
 羽田空港再拡張事業費用の地方負担について、先述の交通政策審議会航空分科会答申においては、「羽田空港の再拡張事業は、周辺地域に大きな利益をもたらすこと、さらに、再拡張後の余裕枠の活用による国際定期便の就航により、周辺地域に更に大きな利益をもたらすこと等に鑑み、地方負担を導入する方向で検討する必要がある」と明記された。
 これに対し、首都圏の関係自治体は、羽田空港は国が設置・管理する第 1種空港であり、再拡張事業は全国的な航空ネットワークの拠点である羽田の容量を大幅に増加させ、わが国全体に便益を及ぼすものであることから、国家政策として国の負担と責任において整備されることが当然であるとして、地方負担の導入に反対している。
 東京商工会議所としては、こうした財源問題議論の長期化により再拡張実現時期が遅延することのないよう、一刻も早い事業着手へ向けた関係者の努力を切に望む。

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所