政策提言・要望

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中小企業施策に関する要望~民間主導の経済再生を促すための「政策パッケージ」の提案~

平成14年6月13日
東京商工会議所

金融システム不安を超えて~中小企業の金融環境整備に万全を
日本銀行による継続的な金融の量的緩和策にもかかわらず、企業の資金繰りや金融機関の貸出し態度に関する判断指数は悪化を続けており、97-98年当時の金融危機以来の深刻な水準に達している。
企業・事業金融は完全な収縮状況にあり、中小企業の資金調達環境は厳しさを増していることから、当面は政府系金融機関が果たす役割を重視し、セーフティネット機能を拡充・強化すべきである。
デフレスパイラルを超えて~今こそ、需要喚起型の政策運営を本年1-3月期のGDPはプラス成長を記録するなど景気底入れを裏付ける結果となったものの、デフレスパイラルの危機から脱却できたとは言い難く、依然多くの中小企業は、受注減少、販売価格低下による収益力劣化の渦中にある。
現下の緊縮財政路線は総じて需要不足を深刻化させているため、抜本的な税制改正や規制改革による新たな市場の創出、都市再生に資する公共事業の推進など、国内需要を喚起する経済・財政運営が必要である。
産業空洞化を超えて~中小企業の活力強化に全力を
こうした状況下にあって、中小企業の将来不安を増幅させているのが、中国をはじめとするアジア諸国の台頭とグローバリゼーションの進展によって直面している産業空洞化問題である。
政府は、製造業振興に関するビジョンの中で中小企業の役割を明示するほか、企業の活力強化と地域経済の活性化を促すため、中小企業関連支出を飛躍的に拡大(総額1兆円規模に)すべきである。

現在、わが国は、経済再生と国家間競争での勝ち残りを賭けた重要な局面に立っており、民間主導の自律的経済成長を実現するため、総力をあげてあらゆる政策を早期に講じるべきである。
この際、既述のような認識の下、中小企業関連施策について以下のとおり要望するので、趣旨をご賢察のうえ、特段の配慮を賜りたい。

 記

Ⅰ.金融システム不安を超えて~中小企業の金融環境整備のために
<概況>
・日本銀行による金融の量的緩和政策(「消費者物価指数の上昇率が安定的に、ゼロ%になるまで金融緩和を続ける」)も、金融機関による金融仲介機能の低下で企業への資金流入は緩慢
・民間金融機関による中小企業向け貸出の減少が著しい反面、政府系金融機関の貸出 比率は増加傾向
・昨年の中小企業の倒産件数は史上3番目、全企業の倒産件数は史上2番目、上場企 業の倒産は過去最多(民間調べ)、金融機関の破綻もペイオフ解禁を目前に頻発
・緊急経営安定対応(セーフティネット)保証制度および同貸付制度の利用者は増加傾  向

1.中小企業の資金調達円滑化への支援
(1)政府系金融機関によるセーフティネットの拡充
政府は、特殊法人改革の一環として政府系金融機関の整理・統合、民営化等について年内に一定の結論を得る意向であるが、現下の中小企業の厳しい金融環境に鑑みるに、その議論を凍結すべきである。
また、抜本的な不良債権処理の遅れや資産デフレの進行等に景気の長期的な低迷が複合的に作用し、民間金融機関による金融仲介機能は著しく低下しており、早期の回復は期待できない状況にある。
したがって、当面は、政府系金融機関による緊急経営安定対応貸付制度等、セーフティネット機能の拡充に万全を期すべきであり、とりわけ、手形割引機能を含む短期運転資金に対する中小企業の需要は堅調であるので、強化すべきである。
(2)新たな無担保・無保証人制度融資の創設
健全な中小企業の経営維持が可能となるよう、代表的な中小企業専門金融機関である信用金庫・信用組合等による無担保・無保証人による融資制度を新たに創設されたい。
その際、上記制度の融資限度額は5,000万円程度、公的保証制度は融資額に応じて50%~80%まで弾力的に適用できるものとし、金融機関にもリスク負担を求めるものとされたい。
(3)信用補完制度の拡充・強化
企業倒産による事業活動の制限や取引金融機関の破綻等、経済的環境変化も激しく経営の安定に支障を生じている中小企業も増加傾向にある。
ついては、保証決定までの審査期間の短縮化を含め緊急経営安定対応保証制度等、セーフティネット機能の充実が不可欠であるので、審査陣容の強化を図るとともに、中小企業総合事業団および信用保証協会の経営基盤強化にいっそう配慮されたい。
また、中小企業金融安定化特別保証制度等の利用者による返済条件の変更については、平成12年12月の「保証制度に係る既往債務の条件変更」ガイドラインに基づき対応がなされているが、返済期間の延長や金利負担の軽減等、引き続き弾力的に行なわれたい。
さらに、本年2月の「緊急に取り組むべきデフレ対応策」によって、中小企業経営支援資金、中小企業運転資金円滑化資金において売上高減少要件が緩和、金融環境変化対応資金の貸付対象に民間金融機関から手形割引を拒絶された場合が追加されたほか、商工組合中央金庫による金融環境変化対応資金の対象者に別枠3,000万円まで無担保で貸付けを可能とする措置が3月に創設されたが、その趣旨を徹底のうえ、円滑に運用されたい。
(4)売掛債権担保融資保証制度の普及・定着
昨年創設された同制度は、要件の厳しさや取引契約書にある債権譲渡を禁止する特約の存在等から、普及・定着が今一歩進んでいない。
本商工会議所においても、譲渡禁止特約の解除または部分解除を広く呼びかけているところであるが、政府におかれても、官公需取引において必要な措置を講じるよう官公庁や地方公共団体等に引き続き要請されるほか、同制度普及のためいっそう周知に努められたい。
また、今般、事務取扱要領が改正され、①根保証における第三債務者数について原則として2先以上から信用力が高いものと認められた場合は1先でも取り扱う、②継続取引要件について原則3年以上から1年以上を目安とする、③譲渡担保債権の状況を所定様式により金融機関に対し毎月報告する義務を金融機関の判断により省略できる、とされたが今後も手続きの簡素化に尽力されたい。
(5)小企業等経営改善資金(マル経融資)の拡充
同融資制度は、恒久化を図るとともに、融資限度額を1,000万円まで引き上げられたい。また、融資対象となる小企業の従業員規模については、とりわけサービス業の人数要件の緩和を検討されたい。
さらに融資要件となっている経営指導員による小企業への経営指導期間については、事後指導の徹底を図ったうえで、原則6カ月以上となっている現行制度の短縮化を検討されたい。
(6)金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編の実効性確保
本商工会議所は、かねてより金融庁による金融機関への検査に際しての債務者区分の判断にあたっては、査定基準を機械的・画一的に当てはめるのではなく、借り手中小・零細企業の経営実態に即して行なうよう要望してきたところである。
今般、政府の総合デフレ対策の一環として、今般、同マニュアルの別冊として中小企業融資編が作成、公表されたが、運用にあたっては、中小企業の資金調達環境の改善に資するよう配慮されたい。
この際、すでにパブリックコメント等を通じ要望しているところであるが、① 債務者区分に関する検証ポイントに「要管理先」の既述がないので、判断基準を明確にしたうえで独立した区分とすること、②貸出条件を緩和した債権については、事後に返済が遅滞なく行なわれている場合には「要管理先」扱いとしないこと等、改善を図られたい。
(7)コミットメントライン(特定融資枠)契約の借主範囲の拡大
銀行に手数料を支払う代りに設定枠内で自由に借入れできるコミットメントライン(特定融資枠)契約における借主範囲が昨年から拡大された。
ついては、資本金額(現行3億円以上)および負債総額(200億円以上)を見直し、中小企業においても利用できるよう配慮されたい。
(8)信用リスクデータベースの活用促進
非公開中小企業に関しても、デフォルト(債務不履行)に係るデータの蓄積・共有が急速に進み、すでに一部の金融機関ではリスク評価の実用にも供され始めている。
こうした中小企業に関する信用リスクデータベースとして、信用保証協会を中心としたCRD(Credit・Risk・Database)と地方銀行を中心としたRDB(日本リスク・データ・バンク)があるが、いすれのデータベースも中小企業のデフォルトデータを十分量蓄積・共有する貴重なインフラであることから、中小企業金融の最大の課題である物的担保に偏重した融資状況を是正するためにも、金融機関におけるこうしたデータベースの積極的な活用を促進されたい。
また、こうしたデータベースの積極的な活用促進に際しては、借り手のリスクに見合った金利設定による迅速な無担保融資や中小企業向け貸出債権の流動化・証券化といった金融手法の多様化・拡大にも尽力されたい。

2.直接金融市場へのアクセス整備
(1)特定社債(私募債)保証制度の適債要件の緩和
同制度の適債基準は、本年4月より純資産額について5億円以上から3億円以上に緩和されたものの、財務上の要件の中にはむしろ厳格になったもの(自己資本比率、使用総資本事業利益率)もあり、利用できる企業が限定されることが懸念される。
現状、同制度は、中小企業にとって最も身近な直接金融市場へのアクセス手段であるので、いっそうの普及・定着のため、財務上の適債要件の緩和や保証料率の低下を検討されたい。
(2)ABCPの普及
企業が保有する売掛債権を裏付資産として発行するABCP(Asset・Backed・CP)は、短期の資金調達手段として注目を集めおり、近年、発行規模が増加している。
今後、こうした調達手段を中小企業に普及していくためには、複数の企業が保有する小口債権を束ねる証券化業務の標準化、売掛債権譲渡に係る法的整備、投資家に対する正確な企業情報の提供などが不可欠となるので、所要の環境整備に尽力されたい。
(3)CRDの活用による直接金融市場へのアクセス整備
CRD運営協議会は、参加機関より取引先中小企業の財務データやデフォルトデータ等を匿名で収集、全国規模のデータベースを構築し、信用リスク定量化に資する各種サービスを参加機関に提供している。
これにより金融機関がCRDを用い個別企業の与信リスク評価を適正に行なうことで、企業・事業融資における物的担保や保証人偏重からの脱皮に寄与するものと期待されることから、いっそうのデータの充実に努められたい。
また、今後、中小企業がより有利な資金調達を図るためには、信用リスクの定量化が可能なデータベースにおいて、自らが財務情報などのデータを開示していくことが効果的である。
ついては、同協議会においては、CRDのデータの匿名性に関する制約を緩和するなど、中小企業が直接金融市場にアクセスできるための環境づくりに尽力されたい。
(4)会計制度改革への対応と情報開示の推進
中小企業向け直接金融市場が徐々に拡大するのに伴い、中小企業向にとっても投資家に対する経営情報の提供やディスクロージャーの推進が経営課題の一つとなっている。
この際、新たな会計制度に中小企業が円滑に対応できるよう、制度改革についての情報提供に努めるほか、地域中小企業支援センターが行なう新会計制度に関するセミナー等には財政支援を講じられたい。

3.円滑な企業・事業再生の促進
(1)破産時における個人資産の一定量の確保
経営者の経済的再起・再起業等の再チャレンジや企業・事業の再生を促進するための環境整備の一つとして、個人破産の場合に破産財団を構成しない自由財産を大幅に拡張することは、緊急性の高い課題であり、以下のような所要の策を講じるべきである。
①自由財産の拡大
中小企業経営者が企業融資の連帯保証債務を主たる原因として個人破産に至った場合および個人事業主が個人破産に至った場合、免責が相当であることの一応の疎明があること等を条件に、少なくとも500万円までの金融資産については、これを自由財産とすべきと考える。
② 持ち家についての配慮
持ち家については、土地建物面積等の合理的な制限の下、抵当権など直接の担保権が設定されている場合を除き、破産財団から除外されるようにすべきである。また、企業・事業破綻時の中小企業企業経営者に対しては、従前における納税等の一定要件が満たされることを前提に、公営住宅の提供など住環境等について配慮すべきである。
③差押禁止債権の範囲について
民事執行法におけるについても、現行の法解釈運用を改め、取締役の報酬債権に対しても認めるべきである。また、保証債務に基づき差押さえがなされる場合には、差押禁止債権である現行の1カ月の必要生計費の額(21万円)について昭和55年以降改正されておらず現在の物価水準にそぐわないことから増額すべきである。
(2)破産法における労働債権ならびに一般債権と租税債権の順位について
企業倒産が増加傾向にある中、倒産した中小企業の被雇用者の失業中の生活水準は適切に確保されるべきであり、また同時に、売掛金等に経営の多くを依存している中小企業の一般債権が倒産処理の中で優遇されるべきである。
現在、企業経営が破綻した場合、租税債権が支払いにおいて最も優先されているが、先の理由から、従業員の未払い賃金ならびに退職金等労働債権および取引先である中小企業が有する500万円以下の一般債権が最も優先される法制度に改められたい。
(3)DIPファイナンスの活用
民事再生法および会社更生法が適用され健全な再生計画に基づき再建手続きを行なっている企業に対しては、円滑な再生を促進する観点からDIP(debtor‐in‐possession:占有を継続する債務者)ファイナンスが活用されることが望ましい。
とりわけ取引先企業が限定される中小企業においては、運転資金が不足することが想定されるので、政府系金融機関(日本政策投資銀行、商工組合中央金庫、中小企業金融公庫)が取扱う同融資制度への補給金等、十分な予算措置を図られたい。
(4)M&A等の活用
M&A(Mergers&Acquisitions)が増加傾向にある中、外国企業による対日直接投資を促進するため、中小企業に対してM&A関連法規の周知を徹底するとともに、株式交換制度を見直し、海外にある企業の株式を直接交換に用いることが可能となるようにされたい。
また、MBO(Management・Buy-Out)も企業・事業再生の有力な手法であるので、中小企業に対して、これらに係る法務・税務の周知に努められたい。

Ⅱ.デフレスパイラルを超えて~企業の活力強化と競争環境の整備のために
<概況>
・ 実質国内総生産(GDP)は2年連続のマイナス成長
・ 消費者物価指数の低下は4年連続、前年度比0.8%の下落幅は過去最大
・ 土地の路線価格の低下は11年連続
・ 政府は本年2月27日に「早急に取り組むべきデフレ対応策」を発表
・ アジア向け輸出や生産の好転、個人消費の底堅さなどから、政府は五月の月例経済   報告で「景気底入れ」を宣言
・ 本年1-3月期のGDPは4四半期ぶりにプラス成長を記録
・ 同期の法人企業統計の設備投資は、前年同期比マイナス16.8%
1.活力を重視した中小企業関連税制の拡充

(1)デフレ克服のための緊急特別措置
デフレ克服のためには、潜在的な消費や投資意欲を喚起することが肝要であり、以下のような緊急措置を講じられたい。
証券市場活性化策として、①株式譲渡益に対する非課税措置、②譲渡損失について勤労所得など他の所得との損益通算および3年間の適用期間内での繰越控除を認める。
住宅・土地市場活性化策として、住宅資金贈与に係る贈与税の特例措置を拡充し、非課税限度額を平均住宅取得額に相当する3,000万円程度に引き上げる。
自動車市場活性化策として、①低公害車・ハイブリット車に係る自動車取得税非課税措置、②低公害車・ハイブリット車以外の車両に係る自動車取得税の5割減額措置を講じる。
成長産業分野投資および高度情報化投資活性化策として、①新たな研究施設・設備に対する加速度償却または即時償却の特例、②新たな試験研究費に対する一定率の税額控除特例、③情報インフラ整備に係るハードウエアに対する加速度償却または即時償却の特例、④外部発注および自社開発(販売用を除く)ソフトウエアに対する一定率の税額控除特例を講じる。
(2)法人事業税への外形標準課税導入の反対
総務省が提案している賃金等の付加価値等を課税標準とする外形標準課税は、企業の雇用や投資に抑制的に作用し、経済活力を削ぐものである。
また、付加価値を課税標準とする外形標準課税は、付加価値に課税する消費税や付加価値が配分されて株主、債権者、従業員の段階で課税される所得課税との二重課税であるばかりか、諸外国が廃止や見直しの方向にある今、国際的な潮流に逆行するものである。
法人事業税については、現行の課税方式を維持すべきであり、外形標準課税の導入には絶対反対である。
(3)法人課税における中小企業課税の見直し、同族会社への留保金課税廃止
法人税(基本税率30%)については、さらなる引き下げを行ない、国際競争力の維持に努めるべきである。
同時に、資本金1億円以下の中小企業を対象に適用されている軽減税率(800万円以下の所得部分に対し22%)についても、法人税基本税率の引き下げに連動して引き下げるべきであり、その適用所得金額も昭和56年以降据え置かれていることから、1,500万円程度に引き上げるべきである。
また、中小企業にとって社内留保は経営体質の強化や安定化にとり不可欠なものであるので、中小企業の同族会社の留保金課税制度は、早期に撤廃されたい。
(4)事業承継税制の確立
事業用資産(事業の用に供している土地・建物および未上場自社株)の相続にあたっては、相続後一定期間の事業継続を条件として、英国の例に見られるように、相続税の課税対象から事業用資産を100%控除し、事業用資産に対する事業承継税制を確立すべきである。
また、取引相場のない株式の評価方法については、平成12年度改正において、類似業種比準方式による評価方法が、より収益性を加味するものとなったため、一部の企業の株式評価額が改正前よりも上昇してしまうケースが生じている。
したがって、類似業種比準方式における大会社・中会社の株式評価に適用される斟酌率を小会社と同様に0.5とし、その際、平成12年度改正前の算式による評価額を上限とする等、改善を図るべきである。
(5)相続税・贈与税の見直し
相続税と贈与税については、最高税率(現行70%)の50%への引き下げおよびその適用金額(相続税で現行20億円超)の引き上げを含め、累進税率構造全体の緩和を図られたい。
また、贈与税の非課税限度額(現行110万円)を300万円程度まで引き上げ、高齢者から若年・中堅世代への資産移転を容易にすべきである。
(6)土地に係る固定資産税の負担軽減と課税標準算出方法の簡素化
固定資産税は、商業地、特に都市部に立地する企業にとっては、依然として過重な負担となっている。
ついては、商業地等に係る固定資産税は、実効負担率(土地の時価に対する固定資産税額の割合)を評価額上昇以前の最高水準とされる0.4%程度にするとともに課税標準の算出方法を地価の動向に連動した、簡素で分かり易い方法に改めるべきである。
そこで、実効負担率を0.4%程度とするため、現行の7割評価を基とした複雑な課税標準算出方法に代え、課税標準を時価の3割程度とすべきである。

2.活発な企業活動を促進する競争環境の整備
(1)規制改革の推進による成長産業育成
政府の総合規制改革会議は、本年3月に「規制改革推進3カ年計画(改定)」を決定するなど、改革に取り組んでいるが、現状、重点6分野(労働、医療、教育、福祉・保育、環境、都市再生)以外の進捗状況ははかばかしくない。
今後、重点分野に限らず、着実に改革を進めることが不可欠であるが、現在、同会議で検討が進められている「規制改革特区」については、改革推進の起爆剤となることが期待されることから、実現に向け尽力されたい。
(2)創業、新規事業分野進出への支援
①制度融資の担保条件等の緩和
企業の新規事業分野への積極的な参入を促すため、制度融資(新規事業育成融資、小規模企業設備資金貸付等)については担保条件の緩和、助成制度(新事業開拓助成金等)については自己資金の枠内助成を上限とする考えを改め、優れた新規ビジネスプランについては枠外交付を可能とされたい。
②エンジェル税制の拡充
ベンチャー企業等に対する投資を促進するため、当該企業への出資や株式取得等により投資家が被った投資損失を他の所得等との損益通算が可能となるよう、エンジェル税制を拡充し投資家の創出を促進されたい。
③新規事業分野進出に資するリスクマネーの供給
経済産業省は、中小企業総合事業団により既存中小企業が新規事業分野に進出する際の資金供給を行なう方針である。
ついては、地域中小企業支援センターの相談機能を活用し、企業が持つプロジェクトに対する評価や各種支援等が行なえるよう配慮されたい。
④企業組合の活用による創業支援
近年、最低資本金の制約がないこと等から、コミュニティビジネスを行なうなどの創業手段として企業組合が関心を集めている。
ついては、裾野の広い多様な創業形態を支援する観点から、現状、中小企業等協同組合法で規定されている、①組合員に求められている従事比率、組合員比率の緩和のほか、②既存企業等の経営資源を活用できるよう個人に限定されている組合員資格について法人も許容する等、見直しを図られたい。
⑤健全なFC成長への支援
開業や既存企業の事業転換、新規事業分野進出等を促進する一形態としてフランチャイズ・チェーン・システムが注目を集めている。
今般、中小小売商業振興法の施行規則の見直しにより、フランチャイズ本部に対して、加盟店(フランチャイジ-)への契約内容の事前開示、事前説明項目の拡充と徹底が図られることになったほか、フランチャイザーの直近三年間の貸借対照表や損益計算書の提出などが義務化されたことは、加盟者との適正な契約締結に資するものと考える。
ただし、加盟者の経営能力を高めるためには、契約締結に係る内容のみならず経営全般にわたる研修等が欠かせないことから、加盟前後の経営指導等を商工会議所等と連携し強化するようフランチャイザー業界に対して促されたい。
(3)競争ルールの徹底と迅速な紛争処理
①公正取引委員会の機能強化
公正取引委員会の陣容を強化し、親事業者の下請事業者に対する優越的な地位の乱用による下請代金の支払遅延、減額、納入商品などの値引き返品などが起こらないよう、取引適正化の監視とともに処分の迅速化を図られたい。
また、サービス経済化が進展する中、例えば映像メディアや情報サイトに係わるコンテンツ製作者が不公正な取引に巻き込まれるケースが懸念されることから、取引適正化のため独占禁止法の運用を強化されたい。
②ADRの機能拡充
市場重視・自己責任原則に基づく事後チェック型社会実現に向けて、企業取引に係る紛争処理に関しては、迅速、簡便、安価な問題解決手段である、あっせん・調停・仲裁等のADR(Alternative・Dispute・Resolution:裁判外紛争処理制度)の制度拡充に努められたい。
その際、地域中小企業支援センターを有効活用し、PRに努めるほか、中小企業が利用しやすい環境づくりに配慮されたい。
③適正な官公需の受注機会確保
中小企業者の官公需受注機会の増大を図るため、「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」の趣旨徹底に努められるとともに、発注情報等の提供については、インターネットの積極的な活用を検討されたい。
④電子入札に関する支援
IT化の進展に伴い、官公需の入札が電子媒体を通じて行なわれる例が増加しつつあるが、入札参加の際に必要となる電子認証の取得が中小企業にとり負担となっているので、取得に係る財政支援を講じられたい。

3.都市再生と総合的なまちづくりへの支援
(1)産業振興に資する都市再生策の推進
都市再生特別措置法施行により民間主導の都市再開発事業が円滑に進み、東京首都心(センター・コア)の改造、東京臨海地域の再生など、都市機能の向上や低未利用地の活用等につながることが期待される。
また、活発な産業活動を支えるインフラとして、東京国際(羽田)空港の拡張・国際化、首都圏三環状道路整備等の推進は不可欠であるので、早期の完成が実現するよう尽力されたい。
(2)中心市街地活性化策の推進
中心市街地活性化策については、商店街活性化策に留まることなく、まちづくり推進の観点から、在住・在勤者も含めた市民参加の検討、交通基盤整備の推進や再開発計画等との整合性確保、容積率や税制のインセンティブの付与による土地の有効活用、駐車場の固定資産税の軽減を実施した地方自治体に対する助成措置など、総合的な支援策を講じられたい。
(3)TMOに対する支援策の拡充
TMO(タウン・マネージメント機関)に対する支援については継続的に行なうとともに、地域においてまちづくりを担う人材の育成、タウン・マネージャー養成など関連事業のいっそうの拡充を図られたい。
(4)大規模小売店舗立地法の適正な運用
大規模小売店舗立地法が施行され約2年が経過したが、同法の具体的な運用・手続きについては、出店者、住民、地域商業者など関係各方面に周知徹底し、出店等に係る混乱が生じないよう努められたい。
また、経済産業省および各経済局に設置されている相談窓口においては、地方自治体等に適切なアドバイスを行なうなど、従来にも増して行政間の緊密な連絡調整を図られたい。
4.商店街の活性化と個店強化に関する支援
(1)コミュニティ支援機能の強化
住民の都心回帰が顕著となる中、地域におけるコミュニティ機能の回復が喫緊の課題となっている。商店街は、従来よりコミュニティを支える役割を担ってきたが、高齢化の進展等から、今後はさらにその重要性が増すものと思われる。
したがって、宅配サービス、子育て支援・高齢者向けサービス、リサイクル活動など、コミュニティビジネスに取り組む商店街に対しては、コミュニティ施設支援事業を拡充するなど、支援策を強化されたい。
(2)退店に係る支援策の充実
個人事業主が営業する個店は、店舗と住居が一体になっているケースが大半であることから、廃業後も商店街の一角を占め、空き店舗となっているケースが多いので、住居を分離し貸し店舗として整備する際においても、現行の制度融資が適用できるように改められたい。
(3)商店街振興組合法の改正
同法を改正し、組合設立要件(地区内の有資格者の2/3、設立発起人7名以上)を緩和することにより、振興組合の設立を促し、商店街の活性化に資するものとされたい。

Ⅲ.産業空洞化を超えて~中小企業の活力強化のために
<概況>
・製造業による国外生産が15%を超えるなど、大手企業を中心にグローバル化が急速  に進んでいる
・製造業事業所数は一貫して減少しており、とりわけ集積地域での傾向が顕著
・昨年12月に中国が、本年1月に台湾が世界貿易機関(WTO)に加盟。加盟国間の貿  易・投資ルールを市場経済に適応させられるかが課題
・本年1月にシンガポールとの間で締結がなされるなど、東アジア諸国を含め二国間や地域間での自由貿易協定(TFA)に関する協議が活発化する見通し
・政府は、知的財産戦略会議において大綱を本年7月を目途に策定する意向
・産業競争力戦略会議(経済産業相私的懇談会)は「わが国製造業の活性化戦略」を策 定し、政府・経済財政諮問会議に答申する方針

1.製造業復権に向けて
(1)製造業振興ビジョンの明示
大企業を中心に中国等への生産拠点の移管が進む中、中小企業は、産業空洞化の進行による受注の急減や販売単価の低下などを受け、事業の再構築が求められている。
産業競争力会議は、わが国製造業の活性化戦略を策定する方針であるが、政府が提唱するASEAN(東南アジア諸国連合)各国との包括的経済連携構想を踏まえ、わが国が主導的役割を担い「東アジア自由ビジネス圏」を確立できるよう検討を進めるべきである。
こうした進展するグローバル化の視点に立ち、生産性向上や独自製品・技術の開発など活力強化に資する方策を含めた、中小製造業の振興ビジョンの策定を急がれたい。
(2)新たな産業集積づくりへの取り組み
経済産業省所管で昨年度スタートした「産業クラスター事業」に加え、文部科学省所管の「知的クラスター創成事業」が創設されるなど、新たな産業集積づくりに向けた動きが活発化している。
この際、省庁間の連携はもとより、地域における自治体や民間が主導するプロジェクトとのリンケージを強め、経済の活性化や産学官の共同による技術集積づくりに尽力されたい。
(3)立地・操業に係る規制の改革
工業等制限法(首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律)は、大都市の産業および人口の過度の集中を防止するとともに都市環境の改善を図ることを目的として制定されたが、わが国経済の高度成長期におけるひずみの是正と都市環境の改善に一定の効果を上げたものと考える。
しかしながら、現在では、出荷額等の対全国シェアなど首都圏経済の相対的低下も明らかであるほか、環境に係る諸制度も充実していることから、今般の政府による廃止方針を歓迎したい。
ついては、同法の廃止にとどまらず、中小製造業の立地を確保し、操業環境を維持するため、都市計画法や建築基準法等についても緩和を検討されたい。
(4)知的財産権政策の推進
パテントをめぐる訴訟の増加やアジア諸国を中心に急増している日本製品の模倣品の存在などから、政府は、世界知的所有権機関(WIPO)に置く日本拠出の信託基金を用い、模造品問題を含めた知的財産権セミナーの開催、アジア太平洋地域への専門家の短期派遣を通じた審査、機械化の助言、研修生の受け入れによる税関、司法などの人材育成を行なう予定である。
この際、民間調査によれば、中小金型製造業の4割が1号型を製造した際に図面データを提出させられ、発注企業はその図面をもとに2号型以降は海外で製造させているなどの実態が報告されているなど、生産技術の基本となるノウハウの流出が深刻化しているので、独占禁止法上の優越的地位の濫用の防止策や著作権等による保護対策を強化されたい。
また、政府が先に設置した知的財産戦略会議は、知的財産基本法の制定を含めた、今後の知的財産権に係る戦略的な取り組みを網羅した大綱を7月にも策定する計画である。
ついては、中小企業にとっては特許等の申請・維持は相応の負担が伴うので、①国内において知的財産権を取得する際の補助制度の拡充および維持費に係る補助制度の創設、②国外における知的財産権の取得および維持費に係る補助制度の創設、③知的財産権を担保にできる制度融資の拡充について検討されたい。
加えて、中小企業による休眠特許の利用を促進するため、特許流通アドバイザーの派遣や検索機能を付した特許電子図書館(IPDL)の提供などにより、地域中小企業支援センターにおける相談機能を高められたい。
(5)ものづくり教育の充実
工業など公立の専門高校生が企業で働きながら技術や技能を身につけることを単位として認定する制度、いわゆるデュアルシステムの導入を急ぎ、高校卒業者の自立に役立てるとともに、ものづくり教育の充実を図られたい。
また、初等教育から中高等教育にかけて徐々に主体的な職業観・勤労感を身につけさせる教育課程と現行のインターンシップ制度を拡充し、豊かな創造性を育むための就業体験の機会を提供すべきである。
同制度は、中小企業にとって負担感が大きく、普及を妨げているので、産業技術人材育成インターンシップ推進支援事業を通じ、大学と企業との連絡体制の拡充・強化にいっそう努めるとともに、団体・企業への支援を拡充されたい。
さらに同制度を利用し、行き過ぎた採用活動を行なう事例が見受けられるので、こうした行動を防止する受入れ企業等へのルールづくりも急ぐなど、制度本来の主旨に沿うよう改めるべきである。

2.技術開発推進への多様な支援
(1)産学官連携の推進
中小企業が経営革新を図るためには、大学や公設試験研究機関との連携が有効であるので、中小企業地域新生コンソーシアム研究開発事業や中小企業技術開発産学官連携促進事業など既存事業を拡充するなど、いっそうの連携推進に尽力されたい。
(2)TLOの機能強化
TLO(Technology・Licensing・Organization:技術移転機関)を有効に機能させるためには、企業が持つニーズと大学が持つシーズをコーディネートする機能が重要である。
この際、中小企業の経営実態や技術開発等の現場に精通する人物の存在が欠かせないので、TLOに派遣されているリエゾンオフィサーについては質量の両面にわたって拡充されたい。
また、大学での研究成果の産業界への移転を促進するため、国立大学教官の研究成果として生まれた知的財産権を大学に帰属させ、教官個人では限界がある特許等の管理・運用や戦略的な出願を大学側が担うよう制度化されたい。
(3)SBIR等技術開発支援制度の拡充
中小企業技術革新制度(SBIR)は、予算を拡充するとともに、単年度制ゆえの問題点も見受けられることから、運用にあたっては、利用する企業の年度事業計画に配慮し、その募集・審査時期の設定や決定後の速やかな補助金の交付等について配慮されたい。
また、研究開発成果の事業化を支援するため中小企業金融公庫に創設された融資制度については、機動的な貸出しに努められたい。
(4)研究開発促進税制の拡充
研究施設・設備に対する加速度償却・即時償却を拡充するほか、研究開発促進税制を拡充し、米国に倣い、研究開発費の一定割合を法人税から税額控除できるように改められたい。
(5)人材確保・育成に関する支援
企業間競争が激化する中、中小企業においても、良質な人材へのニーズがますます高まっている。
ついては、求人・求職のマッチング機能を強化するため、ハローワークや公共職業紹介機関において雇用・就業に関する情報の一元化を図るとともに、人材移動に係る相談機能を強化されたい。
(6)ITの戦略的活用
情報化融資制度を取り扱う政府系金融機関と中小企業支援センターとの緊密な連携体制の整備とともに専門家の育成にさらに傾注するなど、中小企業のIT化が迅速かつ円滑に行なわれるよう配慮されたい。
また、ものづくりに携わる熟練技能者が保有する優れた技能の客観化・マニュアル化・デジタル化の促進、CAD/CAM/CAEの統合に向けたプラットホームの構築を推進されたい。
(7)販路開拓に関する支援
需要不足が深刻化する中、企業にとって従来とは異なる販売ルートの開拓が急務となっているので、製造技術ネットワークの利用促進を図るほか、新事業開拓助成金等を拡充し、中小企業が独自に取り組む新規販路開拓を支援されたい。
また、中小企業テクノフェア事業の拡充やインターネット上の取引マッチングシステムによる取引情報提供事業についても強化されたい。

3.グローバル化対応への支援
(1)海外進出等への支援策の拡充
中小企業が海外で生産拠点を整備する機会も増えていることから、国際化支援アドバイザー制度を質量ともに拡充されたい。
この際、中小企業者のための身近かな相談窓口を地域中小企業支援センターに開設出来るよう配慮されたい。
また、政府系金融機関の制度融資は、中小企業が海外で所有する工場等の資産を担保として認めるなど、資金調達環境の改善に努められたい。
(2)ISO等国際標準・規格への積極的対応
中小企業においては、人材・資金等に限りがあることから、認証取得に係る助成枠の拡大、取得後の定期審査や更新審査における負担軽減のための助成とともに、認証取得企業への優遇措置として、公的制度利用に係る各種申請に際しての提出書類の免除等、インセンティブの付与を図られたい。
また、経済産業省・日本工業標準調査会は、昨年策定した標準化戦略に基づき年次計画を定め、国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)への積極的な参加や情報技術、環境保全、消費者・高齢者・障害者、ものづくり・産業基盤技術などの重点分野ほか27分野について標準化を推進するとしている。
ついては、年次計画の着実な実行とともに、新たな認証創設に関する動向等、中小企業に対する情報提供活動を強化されたい。

以上