政策提言・要望

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今後の税制改革に関する意見-経済活力・国際競争力の維持・強化のために-

平成14年4月11日
東京商工会議所

基本的考え方

 わが国経済は、バブル崩壊による後遺症から抜け出せず、長期景気低迷の末のデフレスパイラルの様相を強めている。将来のわが国経済の持続的成長のためには、政府が進めようとしている構造改革が不可欠であるが、景気悪化が改革の足かせになっており、改革を成功に導くためにも、まずは、あらゆる知恵を総動員してデフレ克服に取り組み、わが国経済の潜在成長力を顕在化させ、将来のわが国経済を持続的成長軌道に乗せるための基礎体力を取り戻すことが重要である。
将来の持続的成長は、規制の緩和・撤廃をはじめ、行財政、税制、社会保障、教育等についての抜本的改革を加速するプロセスの中で鮮明になってこよう。特に国民生活、企業活動に大きな影響を与える税制については、少子高齢化、グローバル化、技術革新等内外の経済社会の環境変化を踏まえたうえで、今後の目標とする経済社会を見据え、その達成に向けた改革の断行が必要である。
東商工会議所は、かねてから目標とする経済社会を「健康な日本」と定め、その創造に向けた改革を主張してきた。「健康な日本」の下では、人々が生きがいをもって労働や社会貢献に勤しみ、それぞれの努力が報われる。また、元気で挑戦意欲に溢れた企業、特に企業の99%、従業者の81%を占める中小企業が独創性を発揮することにより、多様な国民生活を演出する。そして、そうした元気な企業、生きがいをもった人々によって、社会全体が活力に溢れる。
当所は、税制改革がこのような経済社会を形成するための大きな柱の一つであることを踏まえ、改革にあたって、以下5つの視点を重視すべきと考える。

1.国際競争に耐え得ること
2.簡素・公正・透明で活力をもたらすものであること
3.行政サービスの対価として適正であること
4.広く薄く負担すること
5.納税者意識が行き渡っていること
これらは、まさに「経済活力・国際競争力の維持・強化」という視点からの税制改革と言い換えることができよう。ただし、先に記したとおり税制は国民生活、企業活動に大きな影響を与えるものであるため、改革に際しては国民の合意形成を怠ってはならない。そのためには改革の方向が歳入面に偏重することのないよう、歳出面での資源配分に対する抜本的見直しとセットでの検討が必要である。また、現下のわが国経済の喫緊の課題はデフレの克服であり、抜本改革の一方で、当面の対策として、需要喚起によるデフレ克服のための緊急特別措置を時限立法によって講じる必要がある。

東京商工会議所は、上記のような基本的考え方に立脚し、今後の税制改革について下記のような意見を主張するものである。

Ⅰ.今後の税制改革-基幹税目のあるべき姿

「経済活力・国際競争力の維持・強化」に関わる上記5つの視点から今後の税制改革を推し進める場合、所得課税・資産課税・消費課税のそれぞれについては、概ね以下のような方向を示すことができる。

●所得課税

法人所得課税については、今後の経済の持続的成長をもたらす最大の牽引力が、個々の企業の組織や事業の再構築に向けたスピード感溢れる果敢なアクションの集積であることを再認識した上で、かかる企業のダイナミズムを引き出し、国際競争に耐え得る税制を目指すべきである。特に、わが国企業の大勢を占め、機動性・柔軟性を備えた多様な中小企業が、従来以上に経営改善・経営改革に向け自助努力を積み重ねていけるよう一層の環境整備が行なわれなければならない。
また、個人所得課税は広く薄く負担を求める上で最も重要な税制であるが、就業者の4分の1が税を納めていないという現状に鑑みれば、応能税としての垂直的公平が行き過ぎた感は否めない。また、今後、少子高齢化の進展で納税者への負担の増大も懸念される。努力したものが報われるという今後の望ましい経済社会に逆行しないためにもわが国経済が持続的成長軌道に乗った段階で、税率構造の更なるフラット化と課税最低限引下げをセットにして改革していかねばならない。

●資産課税

資産課税の最大の問題点は、資産に係る取引の種類や政策目的等さまざまな視点から課税根拠が見い出されるその複雑さにある。特に土地に係る課税は、かつてのバブル時に散見された投機的取引の規制を目的とした税、都市環境整備など行政サービスの対価を名目とした税が残存、混在しており、おおよそ簡素で公正とは言い難い状況となっている。今後、応益税の中核たる資産課税については、行政サービスの対価として納税者が納得できるよう課税根拠を明確にしなければならず、存在意義の希薄な税目は廃止し、極力簡素化すべきであろう。
また、相続税・贈与税の累進税率構造は世界的にも高水準にあり、今後、それらの累進税率構造の緩和が急務となっている。また、事業用資産に係る相続や贈与は、企業の事業継続を確保し、活力を維持するという観点から、一般財産のそれとは明らかに一線を画すものであり、今後、事業承継円滑化に資する事業承継税制の確立が必要である。

●消費課税

既述の所得課税・資産課税で示した方向によって経済活力・国際競争力が強化されれば、短期的には税収減になる部分もあろうが、中長期的にはかなりの増収効果が期待できると考える。しかし、現下の財政状況や今後の少子高齢化の進展に鑑みると、自然増収や徹底した歳出削減努力だけで財政のプライマリーバランスの健全化を図ることは容易でないことも否定できないところである。歳出構造の思い切った見直しにもかかわらず、税の増収を図らなければならなくなった場合で、わが国経済が持続的成長軌道に乗り、その安定性が確保された段階で、消費課税、特に消費税の税率引き上げの検討はやむをえないものと考える。

このような方向性を踏まえ、所得課税・資産課税・消費課税のうち、今後のわが国の経済政策および財政政策上、重要である基幹税目に焦点を当て、あるべき姿について以下提言する。

所得課税
1. 法人課税改革
(1) 法人税率の引下げ等
法人税については、平成10年度・平成11年度の税制改正において、連続して税率の引下げが行なわれ、税務当局では、これら一連の税率引き下げにより、実効税率は既に国際標準並みとの認識を示しているが、欧州ならびにアジア諸国と比べると、そうは言い難く、法人税そのものの国際競争力が問われる状況となっている。このような状況を放置するならば、国内産業の空洞化が加速され、近隣諸国との国際競争においても劣勢に置かれる可能性が高いため、これを回避すべく、法人税(基本税率30%)の更なる引下げを行うべきである。
また、税務当局では一連の税率引き下げは、あくまでも課税ベース拡大に先行して実施されたものであるとの認識から、課税ベース拡大が積み残しの検討課題とされている。しかし、課税ベースについては、既に平成10年度および12年度税制改正において、退職給与引当金や役員報酬の損金不算入枠の拡大、少額減価償却資産の取得価額基準の引上げ、配当に係る益金算入枠の拡大、売買目的有価証券の時価評価等が図られ、また平成14年度改正においては、連結納税制度導入に伴う税源の補填策として、退職給与引当金勘定に係る損金算入枠の完全廃止が決定されるなど着実に課税ベースが拡大されており、法人税率引下げの経済効果を減殺している面も否定できない。
現下の経済環境に鑑みると、これ以上の課税ベース拡大は、企業の経営改革の進行を鈍らせ、経済構造改革にもマイナスに働くおそれがあるため容認することはできない。なお、法人関連の租税特別措置については、政策効果の実態及び企業活動の実態に照らし、交際費課税の廃止を含め見直しを行うと共に、企業活力を強化するため政策的に必要な措置は今後共、維持・拡充する必要がある。

(2) 中小企業課税の見直し
① 軽減税率の引下げ等
資本金1億円以下の中小企業を対象に適用される軽減税率(800万円以下の所得部分に対し22%)については、平成12年政府税制調査会中期答申によると、企業規模や形態に対して中立的な税制であるべきとの認識から、「基本税率との差を縮小していく方向で検討することが望ましい」とされている。
しかし、中小企業が相対的に担税力の点で大企業に劣ることは明らかであり、現行の課税方式を否定すれば、わが国経済のダイナミズムを削いでしまうこととなる。また、事業拡大・業績拡大を志向する中小企業は紛れもなく将来の大企業の卵であり、その意味でも内部蓄積の充実は重要である。したがって軽減税率も前述の法人税基本税率の引下げに連動して引下げるべきである。また、その適用所得金額も昭和56年以降据え置かれていることから、1,500万円程度に引き上げるべきである。

② 同族会社への留保金課税の廃止
同族会社への留保金課税制度は、間接的に配当支出の誘因としての機能を果たしつつ法人形態と個人形態における税負担の差を調整するために設けられた制度と言われている。しかし、税制によって配当支出の誘因を図ることは企業活動の自由を過度に制約するものであり、中小企業の資本蓄積と発展を阻害するものとなっている。
また、法人税と所得税の最高税率の格差が大幅に縮小されている今日、税務当局が主張する留保金課税の存在意義そのものが既に失われていると言える。
加えて、同族会社の留保金に対して法人税とは別に税を課すことは、明らかに二重課税である。
このような主張は徐々に理解されてきており、平成14年度税制改正においても、課税停止措置の対象が試験研究や開発に積極投資する企業にも拡大されたことは歓迎すべきことである。
しかし、設備投資や緊急の資金の源泉となる社内留保の充実は同族・非同族を問わず重要であり、税がその行為に対し抑制的に作用してはならない。したがって、本来的には留保金課税の全廃が望ましいが、まずは、貸し渋り・貸し剥がしの厳しい中、資金調達手段の乏しい中小同族非公開会社に対して留保金課税を廃止すべきである。

(3) 法人事業税への外形標準課税導入の反対
平成14年度の税制改正において、法人事業税への外形標準課税の導入は見送られたものの、与党税制改正大綱に「今後、各方面での意見を聞きながら検討を深め、具体案を得たうえで、景気の状況等も勘案しつつ、平成15年度税制改正を目途にその導入を図る」と明記された。
その際、地方自治体の財政安定化が外形標準課税を導入すべきとする理由の一つにあげられているが、法人事業税は長年にわたり、所得を課税標準とする応能税であったにもかかわらず、長引く不況により民間企業の所得が減少する状況下、税収の安定的確保のために外形標準課税を導入することは、地方税制の法的安定性を害するものであり、到底、納税者の理解を得られるものではない。最初に財政安定化ありきでは地方行財政合理化への努力に水を差し、本末転倒となりかねない。まずは、行政サービスの水準も含め納税者が納得できる行財政改革を徹底的に行うべきであり、安易に税制の見直しによる税収確保の方策を求めるべきではない。
総務省が提案している、賃金等の付加価値等を課税標準とする外形標準課税は、企業の雇用や投資に抑制的に作用し、経済活力を削ぐ虞があるとともに、収益性の低い中小企業への課税強化となる。
また、付加価値を課税標準とする外形標準課税は、①付加価値に課税する消費税や②付加価値が配分されて株主、債権者、従業員の段階で課税される所得課税との二重の意味での二重課税であると言える。
更に、諸外国でも廃止や見直しの方向にある外形標準課税は、国際的な潮流に逆行するものである。
そもそも法人は固定資産税・法人住民税均等割等により、既に多くの応益税負担をしており、今後の改革に際してはそれらの整理こそが必要であるにもかかわらず、逆に新たな応益税を設けようとすること自体が不可解である。また、法人は、地域サービスの受益者であると共に、従業員の雇用などを通じて、地域経済社会の安定に大きく貢献していることを忘れてはならない。
法人事業税については、あくまでも現行の課税方式を維持すべきであり、外形標準課税の導入には反対である。

2. 個人所得課税改革
(1) 所得税の累進税率構造の緩和と課税最低限の引下げ
わが国の所得税の課税最低限が先進諸国と比べて高いという理由から、それを引下げるべきとの考えがある。当所としては、課税最低限の国際比較については、「購買力平価等の要素が必ずしも加味されていないこと」、「各国の所得格差を考慮した上での正確な税負担比較がなされていないこと」から、表面的な数値だけからその高低を判断すべきではないと考える。また、現下の厳しい経済状況下での課税最低限の引下げは、民生の活力を削ぐ虞がある。
しかし、就業者の4分の1が納税していない現状は、少子高齢化等今後の社会構造の変化に鑑みると、納税者への負担増が予想され、将来にわたってこれを放置しておくことはできない。景気が自律的回復基調に転じ、持続的成長軌道に乗った段階では、広く薄く税を負担するという観点から、所得税の課税最低限を引下げるべきと考える。
引下げにあたっては、全ての個人に適用される「基礎控除」及び配慮が手厚いとの指摘がなされている配偶者関係控除のひとつである「配偶者特別控除」を中心に見直しを検討すべきである。
配偶者特別控除を見直すにあたっては、夫と妻の実質所得合計額(税引き後所得)の逆転現象に配慮し、現行配偶者控除を現行配偶者特別控除に採用されている消失控除方式(所得の増加に合わせて控除額が逓減する)とするなどの工夫を行ない、現行配偶者特別控除を廃止する方向で検討すべきである。
但し、上記控除の見直しにあたっては、現在の納税者への負担が増さないよう、累進税率構造の緩和と併せて実施すべきである。累進税率構造の緩和については、最高税率37%の30%への引下げと5%の最低税率の新設を含む、累進税率構造全体の緩和を行うべきである。
(2) 住宅減税の拡充
耐震性、耐久性、省エネ効果等を備えた良質な住宅に対する潜在需要は環境問題等への対応などの社会的要請と相俟って今後更に高まると考えられる。このような国民の需要に応えるべく以下の措置を講じるべきである。
① 現行の住宅ローン減税の恒久化と拡充
現行の住宅ローン減税(10年間借入残高の1%税額控除)の恒久化を図る。また、高齢社会の到来や生活様式の多様化に鑑み、セカンドハウスも適用対象に加えると共に、借入残高の上限(現行5,000万円)を引き上げる。
② ローン利子所得控除制度の創設
恒久的ローン利子所得控除制度を創設し、上記住宅ローン減税との選択制とする。

(3) 株式譲渡益に係る申告分離課税の税率引下げ
「間接金融から直接金融へ」という大きな流れの中で、個人株主の拡大等、証券市場の充実を図るため、申告分離課税への一本化がなされる際には、その税率を10%程度に引下げるべきである。

(4) 創業・ベンチャー企業投資促進税制の拡充
創業・ベンチャー企業に対する個人投資家の投資を促進し、経済の活性化を図るため、当該企業への出資や株式取得等により個人投資家が被った投資損失の他の所得等との損益通算および損失の3年間の繰越控除が可能となるよう、所謂エンジェル税制を拡充すべきである。

資産課税
1. 住宅・土地税制改革
(1) 土地に係る固定資産税の負担軽減と課税標準算出方法の簡素化
前回の固定資産評価替えの際、負担水準の引き下げによって部分的に固定資産税の負担が軽減されたが、長期にわたる地価の下落にもかかわらず、公示価格の7割評価を基に負担調整措置を図るという評価方法が採られており、商業地、特に都市部に立地する企業にとっては依然として過重な負担となっている。商業地等に係わる固定資産税については、実効負担率(土地の時価に対する固定資産税額の割合)を評価額上昇以前の最高水準とされる0.4%程度にするとともに課税標準の算出方法を地価の動向に連動した、簡素でわかりやすい方法に改めるべきである。そこで、実効負担率を0.4%程度とするため、現行の7割評価を基とした複雑な課税標準算出方法に代え、課税標準を時価の3割程度とすべきである。

(2) バブル期等税制の廃止
わが国の不動産に係る税制は、かつての地価上昇を背景に、土地の投機的取引の抑制等を目的としたものが残っており、その過重な負担が土地の有効利用や不動産への健全な投資による不動産の流動化を阻害している。今や存在意義の不明確な税制は廃止等すべきである。
① 不動産取得税の廃止
当該税は、固定資産税の前取り的性格を有しており、現在のように固定資産税が高止まりしている状況ではその必要性は失われていることから、廃止すべきである。
② 事業所税の廃止
当該税は、応益課税の観点からは、固定資産税等との二重負担であり、また、大都市での事業所の新増設を阻害する等から廃止すべきである。特に中小企業の立地は、産業及び人口集積度の高い都市部に多く、人口30万人以上の都市における中小企業にとって当該税の負担は過重なものとなっている。
③ 特別土地保有税・地価税・法人土地譲渡益重課の廃止
土地投機の抑制等を目的として創設された当該税は、資産デフレの状況下、廃止すべきである。
④ 登録免許税の手数料化
当該税は、かつて手数料として徴収されていたものであり、本来の趣旨に従い、手数料化すべきである。

2. 相続税・贈与税改革
(1) 相続税・贈与税の累進税率構造の緩和
わが国の相続税の最高税率は、諸外国と比べて相当高い水準にあり、その引き下げの方向が示されたにもかかわらず、実施が先送りされている。また、税率構造についても、国際的に見て、極めて累進的であることから、経済活力の阻害要因となっている。このため、相続税と贈与税について、最高税率(現行70%)の50%への引き下げ及びその適用金額(相続税で現行20億円超)の引き上げを含め、累進税率構造全体の緩和を図るべきである。また、高齢者から若年・中堅世代への資産移転を容易にするため、贈与税の非課税限度額(現行110万円)を引き上げるべきである。

(2) 事業承継円滑化のための事業承継税制の確立
中小企業の事業用資産に対しては、平成14年度改正で、一定要件のもとで取引相場のない株式等に対する相続税課税価格が10%減額される事業承継税制が創設され、徐々にではあるが、事業承継円滑化のための税制改革の必要性が理解されつつありこれを評価したい。今後の抜本的改革にあたっては、事業者が相続税を憂慮せず事業継続、経営改革に邁進できるよう、更に、事業承継円滑化の視点を重視しなければならない。
当所はかねてから、中小企業の事業用資産の相続による親子間移転は一般の相続財産の移転とは異なると主張している。なぜなら、一般の相続財産は、処分・換金ができ、そこから相続税を納付することが可能であるが、事業用資産の場合は、事業継続に不可欠であるがゆえに、処分・換金ができず、そこに担税力を見出すことができないと考えるからである。
本来、法人の親子と自然人の親子は、事業体としては同一の関係にあり、本年度改正で創設された連結納税制度における親子会社間の資産移転と同様に、中小企業の事業用資産にも、移転時点(相続時点)で課税対象とするのではなく、外部に売却される時点で課税関係が生じるとの考え方が適用されるべきと考える。
従って、事業用資産(事業の用に供している土地・建物及び未上場自社株等)の相続に当っては、相続後一定期間の事業継続を条件として、英国の例に見られるように、相続税の課税対象から事業用資産を100%控除し、事業用資産に対する事業承継税制の確立を図るべきである。

(3) 取引相場のない株式の評価方法の抜本的見直し
取引相場のない株式の評価方法については、平成12年度改正において、類似業種比準方式による評価方法が、より収益性を加味するものとなったことにより、一部の収益性の高い企業の株式評価額が改正前よりも上昇してしまうケースも見られることから、類似業種比準方式における大会社・中会社の株式評価に適用される斟酌率を小会社と同様に0.5とし、その際、平成12年度改正前の算式による評価額を上限とする等、更なる改善を図るべきである。また、今後、取引相場のない株式評価の適正化に向け、抜本的見直しについても検討すべきである。 

消費課税

● 消費税改革
財政のプライマリーバランスについては、まずは歳出構造の抜本的見直しを含む行財政改革による徹底した歳出削減や景気回復による自然増収で健全化を図ることが先決である。しかしながら、今後の少子高齢化の進行に伴い、社会保障における公的負担の増大は避けられない状況にあり、こうした財政状況を勘案するならば、税の増収を図らなければならなくなった場合で、経済が持続的成長軌道に乗り、安定基調が続いた段階では、直接税の負担増と比べて経済活力に影響の少ない間接税の負担増、即ち、消費税の税率引き上げの検討はやむをえないものと考える。
ただし、消費税の税率引上げに当たっては、国民的合意形成に向けて、慎重な検討を重ねなければならないことは言うまでもない。

その他(納税環境等)
徴税の公正化を確保し、納税・税の使途に対する国民の意識を高めるため、以下のような納税環境を早急に整備すべきである。

1. 納税者番号制度の導入等
課税の公平化・適正化を図り、取るべきところから取る徴税の公正化を確保する環境を整えるために、納税者番号制度の早期導入に向け、検討を進めるべきである。
その際には、課税目的以外に悪用されることのないよう、プライバシー保護に係わる万全の措置を講ずることにより、国民から信頼される制度を目指すべきである。
また、個人のみならず法人をも含めた包括的な制度とすべきである。
加えて、必ずしも実態を反映していない、また、弊害も指摘されている高額納税者公示制度を見直すべきである。

2. 地方交付税制度の縮減と国から地方への税源移譲を含む税源配分の見直し
中央政府主導によって国土の均衡ある発展を志向する時代は終焉し、地方分権時代における地方自治による特色ある地域の発展が今後のわが国全体の発展に欠かせない。努力すれば減額され、努力しなくとも補填される現行の地方交付税制度は「均衡ある発展」を強調しすぎた制度であり、地方における受益と負担の関係を遮断し、地方公共団体の財政規律の希薄化を招いたことは否定できない。
地方における受益と負担の関係を明確にし、地方行財政の効率化を推進するため、地方交付税は縮減し、税源の偏在性の低い所得税と消費税を中心に、国から地方への税源移譲を含む新しい税源配分システムを構築すべきである。
新しい税源配分システムにおいて縮減された地方交付税は、税源移譲等がされても過疎等によって必要な行政サービスを供与するための税収を確保できない自治体のみに限定した簡素な制度とすべきである。

3. 年末調整の自己申告方式への移行
納税意識の高揚のために申告納税の風土定着は欠かせない。納税者にとって簡便で負担の少ない現行の源泉徴収制度を残し、納税者意識の高揚を図るため年末調整のみ自己申告方式に移行すべきである。

Ⅱ.デフレ克服のための緊急特別措置(3年間の時限措置)

経済活力・国際競争力の維持・強化の視点から抜本的税制改革を推し進めるためには、まずは、デフレ克服の鍵を握る民間の潜在的消費意欲および投資意欲を喚起することが重要である。そこで、単年度での「税収中立」にとらわれることなく、適用期間を3年間に限定した下記の緊急特別措置を講じることが緊要と考える。

1. 証券市場活性化策
(1) 株式譲渡益に対する非課税措置
株式譲渡益課税については、昨年秋の税制改正で現行の源泉分離課税方式(売値の1.05%)が本年12月31日に廃止され、来年1月1日からは申告分離課税(譲渡益の20%)に一本化され、併せて、長期保有株式に係る譲渡益課税の減免措置などが施されることとなっている。しかし、このような一連の措置は内容が複雑で必ずしも投資意欲を促すに十分とは言い難い。
そこで、証券市場の本格的な活性化の起爆剤とすべく、株式譲渡益に対する非課税措置を講じるべきである。

(2) 株式譲渡損失の他の所得との損益通算等
上記と同様の趣旨から、含み損の解消と新規投資を活発化させるため、譲渡損失については、勤労所得など他の所得との損益通算及び3年間の適用期間内での繰越控除を認めるべきである。

2. 住宅・土地市場等活性化策
(1) 住宅資金贈与に係る特例の大幅な拡充
現在、住宅取得に係る資金の贈与を受けた場合には、特例として550万円の非課税措置が設けられているが、住宅建築・取得・リフォーム及びこれらに付随する消費財購入に対する民間の潜在需要を集中的に喚起すべくこれを、平均住宅取得額に相当する3,000万円程度に引き上げるべきである。

(2) 消費刺激策としての贈与税非課税限度額の引き上げ
上記以外の場合における消費財購入に対する潜在需要を喚起すべく、贈与税の非課税限度額を1,000万円まで引き上げるべきである。

3. 自動車市場活性化策
住宅投資とならんで景気浮揚効果の高い自動車の取得及び買い替えを促すべく、自動車取得税(従価税:営業用3%、自家用5%)について以下の措置を講じるべきである。
① 低公害車・ハイブリッド車に係る自動車取得税非課税措置
② 低公害車・ハイブリッド車以外の車両に係る自動車取得税の5割減額措置

4. 成長産業分野投資及び高度情報化投資活性化策

 環境・バイオテクノロジー・ナノテクノロジー等、成長産業分野における潜在的投資意欲の喚起、及び事業革新の牽引車たる高度情報インフラの整備促進に資する下記の措置を講じるべきである。
① 新たな研究施設・設備に対する加速度償却又は即時償却の特例
② 新たな試験研究費に対する一定率の税額控除特例
③ 情報インフラ整備に係るハードウェアに対する加速度償却又は即時償却の特例
④ 外部発注および自社開発(販売用を除く)ソフトウェアに対する一定率の税額控除特例

以上