自民党の新憲法草案について
東京商工会議所
主要政党が条文の形で憲法改正の草案を公表したことは、戦後政治史上画期的な意義がある。結党50年の節目に、まずは勇気ある決断をした自民党に敬意を表したい。
評価したい第一の点は、憲法改正要件の緩和である。60年間一度も改正に着手できなかったのはこの点にあった。憲法といえども不磨の大典ではなく、時代の変化に応じ、国民の意思を反映させて必要な改正を加えることが可能になるのは大きな意味がある。
また、平和国家としての理念を堅持しつつ、明確な文民統制(シビリアン・コントロール)の下での自衛軍の保持と、平和と安全確保のための国際協力活動にも参加できることを明記したことにより、自衛隊の合憲性をはっきりさせることができるようになる。
さらに、個人の自由と権利には、責任と義務が伴うことが明記され、意味の曖昧な「公共の福祉」を「公益・公の秩序」としたのも妥当である。国と地方自治体の役割分担が明記されたのは、分権時代に沿ったものとして評価できる。
一方、知る権利や知的財産権など、国民の新しい権利規定が創設されているのも新味を感じさせる。
全体としては、今日の国際社会や日本の経済社会を踏まえたものとなっており、この自民党の草案を一つのベースにして、他の政党の草案も含めて国民各層での論議が深まり、国民の意思を反映した憲法改正が実現することを期待したい。