会頭コメント

会頭コメント

平成13年稲葉会頭年頭所感

平成13年1月1日
東京商工会議所
会頭 稲葉興作

柔軟、迅速な行動力生かし新時代を切り拓く気概を

21世紀の幕開けとなる2001(平成13)年の新春を迎え、謹んでお喜び申し上げます。
 わが国経済は、一部に明るさが出てきているものの、失業率や企業倒産は未だに高水準で推移しており、先行きの不透明感も根強く、依然として景気回復を実感できる状況にはありません。
 そのような中、政府においては昨年10月、「日本新生のための新発展政策」として総事業規模11兆円規模の経済対策を打ち出すとともに、11月には補正予算を手当いたしました。われわれとしては、その補正予算が速やかに執行されるとともに、景気に配慮した平成13年度予算が早期に成立することを強く望むところであります。
 現在のわが国は、経済活動や社会生活などあらゆる分野において、極めて重要な変革期に差し掛かっていると考えます。IT(情報技術)化の推進や新規産業の創造などによる活力ある経済社会の構築、少子・高齢化社会への対応、教育改革、地球規模での環境問題への取り組みなど、将来にわたる繁栄と発展のためには、大きな構造改革の必要に迫られております。
 こうした課題を克服し、希望に満ちた新しい日本を創造していくためには、既成の概念や考え方にとらわれない、柔軟かつスピーディーな行動力が強く求められており、東京商工会議所会員各位にとりましても、新しい時代を切り拓いていこうとする気概をもって企業経営に取り組んでいただきたいと考えます。

◆外形標準課税導入見送りは反対運動の成果
 東京・日本商工会議所はじめ産業界がかねてから絶対反対を主張し続けてきた、法人事業税への外形標準課税導入の問題については、昨年末の税制改正論議の末、平成14年度からの導入は見送りとなりました。これは、われわれの粘り強い反対運動の成果であるとともに、雇用や経済に重大な悪影響を与える外形標準課税を導入すべきでないとの正当な判断がなされた結果であると考えます。しかし、「早期の導入」が明記されている以上、今後も引き続き産業界を挙げて強力に反対運動を展開して参りたいと考えます。

◆21世紀担う東商の新体制がスタート
 さて、ITをはじめとした急速な経営環境の変化は中小企業の経営をより一層、厳しいものにしておりますが、こうした中にあって東京商工会議所の役割はますます増大しております。特に昨年は役員・議員の改選を行い、21世紀を担う東京商工会議所の新体制がスタートしました。
 私どもも本年はまず「新生東商」の基盤づくりに早急に着手した上で、こうした変化に機動的に対応し、会員企業の経営に役立つ活動を素早く実施すること、さらには本・支部の連携を一層強め、広く会員の皆さんの意見を酌み取りながら、活動を展開していきたいと考えます。そのためにも東京商工会議所の活動基盤である10万会員体制の維持・強化に邁進していく決意であります。

◆中小企業の経営環境の整備に注力
 具体的には中小企業の経営環境整備に注力することはもちろんのこと、ビジネスチャンス創出のための10万会員体制を生かした会員間ビジネス交流を積極的に推進して参ります。また、今月スタートする中央省庁再編をはじめ、地方分権・規制緩和の進展を踏まえ、経済社会構造の変化に対応した21世紀型税制のあり方についての検討、活力ある首都東京の再生に向けた都市基盤整備・まちづくりの推進、会員企業を対象に格安パソコンの斡旋、低額ネットサービスの提供を目的とするミレニアム・プロジェクトを中心とした中小企業のIT化支援、東京の産業活性化に貢献すべく創業開業支援事業など、さらには経済のグローバル化の中での国際交流の推進など多様に展開して参ります。
 折しも本年4月には、民間経済人で構成する太平洋経済委員会(PBEC)国際総会が「21世紀における太平洋の活力」をテーマに東京で開催されます。私も国際会長として総会の成功に向けて全身全霊を傾けて取り組みたいと考えます。

◆企業・国民にとって夢の持てる明るい社会に
 最後に、本年は21世紀のスタートの年に当たりますが、二度にわたる世界大戦を経た激動の21世紀が残した教訓を生かし、新世紀は国民や企業にとって将来に夢を持てる、明るい社会であってほしいと願って止みません。

 以上、年頭にあたり所懐の一端を申し述べましたが、経済情勢が依然として厳しい状況の折、一日も早い景気回復を目指し、本支部役員・議員・事務局が真に一丸となって、中小企業支援という使命達成に向けて、精一杯努力して参る所存でございます。会員の皆様におかれましてもどうか一層のご支援・ご協力を賜りますよう心からお願い申しあげます。