東商からの重要なお知らせ

勇気ある経営大賞

“命のきずな”を価値に変える。
へその緒が切り開く再生医療の未来

【総合部門大賞】
株式会社日本メディック

株式会社日本メディックの前身の会社は、かつてコイン式マッサージチェアの設置・運営を主力に事業を展開していました。しかし、仕入先からの突然の取引条件変更により資金繰りが急速に悪化し、2011年に民事再生法の適用を申請。そこから業務用市場に特化し、「あんま王」シリーズを企画・展開。現在は累計2万台超の導入実績を誇るトップブランドへと成長しました。この挑戦が高く評価され、2024年に「第21回勇気ある経営大賞・総合部門大賞」を受賞。代表取締役社長の城田充晴氏に、その軌跡と今後の展望を伺いました。

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挫折と再出発――すべてを手放し、残ったのは4人だけ

日本メディックの前身の会社は、かつて温泉ホテルや健康ランドなどで、家庭用マッサージチェアを対面販売するビジネスで成長を遂げてきました。しかし、テレビ通販や家電量販店の台頭により、販売員を介したビジネスモデルは急速に時代遅れとなり、固定家賃や在庫負担が経営を圧迫。売上の悪化とともに販売員の離職も相次ぎ、事業は下降線をたどっていきました。

そうした中で、打開策として取り組んだのが「コイン式マッサージチェア」でした。百円硬貨で稼働する家庭用マッサージチェアを温泉ホテルなどに設置し、無人でも収益を生むビジネスモデルへと転換。マッサージチェアの仕入代金も分割払いとし、キャッシュフローの改善も図っていました。しかし仕入先からの突然の取引条件変更により、分割払いが打ち切られ、仕入代金を一括で支払うことに。それでは資金繰りが回せないと判断。2011年、当時の社長であった城田充晴氏の父が、民事再生法の適用を申請します。主力事業を他社に譲渡し、社員も受け入れ先企業へ円滑に転籍。会社に残って再建を担うのは、わずか4名だけでした。

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「結果として、誰ひとり解雇せずに済んだことは、父をはじめ経営陣にとっても大きな救いだったと思います」と、社長の城田氏は振り返ります。

ゼロからの再始動。再建の糸口は「業務用」にあった

商品も組織も失った状態から、同社がたどり着いたのは「もう一度、マッサージチェアを扱おう」という原点への回帰でした。ただし、再び家庭用市場に戻るのではなく、これまでの経験を踏まえて業務用に特化するという新たな選択をします。家庭用機器をコイン式マッサージチェアとして業務用に使用していた際は、生地の劣化や修理の手間、高頻度使用への耐久性不足など、多くの課題に直面していました。だからこそ、業務用に最適化されたオリジナル製品を一から作る道を選んだのです。

製造部門を有していなかった当社は、自社で製造設備を持たずに、外部パートナーと連携する“ファブレスメーカー”としての体制構築に踏み切ります。パートナーとなったのは、医療機器製造の実績を持ち、以前から取引があった株式会社相生電子。同社もまた新たな事業展開を模索しており、互いの思惑が一致して共同開発がスタートしました。

2012年、「あんま王」誕生――民事再生からわずか1年で新製品をリリース

とはいえ、製造を担う相生電子は、医療機器製造のノウハウはあったものの、マッサージチェアそのものを作るのは初めて。そこで採用したのが、中国の工場でベースとなる機器を調達し、業務用仕様にカスタマイズする戦略でした。担当者は中国国内の工場を訪ね歩き、機能・コスト・構造などあらゆる面で条件を満たすモデルを慎重に選定。その上で、業務用として必要な機能――例えば、使用頻度の高さに耐える強度や背面布の簡単な交換、家庭用にはない高級感などにこだわり、独自の仕様へと仕上げていきました。

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誕生した製品には、「マッサージ=あんま」「トップ=王」という意味を込めて「あんま王」と命名。2012年春、薬機法にもとづく医療機器認証を取得し、ついに市場へデビュー。民事再生からわずか1年の出来事でした。

全国へ広がる設置と現場密着の工夫

「あんま王」はまず温浴施設での導入が進み、その後、ショッピングモールやフィットネスクラブ、空港、ネットカフェ、コインランドリーなど、多様な施設へと設置が広がりました。その背景には、利用者の快適さと運営側の使いやすさを両立する、細やかな設計思想があります。

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例えば、マッサージチェアの生地やパーツは消耗しやすい部位を中心に簡単に交換できる構造となっており、施設のスタッフが現場で対応できるほど手間がかからない設計に。また、座ると「ご利用ありがとうございます」「硬貨を投入してください」と案内する音声ガイドを搭載し、利用促進と回転率の向上にも貢献しています。

「あんま王」シリーズは進化を続け、現在は「あんま王Ⅳ」まで開発。最新モデルでは大型フェイスフードを備え、利用者が人目を気にせずリラックスできるプライベート空間を実現しています。

【進化を続ける「あんま王」シリーズ】
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写真左から、初代あんま王(2012年)、あんま王Ⅱ(2015年)、あんま王Ⅳ(2019年)

キャッシュレスとIoTで次の価値創造へ

「あんま王」は、百円硬貨1枚で利用できる手軽さが魅力でしたが、機器の高機能化に伴い、利用料金が200円、300円と徐々に上昇したことで、利用者が必要な枚数の百円硬貨を持ち合わせていないことによる機会損失が課題となっていました。そのため、キャッシュレス決済端末との接続ができるように対応し、現代の利用者ニーズに応えています。さらにIoT化も進め、稼働状況や利用時間帯、使用コースなどのデータを取得・分析。施設側へのフィードバックやサービス改善を進めていく予定です。

「百円硬貨での商売は、手軽さが魅力でしたが、現代ではそれが制約にもなり得ます。だからこそ、私たちは“現金がなくても使える”という当たり前を、業務用マッサージチェアでも実現したいと思いました。さらに、ネットワークに接続することで、利用データをもとに新たな価値を提供することが、これからの事業の柱になっていきます」と城田氏は語ります。

中小企業だからこそ、ニッチで勝つ

「家庭用という飽和市場ではなく、業務用というニッチ市場に特化したことが、私たちの再起を支えてくれました」と城田氏。

大手企業と同じ土俵で価格競争をするのではなく、現場に寄り添い、きめ細やかな機能や工夫を積み重ねてきたことが、当社の生きる道でした。その戦略が功を奏し、現在までに「あんま王」はシリーズ累計出荷2万台を突破。業務用マッサージチェア市場でトップクラスの実績を誇ります。

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2024年に、「第21回勇気ある経営大賞・総合部門大賞」を受賞。民事再生からの再起、そして業界の第一線へと復活を遂げた歩みが高く評価された結果です。
「これまでは“頑張ってきた”という自己評価でしかありませんでしたが、こうして外部から正式に認めていただけたことで、自分たちの選択が正しかったと確信できました。従業員にとってもきっと、自信として残ってくれると思います」と城田氏は語ります。

崖っぷちから這い上がったその歩みには、ニッチ市場に特化した中小企業だからこそ実現できた価値がありました。市場のすき間に正面から挑み、必要とされる技術とサービスを誠実に届ける――それが、日本メディックの強さです。

株式会社日本メディック
本社:神奈川県藤沢市下土棚468-1
https://www.nihon-medic.co.jp/
主な事業内容:マッサージチェア(管理医療機器)の製品企画・発売・卸売

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