更新日(事例掲載日):2024年10月31日

東亜物流株式会社

一般貨物自動車運送事業
所在地 東京都江戸川区一之江1-9-13
代表者 森本勝也(代表取締役)
資本金 1億円
従業員数 450名
設立年 1989年
企業HP https://www.toaline.co.jp/
東亜物流株式会社

東亜物流株式会社

1989年、東京都江戸川区にて創業。貨物運送サービスを主軸に、倉庫事業、廃棄物処理事業、人材派遣サービスといった4事業を展開する総合物流ソリューション企業。東京都を中心として関東圏と大阪を含む14か所に配送拠点を有する一方、積極的なM&Aによって関連会社を6社所有し、企業規模の拡大を図っている。創業以来、毎年増収を続ける地域のリーディングカンパニー。

物流改善に向けた
取組み内容

■現場の状況把握と粘り強い交渉でドライバーの労働環境を改善

管理部の菅澤裕貴部長

管理部の菅澤裕貴部長

定例会議を開いて現場の声に耳を傾け、交渉へ活かす

東亜物流では、円滑な業務に向けて最も大切なのは「現場の状況を把握すること」と考えている。そのため、定期的にドライバーおよび配車担当者と会議を開き、彼らの意見にしっかりと耳を傾けている。「定例会議によって現場の状況やドライバーの悩みなどが具体的に分かるため、荷主への交渉もしやすく、きちんと対応してくれる荷主も多いのです。現場の声を聞けるこの会議は、労働環境の改善に重要な役割を果たしていると実感しています」と、同社管理部の菅澤裕貴部長は語る。

なお、定例会議は安全対策の強化にも大きく役立っているという。現場で起きた過去の事故やヒヤリハットの事例を録画映像でドライバーへ共有し、安全への定期的な意識づけに力を注いでいる。

交渉により料金や作業負担の改善に成功

東亜物流ではドライバーが働きやすい環境の整備を行い、労働環境の改善に成功している。その大きな契機となったのが、2024年4月に実施された「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」の改正だ。この法律はドライバーの拘束時間や休息期間、運転時間等の基準を定めたものであり、菅澤部長は次のように語る。「以前は、ドライバーの拘束時間に関心を持つ荷主はそう多くはありませんでした。しかし、法改正をきっかけに荷主の間で拘束時間削減への意識が高まったため、ドライバーの労働環境改善に向けた各種交渉がしやすくなったのです」。

中でも積極的に交渉を進めたのは高速料金だ。それまで、荷主側には「行きの高速料金は支払うが、帰りの分は運送会社持ちで」といった風潮が根強くあった。これにより、ドライバーは経費削減のために一般道で帰ることが多く、拘束時間が長引く傾向があったのだ。そこで、東亜物流では往復の高速料金を荷主負担とすることと、急ぎの場合は近場でも高速道路を利用できるよう荷主へ相談。「前向きに検討してくださる荷主が多く、ドライバーの拘束時間削減につながっていてとても助かっています」と菅澤部長は語る。

また、法改正によってドライバーの拘束時間や時間外労働が制限されたことで、東亜物流は附帯作業の見直しにも注力。附帯作業とは、積み込みや荷降ろしなど本業である貨物を運ぶ作業以外の業務のことで、国土交通省は「附帯作業は有料」と定めているものの、業界ではドライバーがサービスで手助けする文化が定着していた。そこで、同社では附帯作業を有料とする交渉を進めている。また、積み下ろしの作業方法についても手作業からパレット(荷物をまとめて載せる台)やカゴ台車を用いたスタイルへと、理解を得た荷主より切り替え、作業の効率化を進めている。

そのほか、休憩が取りづらい配送コースの見直しや、夜間配送での拘束時間の短縮などにおいても具体的な交渉を進め、それぞれ良い回答を得られることも多くなったという。さらに、燃料費や人件費などの上昇に伴って、基本的な運送費についても荷主から理解を得て見直しを図っている。

■点呼や勤務管理などをDX化

万全な管理体制のもと輸配送業務を行うドライバーら

万全な管理体制のもと輸配送業務を行うドライバーら

ITによる点呼システムの導入で点呼とアルコールチェックを効率化

事故を防止し歩行者やドライバーの安全を守るために、点呼とアルコールチェックは欠かせない。東亜物流では出勤時と退勤時に点呼およびアルコールチェックを行っており、より確実に実施することを目的としてITによる点呼システムを導入すると共に国土交通省より遠隔点呼の認証を受けた。それまで行っていた対面での点呼では、営業所に管理者を配置したり、ドライバーが管理者の元へ移動したりする必要があった。しかし、ITによる点呼システムを導入してからは遠隔点呼が可能となったため、管理者とドライバーの双方の負荷を低減し効率化を図れている。「特に夜間の点呼は負担が大きかったので、管理者もドライバーも喜んでいます」と成果を実感している。

ドライバーの労働状況はダッシュボードで一目瞭然

東亜物流では勤怠管理のデジタル化にも注力。出退勤や点呼のデータ管理はもちろん、休憩時間や待機時間などもドライバーが画面をタッチするのみの簡単操作で記録でき、各データは自動的に連携されている。そして、ダッシュボード機能(蓄積されたデータを収集・分析して可視化する機能)によって労働・拘束時間が年・月・日ごとにデータ化されており、各ドライバーの労働状態が一目で分かる仕組みだ。「『拘束時間が長い』『休息時間が取れていない』などの問題点が、ダッシュボード機能でチェックすれば一目瞭然です。また、一定の制限を超える前に知らせてくれるアラート機能も搭載されており、それをもとに管理者はドライバーへ指導を行うなど、早めの対処が可能になりました。必要に応じて別のドライバーに替えて労働時間の平準化を図ることもでき、円滑な勤怠管理に大変役立っています」と菅澤部長は語る。

■採用の強化と人材定着への工夫

外国人技能実習生も積極的に交流会に参加

外国人技能実習生も積極的に交流会に参加

給与体系を見直し、ワークライフバランスの充実に注力

運送業界では、どの企業においても「採用の強化」が喫緊の課題となっている。そんな中、東亜物流は2024年4月からドライバーの給与の見直しに着手した。歩合給の算定根拠としていた運送費は荷主によって差がある上、作業内容も異なり、「報酬が労働に見合っていない」と不満を感じるドライバーも少なくなかった。そのような状況にメスを入れ、給与の算定根拠を明確にする形で従業員の納得感を醸成するとともに、附帯業務にも手当をプラスする形で現給与の底上げを図った。

また、業務終了後の休息期間は「11時間以上」を基本とし、少なくとも9時間を下回らないように徹底。その実現に向け、複数のドライバーが業務を補完し合える体制を整えた。「実際に『休みを取りやすくなった』といった声が多く挙がっており、ドライバーのワークライフバランスが充実していると感じています」と手ごたえを語った。

外国人技能実習生の受け入れや従業員同士の交流が盛ん

採用の強化に向けて、東亜物流では2024年度からインドネシア人などの外国人技能実習生を倉庫作業スタッフとして受け入れ始めた。「彼らは日本語の覚えが早く、非常に優秀で他の従業員からの評価も高い。来シーズンは後輩も増える予定で、各拠点へと展開する計画です」と菅澤部長は目を細める。ドライバー職への採用についても検討しており、正式に認可されれば積極的に採用を進めたいそうだ。

さらに従業員の定着にも注力する同社では、従業員同士の交流を大切にしている。「新年会などのイベントは積極的に開いています。また、江戸川区の花火大会の際には本社屋上を開放して鑑賞会を開いているほか、ビル内では従業員が模擬店を出店して大いに盛り上がります。毎回たくさんの従業員とそのご家族に参加していただいており、『仕事仲間とお祭り気分を味わえてうれしい』『家族みんなで毎年楽しみにしている』などと好評です」と菅澤部長。従業員同士が交流を深め合えるだけでなく、家族に会社の魅力を知ってもらえる良い機会にもなっている。

■M&Aによる企業統合で事業の拡大を図る

東亜物流は、M&Aを積極的に行って事業の拡大を図っていることも大きな特徴だ。相手は運送系の企業が中心だが、各社ごとに細かな事業内容が異なる。その利点を活かすことを目的として2024年6月に新設したのが、千葉県の湾岸市川営業所だ。ここに倉庫荷役に特化した事業や牽引トレーラーによる鋼材の運搬業務を行う事業、工場設備や精密機器の輸送設置を扱う事業などを集結させた。

「これにより、千葉エリアの運輸部門の連携ならびに輸送力強化を図りました。グループ内で協業できるようになったため、鉄骨や鉄鋼材、工場の機材といった資材の運送も行えるようになり、荷主のニーズに応える幅が広がっています」と菅澤部長は手応えを語る。

物流効率化を図るため、将来的には社内の協業だけでなく、他社との協働も視野に入れていきたいと語る菅澤部長は、地域のリーディングカンパニーであり続けるために、常に次の一手を考えている。