東商からの重要なお知らせ

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株式会社大江戸

伝統の和菓子に洋菓子をプラス!!
和洋菓子で新規顧客開拓

  • 代表取締役社長 福田 光伸 氏

株式会社大江戸

本社: 〒123-0873 東京都足立区扇2-8-5

代表者名: 代表取締役社長 福田 光伸 氏

創業: 1948年

資本金: 1,000万円

従業員数: 19名

事業内容: 菓子製造販売

URL: https://www.ooedo-wagashi.co.jp/

商品開発・販路開拓のポイント

  • ● 大江戸伝統の和の要素に、洋の考えを取り入れた新スイーツを提案
  • ● 和洋菓子のブランド「OOEDO TOKYO」を立ち上げ、洋菓子市場にも進出
  • ● トライ&エラーを繰り返し、ECサイトの販売を軌道に乗せる
左/Creme de la reine(クレームドラレーヌ):自慢の自家製あんこと豆乳ホイップクリームを、卵たっぷりの生地でサンドした新・和洋スイーツ。右/ラムショコラ人形焼:ショコラあんにラム酒漬けのレーズンを加えた、洋風な新感覚の人形焼。
左/Creme de la reine(クレームドラレーヌ):自慢の自家製あんこと豆乳ホイップクリームを、卵たっぷりの生地でサンドした新・和洋スイーツ。
右/ラムショコラ人形焼:ショコラあんにラム酒漬けのレーズンを加えた、洋風な新感覚の人形焼。
洋菓子に主役の座を奪われ廃業の危機に

──社名が「大江戸」。まさに東京土産にふさわしいですね。
福田社長
 国鉄の職員だった義祖父が「東京に遊びにきた旅行者に東京土産を楽しんでもらいたい」と、1948年に駅の販売所で菓子販売を始めたのが当社のスタートです。「大江戸」の屋号には、東京土産というテーマと、茨城出身である義祖父の「東京で絶対に成功するぞ」との思いが込められています。
創業当初はこんぺいとう、豆菓子、おこしなどの干菓子を販売していたのですが、70年代の半ば頃から、柔らかな生菓子が好まれるようになりました。その消費者の嗜好の変化に合わせてつくったのが「大江戸きんつば」。これが大ヒットして、人形焼、どら焼きと生菓子製造に注力するようになり、同時に東京駅から上野駅、さらに明治座などの劇場へと販路が広がったのです。一時期は「帰省みやげランキング」でも上位にとりあげられ、暮れから正月にかけてのころには1日に何百万円も売れていたようです。
──名前のとおり、東京の土産物の定番として地位を確立していったのですね?
福田社長
 ところが、その後はメインの売り場である東京駅構内での土産物の主流が和菓子から洋菓子へと移り、新商品が次々に登場して競争が激しくなっていきました。売上も年々下がり続け、2009年に撤退することになります。
廃業も考えたのですが、店舗が残っていた劇場からは「掛け率を上げてもいいから続けてほしい」との要望があり、売り場の規模を縮小して販売を続けました。それでも苦しい状況は変わりません。三代目である妻との結婚を機に私が入社したのは、その最も低迷している時期でした。

素材にこだわり、小豆の味を活かした甘さ控えめのあんに定評がある大江戸の和菓子。
素材にこだわり、小豆の味を活かした甘さ控えめのあんに定評がある大江戸の和菓子。
新商品を毎月発表する「大江戸ラボ」

──廃業の危機から、どのように状況を打開していったのでしょうか?
福田社長
 和菓子の世界は右も左もわからない中で、最初に取り組んだのが、かつて取引のあった問屋を一軒ずつ訪ねて販売ルートを復活させることでした。いくつかの問屋からは「今さら言われても……」と断られましたが、なんとか棚を広げてくれようとしてくれる問屋もありました。
ただ、それでも「きんつばや人形焼は他で取り扱いがあるからね……」と言われてしまいます。他と同じ商品では、棚を分けてもらえない事情があったのです。
同時期に、東京商工会議所が募集する展示会の共同出展ブースに応募、食品流通業界の大規模展示会に出展する機会をいただきました。当初はきんつばや人形焼を展示していたのですが、周りの業者はどこも毎年新しい商品を案内している。それを見て、販路を広げるためにも新商品の開発に乗り出すことにしました。
──商品開発はどのように進めていったのですか?
福田社長
 先ほども言ったように、土産物売場では洋菓子が主流になっており洋菓子と和菓子の比率はおよそ7:3です。それなら、きんつばやどら焼きなどの和菓子に洋菓子のテイストを加えてアレンジした「和洋菓子」で、洋菓子のシェアを取りにいこう、と考えました。既存の和菓子の製造ラインを活用できるメリットもあります。
最初はきんつばにイチゴやラム酒を入れてみましたが、どうもピンとこない。いろいろ試しているうちに、どら焼きならバターやクリームとの相性がよいことに気づきました。そこで開発したのが、どら焼きにバターをサンドした「バターどら焼き」や、あんとクリームを合わせてサンドしたどら焼き「クレーム ドラレーヌ」。同時に、新しいスイーツブランド「OOEDO TOKYO」を立ち上げました。開発には10カ月ほどかかりましたが、やるからには味にも、パッケージにも妥協したくありませんでした。
また、近年は冷凍スイーツがトレンドだと聞いて、冷凍の生菓子づくりにも取り組みました。クリームは冷凍に適した豆乳クリームを採用し、皮も解凍したときにふわふわな食感が再現されるよう試行錯誤しました。
──新しいスイーツブランドへの反応はいかがでしたか?
福田社長
 催事や展示会に出展したところ、幸い来場したお客さまから好評をいただき、手ごたえを得ることができました。その効果もあって、こちらが営業しなくても問い合わせが増えていきました。バターどら焼きなどの他にも、クーベルチュールチョコレートを練り込んだあんにラム酒漬けのレーズンを加えた「ラムショコラ人形焼」が人気です。
東京駅の地産品ショップ「のもの」でも、定番の人形焼の他に「ラムショコラ人形焼」を置いてくれるようになりました。地方のスーパーからも注文が入るようになり、今年のお盆は製造ラインがパンクしかけてうれしい悲鳴を上げましたね(笑)。
──商品が「営業」してくれ、販路が広がっているのですね。今も新商品の開発に取り組んでいるのでしょうか。
福田社長
 空き部屋になっていた昔の開発スペースを改装し、新商品のスイーツを発表する「大江戸ラボ」という企画を行っています。
月に1回は新商品を出さなければならない“ノルマ”を自ら設けてしまったので大変ですが(笑)、お客さまから直接感想を聞けたり、ニーズを把握できる貴重なマーケティングの場になっています。告知はインスタグラムのみで行っていますが、毎月リピートしてくれるお客さまも増えています。

大江戸ラボ:月に一度、本店裏の開発室にて季節の和菓子や和洋を混ぜ合わせた新感覚のお菓子を販売。
大江戸ラボ:月に一度、本店裏の開発室にて季節の和菓子や和洋を混ぜ合わせた新感覚のお菓子を販売。
実践しながらマーケットに合わせていく

──ECは楽天市場のほか、自社のサイトでも販売していますね?
福田社長
 コロナ禍の間は劇場での売上が激減していたのですが、逆にECが非常に好調で、おかげで赤字にならずにすみました。
コロナが一段落した今は、ECのほうは少し落ち着いているのですが、今度はおみやげ需要が復活し、劇場にも人が戻ってきています。やはりチャネルはたくさん持っていたほうがいいと、コロナ禍を経て改めて実感しましたね。
──ECがうまくいったポイントを教えてください。
福田社長
 「ECを始めれば売上が上がる」と考えている人は多いのですが、そんな魔法のようなものではありません。
私の場合は、月並みかもしれませんが「売上=アクセス数×転換率×客単価」の基本的な方程式をベースにトライ&エラーを繰り返したことに尽きます。そのトライ&エラーを繰り返すことで、次にやるべきことが見えてきて、愚直にそれをつぶしていくことで売上に結びついていきました。
──経営において大事にしていることは何ですか?
福田社長
 人の言うことを鵜呑みにしないこと。例えば「ECでは売れないよ」と聞いたとしても、その人がECを始めた時期が悪かったのかもしれないし、商材が合わなかったのかもしれません。SNSにしても、明治座のお客さまがXに投稿した商品の写真が拡散されて在庫が足りなくなる、という思わぬ現象が起こります。自分でやってみて初めてわかることのほうが多いのです。
この事例集でも、さまざまな飲食業の成功体験を知ることができると思います。でも、自社で同じ成功が得られるかどうかはわかりません。実践してみて、自社の商材や規模感にやり方、マーケットにどう合わせていくかが大事ですね。
そのためには、「今後どうしたいのか」という明確なゴールを設定すること。補助金が出るからという理由でやみくもに始めるのはお勧めしません。
──和菓子という歴史のある業界で新しいことにチャレンジする姿勢には、同じ飲食業の皆さまも勇気づけられます。
福田社長
 最低賃金も上昇する中で、私たち飲食業にとって人件費は大きなコスト要因になります。もちろん機械化・省力化の努力はするのですが、この先値上げを決断しなければならない局面を迎えると思います。
でも、きんつばのような定番商品を高く売るのは難しいし、価格競争になりやすい。そうなると、新しい商品をつくるしかありません。知恵を絞って世の中にない、付加価値の高い商品をつくり、自信を持って案内できるように努力していきたいです。

「ラボでの商品開発も、Webで商品を売ることも、すべて楽しみながら挑戦することを大切にしています。ただ自分たちだけが楽しむだけでなく、私たちの挑戦がスタッフやお客さまの“うれしい”につながるようにしたいですね。」(福田社長)
「ラボでの商品開発も、Webで商品を売ることも、すべて楽しみながら挑戦することを大切にしています。ただ自分たちだけが楽しむだけでなく、私たちの挑戦がスタッフやお客さまの“うれしい”につながるようにしたいですね。」(福田社長)
専門家のココに注目!

既存商品をベースにした新商品開発

  • きんつばやどら焼きなどの定番商品が洋菓子にシェアを奪われ、売り上げが徐々に低下。主力の売り場が閉鎖に追い込まれた際に気づいたことは、市場で差別化できる新商品の必要性だった。そこで「和洋菓子」に着目。既存の製造ラインを活用しつつ「自社の商材や規模感、やり方、マーケットにどう合わせていくかが大事」と語る開発手法に注目したい。

若い世代の新たな客層を獲得

  • 新しく立ち上げたスイーツブランド「OOEDO TOKYO」。催事や展示会に出展したところ、指名買いを獲得するほどに発展。新たな客層を獲得する秘訣は味や商品コンセプトが明解なだけでなく、パッケージを含む高い商品力にある。