2025年8月7日更新
NEW 株式会社グリーン・ハーモニック
所在地 | 長野県長野市篠ノ井布施五明488番地8 |
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代表者 | 原田 信治 |
資本金 | 100万円 |
従業員数 | 130人 |
設立年 | 2018年5月 |
企業HP | https://www.greenharmonic.com/ |
多くの地域社会で超高齢化が進む中、課題は複雑化し一事業者だけでは解決できないことが増えている。そんな中、地域の専門店が連携して地域の課題解決を目指す「ローカルプラットフォーム(LPF)」という新たな取り組みが始まっている。LPFとは、地域に根ざした様々な業種の事業者が連携し、住民の困りごとをワンストップで解決する事業モデルだ。
長野市を拠点とするLPF「なんでもかんでも長野」は、コスモス・ベリーズ(後述)加盟店の株式会社グリーン・ハーモニック(家電販売等)が事務局を務め、リフォーム会社や人材派遣会社など、地域の専門店10社で構成されたローカルネットワークだ。顧客のニーズを共有し、それぞれの得意分野を活かしながら、生産性の向上や顧客数の拡大、地域への貢献を実現している。
地域密着型店舗の強みを活かした、家電販売だけに留まらない新たな仕組みづくり

グリーン・ハーモニックの原田社長
かつて家電業界は、約8割が町の電気店であった。しかし、家電量販店の台頭とともにそのシェアは低下し、店舗数も現在は減少の一途をたどっている。町の電気店は品揃えが系列メーカーに限定され、仕入れ単価も高くなりがちであるのに対し、家電量販店は多数のメーカーの商品を扱える上、スケールメリットを活かして低価格で商品を仕入れることが可能だ。
一方で、町の電気店には家電量販店にはない強みがある。訪問販売や家電設置を通じた、顧客との強い信頼関係だ。近年では高齢化の影響により、電気店の販売員に対して家電の相談のみならず、生活の困りごとを相談するケースも増えてきたという。
そんな中、地域の電気店再生のため、2005年に設立された会社がコスモス・ベリーズ株式会社だ。同社はヤマダホールディングスの100%子会社として、家電量販店(ヤマダデンキ)の強みを町の電気店へ展開。ヤマダデンキとの共同仕入れシステム等を提供することで、町の電気店が複数のメーカー商品を扱え、量販店並みの原価で仕入れ可能になる仕組みを整備している。コスモス・ベリーズの牧野氏は「支援サービスの中心は、家電の商品供給、情報提供、物流、発注システム、成功事例の共有などです。設立当初の加盟店数は121店舗でしたが、20年間で3,000店舗以上にまで拡大しました」と語る。
地域密着で家電販売から草刈り、リフォームの提案まで、幅広くライフケアサポート事業を展開するグリーン・ハーモニックは、コスモス・ベリーズの加盟店でもあり、地域密着店と加盟店の両方の強みを活かし、顧客のニーズに応えている。
グリーン・ハーモニックの原田氏は、「顧客が求めているのは、『商品を安く買えること』と『突発的な相談にも、迅速かつ丁寧に対応してもらえること』の2点です。地域密着店としてその2つの需要に応えるべく、私は個人事業主であった頃から15年にわたってコスモス・ベリーズに加盟し、家電販売のプラットフォームを活用しています。」と話す。
地域の専門店同士が協業。相互に連携し、地域の多様なニーズに応える

リフォームのサポートも行う
しかし、事業を続けていくにつれ、顧客からの相談が家電販売や草刈りに留まらないほどに幅広くなってきたという原田氏。「幅広くお客様のお困りごとに対応するうちに、水回りの相談やリフォーム工事の相談など、自社だけでは対応できないことが増えてきました。相談いただけるのは嬉しいけれど、どうしたら解決できるだろうかとと悩んでいたのです。そんな時に、ちょうどコスモス・ベリーズが提唱するLPFのビジョンを聞く機会がありました。まさに自分のやりたかったことだ!と共感し、LPF「なんでもかんでも長野」の設立を決めました」
LPFは、地域の多様な専門店が連携し、顧客の多様な「困りごと」をワンストップで解決することを目指す事業モデルだ。例えば、普段から利用している家電販売店に「パソコンの調子が悪い」と相談することはできても、「水道から水が漏れている」「家の壁を塗り替えたい」といった相談は、従来の「本業だけ」のビジネスモデルでは対応してもらえない。
そこでLPFでは、地域の家電販売店、工務店、リフォーム業者、便利屋、さらには人材サービスなど、異なる専門店が手を取り合い、一つの協力ネットワークを形成。顧客は「いつもの信頼できるお店」に相談すれば、たとえそのお店の本業と異なる依頼でも、LPF内の別の専門家が対応してくれるという仕組みである。本来であれば、別の業者を探さなければならない機会も窓口が一本化され、多様なサービスを受けることが可能になる。
LPF「なんでもかんでも長野」は、2025年で設立から丸7年。現在、人材派遣会社や工務店、NPO法人、保険代理店など、10社が参画している。「2024年度は『なんでもかんでも長野』に対して416件の問い合わせがあり、うち323件が売上に結びつきました。家電関係に限らず草刈りなどの軽作業のお問い合わせも非常に多いです」と原田氏は言う。「イベントなどの大規模なPRは行わず、主に各々の事業者が接客や雑談の中から困りごとの種を拾い上げていきます。こうした小さな積み重ねが実績に繋がる。実際、請け負った323件のうち、約6割がリピート客による依頼です」
現在、LPFは「なんでもかんでも長野」のほか、上越市・魚沼市・那覇市の計4ヵ所で稼働しているが、さらにLPFを全国的に展開していく上では課題も残る。最大の課題はLPFを率いる事務局(リーダー店舗)の資質だという。LPFの理論を提唱・普及しているコスモス・ベリーズの牧野氏は、「リーダーが本業に追われ、プラットフォームが自然消滅した例もあります。LPFのビジョンを深く理解し、横の連携だけでなくコスモス・ベリーズ本部との連携も保持しなくてはなりません。」と話す。
知識・技術研修や専用の情報サイトにより、加盟店を多角的にバックアップ

コスモス・ベリーズの牧野社長
コスモス・ベリーズはLPFの参加企業に対して、多角的なバックアップ体制を整えている。その中心にあるのが、家電に関する知識・技術の研修提供、LPFを補完するネットワーク整備、そして中小事業者の業務を効率化するDX支援だ。牧野氏は、「ヤマダデンキの保有する膨大な商品知識を異業種向けにも展開することで、販売スキル及び接客対応力の底上げを図っています。加えて、配送・設置工事のインフラを異業種でも使用できるよう整えている状況です」と述べる。
また、新たなLPFの設立推進のため、加盟店間の連携を促進する仕組みとして、加盟店限定の情報サイトの提供を始めている。サイト内では、発注情報や業種別の業者検索などが可能だ。たとえば、顧客から草刈りの相談を受けたものの自社では対応できない場合、同じエリアに登録されている草刈り対応可の事業者を検索して直接連絡をとることができる。「検索機能には代表者の顔写真や所有資格、対応可能な業務、企業理念などの詳細も表示されているなど、ユーザーが信頼感を持って連携をとるための工夫が施されています。加盟店間の連携が強化されることにより、新たなLPFの設立につながることを期待しています」と牧野氏は言う。
今後について、牧野氏は「コスモス・ベリーズは町の電気店の支援から始まったが、多様な地域のニーズに応えるために今後はスーパーや薬局などとの連携によって地域包括的なネットワークの構築を目指したい。買い物弱者の支援及び健康管理を含めた新たなサービス提供も視野に入れ、『新しい商店街』のような役割を果たすことが目標です」と展望する。原田氏もまた、「商店街は自ら出向かなくてはいけませんが、LPFでは私たち事業者の方からお客様へ寄り添ってまいります。より多くの地域住民に頼っていただけるプラットフォームを育てていければ」と語った。