泉電池工業株式会社(本社:大田区大森、社長:田中 宏征)は、蓄電池、電源装置の販売・据付工事の請負や電気設備の保守点検サービスを行う建設業です。GSユアサの代理店として、鉄道会社や百貨店、自治体などに蓄電池などを卸しています。

保守メンテナンス事業



デジタルシフト・DXの取り組み・効果

 田中社長が入社した際、自社のアナログな業務体制を痛感し、コロナ禍前の2014年頃から田中社長自身が旗振り役となって、デジタルシフトの取り組みを開始。企画・組織開発室の社員が担当となり、主に①テレワークの導入、②顧客・売上・販売管理のシステム化、社内文書のデジタル化を進めました。

取り組み①:テレワークの導入
 営業の担当者からの「外出先で社内ネットワークにつないで、資料作成等の作業をしたい」といった要望に応えるため、2014年頃からモバイルワークを導入。モバイルワーク可能なパソコンを営業職の従業員に配付して、外出先でも作業をできるようにしました。日本国内で新型コロナの影響が出始めた2020年3月頃、テレワークの試験導入を開始、同年4月には全従業員への導入を完了しました。
 現在もBCP対策・働き方改革を目的として継続して実施しています。継続して実施するにあたり、全従業員と協議し、コミュニケーション機会の喪失や業務遂行の妨げにならない範囲として、週2回以内・月4~6回程度等取得回数ルールを職種別に設けています。継続してテレワークを実施することで、従業員の通勤時間を削減でき、プライベートな時間を充実させることで、従業員満足度が向上し、離職防止にもつながっているそうです。また、テレワーク実施前より育児中の女性等、入社希望者が増えていることも嬉しい効果だと言います。

取り組み②:顧客・売上・販売管理のシステム化、社内文書のデジタル化
 同社では2014年頃まで、営業職が顧客と打合せをした際には議事録をWordで作成し、上司へファイルを添付してメールで確認を依頼、外付け共有ハードディスク内の個人フォルダに保存し、さらに紙に印刷してファイリングしていました。また、従業員のスケジュールや社用車の予約・利用状況などをExcelで管理し、外付け共有ハードディスク内に保存して、紙でも掲示していました。従業員からは、「議事録を時系列で確認したい」「社内外どこからでも作成・確認・修正できるようにしたい」などの声が挙がっていました。また、事業拡大等によって担当者間での引継ぎ頻度が増加していたため、「引継ぎ漏れなどを防止したい」といった意見もありました。それらを解決するため、パッケージ化されたクラウド型営業支援システムを導入。しかし、システム移行に関する説明会を行わないまま導入し、システム利用の規則・ルールの設定も不十分だったため、従業員が使いこなせない状況に。そこで、システムを自社に合うように改善し、ルールも明確にして社内へ共有した結果、徐々に社内の雰囲気が良くなり、管理体制も改善されました。
 管理職がシステム上で部下が作成した資料を確認・承認できるようになり、情報共有がスムーズに行えます。加えて、従業員も議事録等の資料や社内のスケジュールを簡単に作成・確認できるようになりました。また、紙の保管スペースが大幅に削減されました。環境活動への取り組みとして、同社は「A4コピー用紙の削減」を毎年目標に掲げていますが、デジタルシフト前の2019年と比較すると、3年間で1人当たり約36%の紙の削減を実現しています。

今後の展望

 デジタルシフトをして社内体制が安定してきたので、今後は“営業のDX化”を目指しています。2021年頃に1度挑戦していますが、オンライン会議不可の取引先等が多く、失敗してしまったため再度模索中。また、リアルでの顧客との打ち合わせ時には、紙資料ではなくタブレット端末等を用いて、画像や映像で自社サービスを紹介できるよう準備を進めています。


中小企業経営者へのメッセージ

 実際にデジタルシフトを担っている企画・組織開発室の万福氏は、次のように話しました。
 「デジタルシフトの推進は、メイン業務と兼務していると、デジタルシフトを集中して推し進めることが難しいため、社内に専任の担当者を設けた方が良いと思います。専任担当者が情報収集して、経営者と従業員の橋渡し役をする方が、双方の納得感が得られ、スムーズに進められると考えています。また、デジタルシフトすることで新たな課題が出てくるかもしれませんが、それはデジタルシフトをきっかけにして、たまたま表に出てきたものであり、実は元々抱えていた問題が露呈しただけなのかもしれません。そして、社内の体制や規則を改善することにもつながります」
 また、デジタルシフト推進にあたり、旗振り役となった田中社長は、次のように話しました。
 「『システムを使用する現場へのヒアリング』『従業員への丁寧な研修』『導入したシステムやその運用ルールの見直し』を大切に、推進していただきたいです」



田中 宏征社長




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