コロナ克服・新時代開拓のための経済対策について
東京商工会議所
ワクチン接種効果と国民の感染予防努力により、新型コロナの感染拡大がようやく落ち着き、日常生活回復への動きが加速している。この度、この流れを加速化させ、傷んだ中小企業経営や地域経済の立て直し、将来の持続的な成長を目指した「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が閣議決定されたことを歓迎したい。
まず、優先すべきは、今後の感染拡大の振幅にも耐え得る医療提供体制を構築し、医療ひっ迫の回避を確実なものとして、国民と事業者の安心感を醸成した上で、活動レベルを引き上げていくことである。政府には、病床確保や治療薬のアクセス向上等を実現するととともに、追加接種を含めたワクチン接種の推進や、経口治療薬の供給を進めていただきたい。あわせて、経済安全保障の確保に向けて、半導体など重要産業政策を再構築する中で、非常時に備え、ワクチンや治療薬の国内開発も強力に推進されたい。
困窮する事業者支援として、給付金や資金繰り支援などが講じられたが、手続きの簡素化など迅速な実行に向けた環境整備が不可欠である。足元では、資源価格の上昇や円安、最低賃金引上げによる人件費増加などのコスト負担増が幅広い業種で発生し、多くの中小企業で収益圧迫への懸念が高まっており、コスト増加分の適正な価格転嫁や取引適正化も早急に進めていく必要がある。また、飲食・宿泊・交通・イベント・観光関連事業者等の売上確保に向けて、ワクチン・検査パッケージ等を活用し、思い切った需要喚起による地域経済を再生していくことも重要であり、GoToトラベル事業は、広く中小企業が裨益する形で見直し、早期再開を期待したい。
「成長と分配の好循環」の実現に向けた戦略と対策が示されたが、分配原資となる付加価値を拡大させる政策が不可欠であり、その鍵は中小企業の生産性向上である。サプライチェーンや地域コミュニティを支える中小企業の生産性や付加価値創出力を高めていくことが日本全体の生産性を高め、持続的な経済成長に繋がる。政府には、中小企業のデジタル化による生産性向上や、ビジネス変革、事業再構築、創業、事業承継・再生への挑戦を強力に後押ししていただきたい。我々商工会議所も引き続き、中小企業の挑戦を全力で支援してまいる所存である。