~流通サービス業の実践的経営改善ガイド~
参考 流通・サービス業の現状と課題
4.価格転嫁と生産性向上に向けた課題の整理(SWOT分析)
ここまで整理してきた内部環境分析と外部環境分析の結果を踏まえ、今後の自社戦略の方向性を検討することがSWOT分析の肝となる。具体的には、内部環境と外部環境を以下の表のような形で整理し、クロスして考えることで、強みや機会を上手に組み合わせて脅威に対抗できないか、などを検討するのである。
では、ここで実際に簡単な例で考えてみる。ある老舗のケーキ店は似顔絵ケーキが人気で、常連顧客で全体の売上の90%を売り上げている。このケーキ店の内部環境と外部環境を以下の通り整理した(図表15)。
この内部環境と外部環境をクロスさせて、弱みや脅威に対抗する方法を考えることで、戦略の方向性が見えてくる(図表16)。例えば、強みである「商品の独自性」を前面に押し出していくことで、脅威である大手チェーンに対抗できないか、と考えることもできるし、弱みである新規顧客の獲得は、機会であるSNSをうまく活用することで効率的に実施できる可能性もある。さらに、社内の管理がアナログで手間がかかっているという弱みは、機会であるDXツールの利用でカバーできる可能性がある。
このように、内部環境と外部環境を組み合わせ、クロスしながら考えることで、長所を伸ばす(強みと機会を組み合わせ、どのように販売につなげるのか等)、あるいは短所をカバーする(弱みの克服や脅威への対応)ための方向性が見えてくる。ダーウィンの進化論では、強いものではなく環境に適応した種が生き残ると言われる。SWOT分析は外部環境を分析し、自社の内部環境を踏まえたうえで、どのように適応するべきかを考える手法である。企業も生物と同様に環境に適応した事業者が生き残るのだとすれば、こうした手法を上手に活用することが肝要である。
また、将来の自社のありたい姿を考えたSWOT(特に強みと弱み)を作成してみることもできる。将来のありたい姿のSWOT分析の結果と、現在のSWOT分析の結果を比較することで向かうべき方向性が見えてくることもある。さらに、過去のSWOT分析の結果と今を比べてみることで、今までの取り組みと結果を振り返ることも可能になる。
参考文献
「中小企業白書」, 中小企業庁「オスロ・マニュアル」, OECD&Eurostat

- はじめに
- 好事例に見る流通・サービス事業者の経営改善アプローチ(実践編)
- 流通・サービス事業者の経営改善アプローチ(理論編)
- 流通・サービス業の現状と課題