東京都における大規模小売店舗の必要駐車場台数の「地域の基準」の策定(中間のまとめ)に対する意見
東京商工会議所
大規模小売店舗立地法について、当所は「大規模小売店舗立地法指針見直しに関する意見」(平成16年11月)、「『大規模小売店舗立地法第4条の指針改定案の策定に当たって(案)』及び『大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき事項に関する指針(改定案)』パブリックコメントに対する意見」(平成17年2月)、において、大都市特有の大型店の課題を踏まえた意見を申し述べてきた。「大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき事項に関する指針」の改定(平成17年3月30日告示)により、指針については「法運用主体が弾力的に判断し、運用を行うことが期待されている」ことが明記された。それに伴い東京都においても大規模小売店舗の必要駐車場台数について「東京都大規模小売店舗立地審議会」にて検討を行い、今般「地域の基準」の策定にあたられたことは評価される。しかしながら、本基準案は、公共交通機関の利用分担率が非常に高いことなど、都市部の地域事情が十分に考慮されたものとは言い難い。良好な商業集積を形成するという視点から、地域特性、利用の実態などを十分に配慮した策定が行われることを期待する。また、地域の魅力や個性を活かしたまちづくりを推進するためには、地域商業者による連携と協働は重要な課題である。東京都としても各商業者の地域貢献への意識向上を促し、地域が一体となった活性化への取り組みを支援されたい。地域商業の総合的な発展を目指し、規制を最小限に抑えつつ、こうした連携・協働の気運を高めることにより事業者の自主的な環境整備を促すことが望ましいものと考える。以上のような認識を踏まえ、次のとおり意見を申し述べる。
提言
記
1.地域の特性と利用の実態に配慮した適正な「地域基準」の策定
○ピーク時在庫台数の実態を見る限り、区部Aでは、都基準案で義務付けられた必要駐車台数の半分にも満たない利用状況である施設が55.6%にものぼり、依然として必要駐車台数の「過剰」が解消されていないことが明らかである。都全体や他地域においても、駐車場台数の不足は解消されているものの、過剰の解消は小幅にとどまることから、大幅な規制の緩和が必要である。
○都市部においては、都市計画決定、用途地域変更が十分に進まず、中高層住居専用地域や準工業地域におい て、小売業の集積が高い地域が多い。このような実態を踏まえ、国の指針に準じ「商業地区・その他地区」に分けることなく、基準を設置することは事業者の利便に資するものと考えられる。しかしながら都基準案により、規制強化となるケースが多く見受けられる。特に区部Bの商業系地域においてはそれが顕著であり、事業者の出店コストを高め、良好な商業集積形成の妨げとなる可能性が危惧される。
○業種・業態ごとにきめ細かい基準を設けることは困難であり、ある程度画一的な基準となることは理解ができる。しかしながら、実態として、商圏や業種、業態に応じて自主的に基準を上回る駐車場台数を確保し需要に対応している店舗や、常に設置台数に満たない店舗が多数存在することから、画一的な基準の限界を考慮し、実状に沿わない規制強化となることのないよう、最小限の義務付けとしたうえで事業者の自主的な環境整備を促すことが望ましい。
○都区部においては、都市計画駐車場、届出駐車場等を含めた駐車施設の利用率は、平日で約4割、休日で約6割にとどまり、駐車場の整備量と比べて十分に利用されていない状況にあることから、路上駐車の削減、渋滞の緩和に向け、既存駐車施設の効果的な活用策を検討することが必要である。また、環境に優しいまちづくりの観点からも、パーク&ライドの普及等、公共交通機関の利用を促すことが重要である。大型店の必要駐車台数についても、時代変化に対応した都市機能の更新・向上と、国際都市に相応しい都市空間の形成という都市政策・まちづくりの総合的な観点から、諸政策との連携・整合性を図りつつ、適正な基準を策定することが望まれる。
2.基準策定に係る透明性・公平性の確保
○都区部においては、商業系地域(商業地域・近隣商業地域)の割合をもとにした行政区分のエリア分けにより、同様の特性をもつ立地にもかかわらず、区によって必要駐車台数に格差が生じる。公平性を確保するために、エリア分けの根拠について十分な説明を要するとともに、繁華街・近隣型など店舗の立地する地域特性を考慮した、柔軟な運用が求められる。また、算定式についても、より明確な根拠を示すと同時に、基準の透明性・公平性を確保することが必要である。
東京商工会議所
地域振興部
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