2026年 小林会頭 年頭所感 変革と価値共創による日本経済の再出発
東京商工会議所
明けましておめでとうございます。
2026年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
【成長の果実を賃金や投資へ】
さて、昨年の世界情勢は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化といった地政学リスクに加え、関税・輸出管理・産業補助・投資審査などが複合的に作用し、通商環境の再編が進行するなど、不確実性が一段と高まった一年でありました。
国内に目を向けますと、日本経済は賃金と物価の好循環に向けた兆しが明確になりつつありますが、依然として物価上昇に賃金が追いつかず、実質賃金の着実な回復が最大の課題です。長年にわたり染みついたデフレマインドを払拭し、成長の果実を賃金や投資へ確実に循環させることこそ、日本経済の「再出発」に向けた最大の鍵であります。
こうした中、国政においては、憲政史上初の女性総理として高市総理が誕生し、就任直後からトランプ米大統領をはじめ各国首脳との会談を精力的に行い、首脳間の信頼醸成に努めてこられました。また、高市総理が議長を務める「日本成長戦略会議」におきましても、AI・半導体、造船、量子など17の戦略分野への投資に加え、人的資本の強化、労働市場改革、スタートアップ支援、賃上げ環境整備など、将来の成長力を高める政策課題が明確に示されました。国の成長戦略と歩調を合わせつつ、民間の現場から具体的な提言と実行を積み重ねていくことが、私どもの責務であります。
【成長型経済への転換を確固たるものに~「変革」と「価値共創」】
わが国の経済は、成長型経済への移行に向けた正念場を迎えています。しかし、企業数の99.7%、雇用の約7割(3大都市圏を除くと約9割)を占める中小企業は、円安・原油高に伴う原材料・エネルギー価格などの高騰、人手不足や労務費の増加、さらには消費低迷など多くの課題に直面しています。
成長型経済への転換を確固たるものとするためには、個々の企業が自己変革を果たし、変化する外部環境に適応していくなど、絶えず「変革」に挑み続ける姿勢が重要です。同時に、不確実性の時代においては、多様な主体が互いの強みを持ち寄り、新たな価値を共に創り、共に分かち合う「価値共創」の発想こそが、これからの日本経済を支える基盤になると確信しています。
【「変革と価値共創による日本経済の再出発」に向けた三つの重点課題】
こうした考えから、私は今期のスローガンとして「変革と価値共創による日本経済の再出発」を掲げました。このスローガンの下、以下の3点を重点課題として当所の運営に取り組んでまいります。
1点目は「成長型経済の実現に向けた環境整備」です。成長型経済を実現するには、コストプッシュ型インフレから、需要拡大によるデマンドプル型インフレへと転換し、賃金と投資の好循環を持続させる必要があります。そのためにも、適切な価格転嫁と取引適正化の推進は、賃上げ原資を確保する観点から官民を挙げて一層強化すべき課題です。加えて、経済安全保障とエネルギー安全保障の両立、過度な円安の是正に向けた金融政策、人手不足への対応、持続可能な全世代型社会保障制度の構築につきましても、引き続き要望してまいります。
2点目は「変革と価値共創による中小企業・小規模事業者の『稼ぐ力』の強化」です。成長型経済の実現には、中小企業・小規模事業者の付加価値と生産性の向上が不可欠であり、新分野進出、DX・GXの推進、知的財産の創造・保護・活用、海外展開、スタートアップとの連携などへの挑戦が求められます。また、事業承継を契機として、より強く魅力ある企業へと生まれ変わることが重要です。
3点目は「日本の成長を牽引するゲートウェイ・東京のさらなる発展」です。東京が、国内外の経済循環における「ゲートウェイ」としての機能を果たし、地方との共存共栄を図るためにも、首都圏空港を核とした交通ネットワークの強化、インフラの老朽化対策、災害対応力の強化に加え、文化・芸術を含めた「国際文化都市」としての東京の魅力向上に取り組んでまいります。
【「現場主義・双方向主義」の発展】
私は「原点は対話である」という信念の下、会頭就任以来、全国各地や23支部を訪問し、地域や事業者の生の声を伺い、各地域が抱える課題の把握に努めてまいりました。今後は「現場主義・双方向主義」をさらに発展させ、現場の声に真摯に向き合いながら、中小企業と地域の活性化、日本経済のさらなる成長に向けて、皆さまと共に全力を尽くしてまいります。皆さまの多大なるご支援、ご協力をお願い申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。
小林 健