竹田社長


取り組みのポイント

  • 事業の方向性を常に発信し、海外展開事業の取り組み機会を得る
  • 援者の伴走支援を受けながら、海外展示会を成功に導く
  • 商品の価値を裏付けるデータを産学連携で取得


ご縁につながる発信を心掛ける


 当社は形状記憶・超薄型インソールの開発・販売を行っています。インソールというと一般的にはクッション材として認知されていることがほとんどで、サポートタイプのインソールでは高齢者向けの分厚い商品が主流ですが、当社の商品は、外反母趾や足底筋膜炎といった足のトラブル予防に重点を置いていることが特徴です。体の不調を感じる女性の声を基に、薄型でおしゃれなパンプスにも装着することができるインソールを開発しました。
   創業して11 年が経ちますが、「ご縁」を大切にすることを創業時からの理念にしてきました。ご縁は取引先といった人の面だけでなく、商品との関わりも含めて全てです。そうした機会を得るために、常に発信することを大切にしています。言葉にして誰かに伝えておくことで、誰かがそこに気づいてくださり、ご縁につながっているのだと思っています。


「ご縁を大切にしている」と話す竹田社長


支援を受けながら海外展開プラン策定と海外商談会に挑戦

 当社の主力商品が2018 年に完成し、海外も含めて販促に力を入れようとしていた矢先、コロナが発生しました。元々出展を予定していた展示会も中止となってしまいましたが、幻となった展示会のガイドブックを見た東京都中小企業振興公社の担当者から、「中小企業ニューマーケット販路開拓支援事業」に取り組まないかとお声がけいただきました。この事業は販路開拓に詳しいナビゲーター(支援者)がハンズオン型で販路開拓支援を行うもので、海外展開も含めて様々な相談を行っていました。
 ご相談内容が担当者間で伝わっていたのでしょうか、その後ご縁があり、別の担当者から海外展開事業に取り組まないかとお声がけをいただきました。事業では海外展開プランの策定に取り組みましたが、初めての海外展開で何から書けばよいか分からず、一から丁寧に指導いただきました。
 その後、海外商談会に参加するのですが、最初に参加した台湾では説明資料も簡素であるなど、準備不足で上手くいきませんでした。またインソールの需要は理解していましたが、想定していたよりもユーザーに行き着くまでの商流が深いことも初めて知りました。


台湾での商談会


バンコクの展示会で手ごたえをつかむ

 台湾での商談会の後、海外展示会に出展しました。出展先はバンコクです。暑い国であるためニーズがあると思わず、そこまで期待していなかったのですが、販売体験をすることが目的の展示会であったため、出展することにしました。現地では公社の担当者と相談してデモンストレーションを実施したのですが、これが功を奏しました。当社の商品は履いた瞬間に体の変化を感じることができる商品であるため、現地ユーザーの評判は好評でした。結果40足販売できた上に現地のパートナーにも出会うことができました。公社の担当者は、ショップチャンネルやバイヤーの経験もあり現地に精通していたため、バンコクの方が向いていると思い勧めてくださったのだと思います。

バンコクの展示会


 出展後は、公社の担当者とともに振り返りを行い、具体的なアドバイスをいただきました。例えば、バンコク展示会では、靴のサイズにおいてイタリアサイズで表記していることを認識しておらず、国に応じたサイズチャートを準備することの重要性に気付きました。また、決済方法においても日本で使っていたカードリーダー端末が海外では使えず苦労しました。小さなことでも質問しやすいので、一つ一つナビゲーターからアドバイスを受けることで、迷わずに進むことができます。


作成したサイズチャート表


産学連携で商品価値を伝えるエビデンスを取得

 販促活動の支援を受ける中で、商品の良さを伝えるための客観的なエビデンスの必要性について指摘され、産学連携を通じてデータを取ることに取り組むことにしました。産学連携を行う上で最も苦労したのはパートナーとなる先生の探索です。医学系の先生を探して学会などにも多々足を運びましたが、当社が欲しい分野の研究をしている先生が見つからず、意気投合する先生に出会えるまでに2年かかりました。また、必要とするデータもピンポイントに依頼することが出来なかったため、有効なエビデンスになるまでには1年かかりました。しかし、連携した先生が当社の商品に対する理解があり、特定の分野にフォーカスすることを提案していただき、販促をする上で有益となるデータが取得することができました。


施策活用を契機に事業計画の見直しを図る

 当社は販路開拓を進める上で様々な施策を活用していますが、初めから助成金・補助金の情報に精通していたわけではありません。日頃から公社や商工会議所に相談をする中で、ご紹介いただいたものが殆どです。自身がやりたいことを常に発信していることで、適切な情報を提供いただくことができているのだと思います。また、各種施策の活用は事業の整理や発展に良い影響を与えています。例えば販促活動に必要なツール作成のために申請した小規模事業持続化補助金では、不採択も経験しましたが、その過程で自社のビジョンや事業計画を見直す良い機会となり、その後の採択につながりました。定期的な事業計画の策定を通じて、自社の方向性を客観的に見直せることが重要で、一部は展示会での自社紹介資料などにも活かせています。


支援を受けて作成したタイ語のチラシ


新たな国への事業拡大とその先にある女性起業支援を目指す

 様々な施策を活用して販促に取り組んだことで、売上はコロナ前の水準まで回復しました。今後は商品の認知度向上にさらに注力するなど、販促活動を強化することに加えて、中価格帯の商品を展開させる予定です。そのための新たなエビデンスの取得にも取り組んでいます。また、海外展開については、北米やUAE、トルコなど中東に注力したいと思っており、今後も海外展示会に継続的に出展していく予定です。将来的なビジョンとしては、創業や海外展開の取り組みの経験を活かして、起業を目指す女性たちに知見やアドバイスを提供したいと考えています。これは創業したころからの目標でもあり、現事業の拡大とともに実現に向けて活動していきたいと思います。





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