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導入企業事例

導入企業事例

株式会社カノウプス

株式会社カノウプス 代表取締役 碓田 シン一 営業部部長 松村 史明

日本屈指のドラムメーカーで、
中古・ビンテージ品の品揃えも豊富。
進取の気性で音楽業界を牽引

  • 受発注
  • 製造、生産管理
  • 顧客対応・営業
  • 間接業務
  • 6名以上~10名以下
  • 販路拡大
  • 業務効率化・省人化・業務改善
  • ミス削減・不良率低減
  • ECサイト
  • 各種SNS(YouTube、Facebook、インスタグラムなど)
  • 生産管理システム、販売管理システム(製品・部品在庫管理、原価管理など)
  • その他

各販売チャネルでの煩雑な業務を
改善するためシステム導入

スマートものづくり
事例MOVIE

1現場で課題と向き合う

実店舗やECサイト・ECモールの
在庫を一括で管理できない。
業者に頼んだシステムが
役に立たない。

大学時代にドラマーとしてバンド活動をしていた現社長が卒業後に立ち上げたのがドラムショップカノウプスです。楽器なら何でも売るという楽器店でなく、当時アメリカで注目されていた事業形態であるカテゴリーキラー(特定の商品分野において、豊富な品揃えを徹底し、圧倒的な低価格で販売する業態)としてドラムに特化した専門ショップを創業しました。同時に海外製品の個人輸入を開始し、自社で個人輸入通関できるNACCSのシステムもすぐに導入しました。海外メーカーと総代理店契約を結び、さらに、自社のウェブサイトも1997年に開設。その頃からECサイトでの販売も行っていました。
 しかし、業績が良くなると海外メーカー製品の販売権を大手商社に奪われ、会社存亡の危機に立たされました。その結果、元々市販されているドラムの音に疑問を感じていたこともあり、オリジナルブランドのドラムを作ることとなりました。メーカーとしてドラムを作る以上、製造工程の簡略化が必須となり機械化を推進しましたが、私が考える機械設備を国内で製造するためには、予算が約1億円を超えるため、単身で台湾に乗り込んで現地の機械メーカーやIT技師と協力関係を作り、約5年の歳月をかけ最新の技術を盛り込んだ製造機械設備を約1,200万という破格の値段で完成させました。
 このように小さな会社と言っても、当社の業態は設計、製造、小売、卸、輸出入、Eコマースなど全ての業態を網羅した業務のため、その運営・管理は非常に複雑になっていき、これらを一括管理することが弊社の大きな課題となりました。私自身はアイデア豊富でシステムの理論的な組み立てはできても、プログラミングはできません。そのため、ITが得意な友人に依頼し、なんとか市販のソフトウエアを改造したいと考えたのですが、そのころの市販システムは書き換えなどができなかったため、私自身の思いつくまま友人が業務をシステム化していきました。しかし、データの集計を円滑にできず、使い勝手がかなり悪いものになりました。やがて2002年に入社したアルバイトにIT分野を担当させるようになり、それが現営業部部長でありシステム開発の苦労を背負った松村です。
 07~08年頃からAmazonやYahoo!、楽天市場でのECモール販売も始めると、実店舗や自社ECサイトと連動させて行う在庫管理システムの確認が一層複雑になりました。特に、中古・ビンテージ品は1点物なので、売れたら即座に在庫数をゼロに反映させなくてはならないのに、思うようにできませんでした。効率化どころか、かえって人手がかかる始末で、何とかしなくては、と頭を抱えていました。いち早くシステム化に取り組み、多くの費用・時間・労力をかけて試行錯誤を続けましたが、結果的に設計図のないまま増改築を重ねた建物のようなシステムになってしまったのです。実店舗は本来1、2人で運営できる業務量のはずが、システム運営の作業量が増えたために、いつの間にか3、4人でやる体制になってしまったうえに、売り上げベースは変わりませんでした。もっと効率化して売り上げを増やすためにはどうしたら良いか検討しました。そこで、自社ECサイトのプラットフォーム化を考えたのが16年です。越境ECサイトを始める話も社内で挙がりましたが、もはや自力での挑戦は限界でした。
 18年頃、システム開発業者に依頼して、全てのECモールをまとめて自社ECにつなげる設計を作りました。ところが、設計図は完成しても全く役に立たず、運用できませんでした。そのシステム開発業者は、システムのことは分かっていても、当社の業界や業務には精通しておらず、現場のことを理解できていなかったことが原因でした。

2スマートものづくり実践

専門家の的確なアドバイスで、
AIロボットを使った
一括在庫管理が実現。

この現状を打破したいと、商工会議所などで実施している各種セミナーや講習会での情報収集に加え、様々な公的機関に相談に行きました。そうした中で、19年5月、東京都中小企業振興公社に相談し、「生産性向上のためのデジタル技術活用推進事業」を紹介されました。同事業により8月に専門家が派遣され、「変えなくてはいけないのはECサイトではなく社内システムだ」、また、02年から使っている社内システムは「人が使うものではなく、システムに使われるものになってしまっている」という指摘を受けました。ここからが当社の本当のIT改革の始まりです。
 専門家から紹介されたITベンダーから、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)というコンピュータ上にいる架空のロボットを使った仕組みを提案され、取りかかることになりました。RPAは、様々な在庫を識別し、そのデータをシステム内で自動で連携することができます。導入にあたっては、助成金も活用できるというので助かりました。19年10月に助成金を申請し、同年12月に支給。20年1月からRPAによるシステム化に着手し同年6月に完成しました。
 当社の場合、新製品と中古品を取り扱っていることが販売や在庫の管理が複雑になる要因の1つになっています。そのため、新製品はバーコードで管理し、バーコードを付けていない中古品や輸入品には当社で独自の番号を付け、それを二次元コードにすることになりました。自社の中古買取システムで買い取った商品を二次元コードでナンバリングすれば、RPAが毎日夜中の2時に基幹システム在庫データをECサイトのプラットフォームに流し込み、同じ番号で実店舗やECモールとも連動して在庫管理を一元化できます。これにより、ようやく省力化の実現に目途が立ちました。二次元コードで商品登録をするところから全ての業務をシステム上で連動できるので、伝票入力などのミスもありません。ドラムメーカーであり、かつ中古買取も行い、そのうえ35カ国へ輸出もするという、多角的事業展開を行う当社に適したシステムが実現しました。

3課題解決

システムによる業務効率化により、
職場環境が改善され、
新たな挑戦に取り組む
余裕が生まれる。

システムの運用を開始して約1年。以前はどんなに頑張っても仕事が終わらず、23〜24時まで残業することが日常茶飯事でしたが、今では全員が19時半には退社し、残業が大幅に減りました。システム運用を始めた当初、従業員には従来の方法から変えるという心理的な抵抗がありましたが、システムを確実に使いこなせれば、それまで時間を掛けて行っていた業務が大幅に改善することを、大まかな業務スケジュールとともに伝えることで、システムを使用することのメリットを理解してもらうようにしました。結果的に業務がスムーズに進み、残業がほとんどなくなったので、システムへの理解が得られたと実感しています。
 そして、業務が効率化できたことによって時間や気持ちに余裕ができた分、新たな試みにも着手できています。まず、それまで社内でなんとなくやってきたシステム運用の方法を確立して定着させるため、人材育成の専門家の支援を受け、システムを運用する人材の育成を始めています。また、ECサイトにおいては越境ECサイトを新たに立ち上げ、21年12月から全米のディーラーの在庫と連動させるという日本初の取り組みを始めました。さらに、一般の方を対象とした様々な楽器演奏のお手本動画の販売を行うプラットフォームも立ち上げ、ミュージシャンの技術を収益に換える仕組みも行っています。
 とはいえ、当社の売り上げ構成は実店舗での対面販売6に対してECサイトでの販売は4くらいです。楽器は修理やカスタマイズの相談もあるので、顧客が来店しての対面接客が基本であることは変わりません。これからもバランスをとりながら、システムの一層の有効活用を図っていきたいと思います。

やりたいことを明確にして、周りを巻き込む

  • システム構築は専門家に任せるが、システムしか分からない専門家ではなく、自社の業務をよく理解できる専門家に頼む。
  • IT によってどのように業務を改善したいのかを明確にする。目的や目標が明確になれば、デジタル化もスムーズにできる。
  • 分からないこと、知りたいことがあった場合に、すぐに相談できる先を探して行動する。
  • システムは人が運用するもの。従業員とのコミュニケーションを大切にして進める。

企業情報

会社所在地:東京都杉並区高井戸2-3-16
電話:03-5336-7960
従業員:9名
創業:1977年
資本金:1,000万円
web:https://www.canopusdrums.com
2022年2月時点