政策提言・要望

公的年金改革に関する提言

平成15年10月16日
東京商工会議所

 少子高齢化が急速に進展するなかで、年金・医療・介護等の社会保障関係費が急増を続けている。現行制度を前提とすれば、今後も国民の「税・社会保険料負担」の増加は不可避であり、若年層をはじめ国民に過大な負担を強いるとともに、国際市場で厳しい競争に晒される企業にとって大きな桎梏となり、わが国経済社会の活力を大きく損なうこととなる。そして、経済活力を失うこととなれば、社会保障を安定的に維持することはできない。わが国の将来にとって、社会保障制度全体に亘る恒久的抜本改革は是非とも必要なことである。しかし、国民負担の上昇を極力抑制することもまた重要な課題である。
 特に公的年金(国民年金、厚生年金保険)制度は、世代間の「給付と負担」の不均衡の拡大や年金不信による国民年金の空洞化等の問題が深刻化している。したがって、制度設計の基本を「給付水準」だけに置くのでなく、「負担の限界」も十分に踏まえ、国民や企業に受け入れ可能な制度として再構築すべきである。
 基礎年金部分の将来的な全額国庫負担化に係る財源問題については、安定した財源が必要であることは十分理解するものである。しかしながら、デフレ不況下において、中小企業や地域産業が生き残りをかけて必死に経営に取り組んでいる中で、今、消費税の増税等景気に水を差す財源問題を論ずることはタイミングが悪すぎる。当面は、まず景気回復・デフレ克服に全力で取り組み、経済が安定成長軌道に乗った段階で、全額国庫負担化までの経過措置のあり方や税収の増加と行政経費の節約等を勘案しながら、必要な財源を税に求めることも検討すべきである。
 政府においては、財源問題は引き続き検討することとして、将来に亘って持続可能な年金制度の抜本改革は先送りすることなく取り組まれたい。

提言



1.年金抜本改革ビジョンの再構築
 厚生労働省は昨年12月、「年金改革の骨格に関する方向性と論点」で「最終保険料率の固定化と給付水準の自動調整」を、厚生労働大臣は本年9月、試案で「一定水準以上の給付の維持」を含む見直し案をそれぞれ提示している。しかし、これによっても給付と負担をめぐる世代間の不公平感はほとんど改善されない。現役世代と高齢者世代の格差は、現役世代の年金不信と年金空洞化(国民年金の未加入者63.5万人、未納者326.7万人、合計390.2万人、平成13年度)を増大させるばかりである。
 また、厚生労働省が提示する「厚生年金の最終保険料率20%」は、医療や介護等に要するトータルの社会保障負担を考え併せると過重な負担である。厚生年金が強制加入の制度であり、保険料が実質的に賃金課税に等しいことを考えれば、負担は極力抑制すべきである。年金保険料率については、基礎年金の改革等を通じて現行水準(13.58%)以下に止めるべきである。世代間不均衡や負担急増の問題を糊塗したまま、改革の名のもとに最終保険料率20%を法定化し、新たな保険料の段階的引き上げに移行することは断じて認めることができない。
 少子高齢化の急進展のなかで、成長経済とピラミッド型人口構成を前提とした「賦課方式」はすでに破綻しつつあり、国民のための安定的かつ信頼性の高い年金制度は維持できない。負担の限界を十分に踏まえつつ、給付水準や財源のあり方を含めて制度を根本的に見直す必要がある。政府はより広範な国民各層の参加による公正な議論を行い、国民が真に納得のいく明確なビジョンを再構築すべきである。

2.給付水準と年金税制の見直し

(1)保険料抑制のための給付水準の削減
 年金制度の信頼回復や経済活力維持の観点から保険料の抑制は不可欠な課題であり、そのためには年金の給付水準を削減することが強く求められる。現在、モデル年金の水準である約24万円は、平均的な高齢者の消費支出をほぼカバーする高い水準に達している。高齢者の生活安定に一定の配慮をしつつ、給付水準の削減(総額で15%程度)を行うべきである。
 また、既裁定者については、ある程度の激変緩和措置を講ずるにしても、現役世代の負担との公平性確保の観点から、削減の例外とすべきではない。
 公的年金制度を維持するため、今回の年金改革の主眼をまず「年金給付水準の削減」にあることを明確に打ち出し、これを確実に実行すべきである。併せて医療・介護等の他の社会保障との「重複給付」を解消し、負担者の納得性を高める必要がある。

 (2)現役世代との不均衡是正のための年金税制の見直し
 将来に亘って過重な年金保険料の負担に苦しむ現役世代に対して、高齢者世代は「公的年金等控除」「老年者控除」などにより税制上も過度に優遇されている。高齢者の経済状態はさまざまであることから、これを一律に優遇するのでなく、能力に応じた負担を適切に求めていく必要がある。高所得者を中心に所得税の優遇措置について見直しを 行い、縮小すべきである。

3.基礎年金の改革

(1)基礎年金と報酬比例部分の完全分離
 政府の「国民年金の徴収強化策」では、年金制度自体への不信による「未加入・未納者の増加」には歯止めがかからない。国民年金空洞化の進行は基礎年金拠出金制度を通して、厚生年金保険の被保険者に過度の負担が皺寄せされることとなる(厚生年金保険からの基礎年金拠出金は9兆3,000億円、平成13年度)。基礎年金と報酬比例部分が渾然一体となった現在の分かりにくい制度では、到底厚生年金保険の被保険者からの理解は得られない。基礎年金と報酬比例部分の厚生年金は完全分離して、年金制度の透明性を高めるべきである。

 (2)基礎年金部分の全額国庫負担化
 基礎年金は国民に対する国家の「シビル・ミニマム保障」と位置付けるべきで、その財源は現行の社会保険料でなく、基本的に全額を国庫負担によるべきである。将来の負担を抑制するため、現在1/3に止まる国庫負担の割合を可能な限り早い段階で1/2に引き上げ(必要財源2.7兆円)、その後も着実な引き上げにより将来的には「全額国庫負担」に移行する必要がある(国庫負担1/3から1/2への引き上げを合わせて必要財源は10.9兆円)。
 国庫負担1/2への引き上げおよび全額国庫負担移行のための財源については、まずもって歳出構造の抜本的な見直しが大前提となることはいうまでもない。その上で経済状況等を十分に勘案しつつ、税に求めることも検討すべきである。税源のあり方、規模およびスケジュール等については、基礎年金が所得再分配であることや国民の税負担能力との関係を勘案しつつ、国民各層の広範な議論を通して十分なコンセンサスを得るべきである。
 もとより、基礎年金の給付についても、「シビル・ミニマム保障」の観点から、その水準の見直しに加え、一定以上の所得を有する受給者への年金額の一部または全部の 給付制限など、資力に応じた給付の仕組みを併せて検討すべきである。
 
4.年金積立金の計画的な取り崩し
平成14年度末において厚生年金保険・国民年金の積立金残高は150兆円近くに達しており、厚生年金保険では年間給付費に対して約5年分の積立金を保有している。しかし、本来、保険料の引き上げを緩和するためのものであり、高齢化率が安定化する段階(2050年~60年以降)で巨額の積立金を保有すべきではない。余裕のあった時に積み立てた積立金は、苦しくなったら取り崩すというのが国民の常識であり、少子高齢化が予想以上に進展するなかで、積立金の取り崩しは当然である。将来に向けて積立金を 計画的に取り崩し、これを今後高水準の保険料を負担せざるを得ない若年世代の負担の軽減に充てるべきである。

5.厚生年金保険の短時間労働者への安易な適用拡大は行うべきでない
 現在、政府において短時間労働者への厚生年金保険の適用拡大が検討されている。 しかし、パートタイム労働者を多数抱える産業・企業においては、労使折半となっている年金保険料負担が大幅に増加することとなり、労働者自身も手取り収入が減少する ことから反対意見が強い。
 産業構造転換のなかで製造業に替わって雇用拡大に貢献してきたのが中小企業を主体とする流通・サービス産業等である。保険料の負担増はこうした中小企業の経営を大きく圧迫し、多くが労務倒産の危殆に瀕する懸念があり、結果として雇用も失われることになる。
 年金不信による「国民年金の空洞化」に歯止めがかからないなかで、支え手を増やすという観点から徴収コストに優れる厚生年金保険を安易に短時間労働者に適用拡大することには問題がある。働き方の多様化に対応した公的年金制度については、年金財源や税制のあり方を含めた総合的な検討が行われるべきである。
 
6.中小企業を主体とする「総合型」厚生年金基金への政策支援
 地域の地場産業などの中小企業が主体となって設立・加入している「総合型」厚生年金基金は、近年の資金運用環境の悪化等により財政状態が著しく悪化している。経済低迷と加入企業の経営悪化により十分な追加拠出も難しく、厚生年金の代行部分にあたる最低責任準備金を確保できていない「総合型」基金が609基金中217基金に上っている。地域経済の活力の維持という観点からも危機的な状況というべきである。
 厚生年金基金について、免除保険料率の見直し(厚生年金本体の予定利率の変更および死亡率改善分を反映)により本体財政との中立化をはかるとともに、免除保険料率について基金ごとの完全個別化を実施し、基金財政の円滑運営を確保する必要がある。
 また、産業の構造転換や地域経済の低迷で疲弊し、将来的にも基金の維持存続の見通しが立たない総合型基金が解散する場合には、最低責任準備金の納付について、一定の基準を設けてその不足額を長期分割納付できる柔軟な仕組みを用意すべきである。

7.中小企業にとって利用しやすい企業年金制度
 公的年金がスリム化するなかで、これを補完するものとして企業年金が果たすべき役割が大きくなる。特に中小企業が従業員の退職後の生活確保をはかるために利用しやすい制度を確立する必要がある。まず、年金資産にかかる特別法人税(平成17年3月まで凍結中)は直ちに廃止すべきである。
 また、中小企業の企業年金の移行先として確定拠出年金に関心が高まっているが、拠出限度額の引き上げ、マッチング拠出や途中引き出しの制度化が強く望まれる。さらに平成24年の廃止が決まっている税制適格退職年金の移行先として「特定退職金共済制度」を新たに加えて企業の選択肢を拡大するなど、中小企業が保有している退職給付資産を新年金制度に円滑に移行できる環境整備が課題である。

以上

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